一人ひとりの小さな世界と、さまざまなことが起こる大きな世界。
この二つの世界を結びつけるのが、小説の想像力である。
私的な小世界が、大世界のカオスの前で立ちすくみ、無力感にとらわれがちな現代。想像力の補助線は分裂や対立が支配する今日における心のビタミンであり、芸術の可能性はそこにある。
圧巻のラストに向けて、さまざまな伏線が張り巡らされる。あちらこちらから響いてきたことのすべてが、うねるような感情のシンフォニーとなって一つの像を結ぶ。
主人公が泳ぐ海は、涙からできている。
西加奈子さんは日本にいらして、日本語で小説を書かれているけれども、その内容はそのまま世界文学だと思う。
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