加計学園による獣医学部の新設が、岩盤規制の突破だったという意見が時々見られる。

役所や関連業界が反対することで新規参入が認められない「岩盤規制」を緩めるべきだ、という議論には一般論としては賛同する。

しかし、もしやるならば、広範に、同時に複数の事業体が参入できるようにしないと、そもそもの趣旨である自由な市場の醸成にはつながらないだろう。

とりわけ、今回の事案のように、新規参入を許可される「ホワイトリスト」に掲載されるのが一つの事業体、という場合には、情報論的性質として、規制の緩和になっているとは言い難い。

つまり、どの事業主体をホワイトリストに載せるのか、という審査を国が主体になってやっている以上、そこにあるのは自由な競争市場ではなく、むしろホワイトリストへの搭載の選択プロセスという名の規制に過ぎないからである。

岩盤規制を突破するための「戦略特区」も、趣旨としては賛同する。

まずは規制の緩和をある地域で実験的にやってみようという考え方には意味がある。

しかし、ここでも、どの地域でどのような事業を認めるかという「ホワイトリスト」の選考プロセスに国が強く関与する結果、つまりは規制の形が変わっただけ、ということになれば、趣旨に反する。

全体的として、日本では、国の規制が、かつての社会主義国における計画経済のような統制色が強いことに問題がある。

戦略特区も、結局はそのような国による統制のいわば変奏曲に過ぎず、本当の意味での規制緩和、自由競争に至っていないと評価せざるを得ない。

今回の加計学園の事案は、特定の政治家が影響力を及ぼした可能性がある、ということにももちろん問題があるが、背後にある、日本の「岩盤規制」とその「緩和」の構造自体こそが真の問題であると私は考える。

この構造が変わらない限り、力を持つ政治家が変わっても、同じ問題が繰り返しおきて、一方で自由競争は全く進まいというジレンマに陥るだろう。

今のやり方では、岩盤規制の突破には至らないのである。

日本を発展させるためには、本当の意味での「楽市楽座」をしなければならない。


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