山田洋次監督とお話する機会があった。『寅さん』シリーズや、『幸福の黄色いハンカチ』、『たそがれ清兵衛』など、数々の映画を撮影されてきた山田監督。監督とのお話は、とても興味深かった。

「山田組」についてうかがったら、山田監督は、「ぼくが入ったころは、みんな、松竹の社員だったけれども、今は、多くの人がフリーランスで、その時々で集まるから、昔のような意味での山田組とは違う」とおっしゃった。

「松竹には、撮影所もないから」と山田監督。大船にあった松竹の大船撮影所のお話になった。私は、撮影所前にある「ミカサ」に何度か行ったことがあって、そこにいらっしゃる伊藤さんというスタッフの方についてお話したら、山田監督は、「ああ、あの、背の高い方ね」とおっしゃった。

「ミカサ」の名物は、「カツメシ」で、映画人たちが、時間のないなかでぱっと食事を済ませられるように、カツとごはんが一緒になっている。山田監督と、「ミカサ」の「カツメシ」の話をできたのは、ほんとうに幸せだった。

「ぼくは、『寅さん』シリーズの初期の、寅さんのあぶない雰囲気がとても好きなのです」と申し上げたら、山田監督は、「渥美清さんには、計り知れないところがあったのです」とおっしゃった。「最初に会った頃から、このひとには、何かとてつもないものがあると思っていた」と山田監督。

『寅さん』シリーズの円熟期には、あのようなキャラクターがすっかり定着した渥美清さんだったが、晩年になって、体調を崩された頃、出会った最初の頃に感じた、鋭い雰囲気が、ふたたび戻ってきたのだという。

「渥美清さんは、敏感な人でね。話していても、ふっと油断すると、ギツと、鋭い目で見ていることがあった」と山田監督。プライベートのことは一切明かさず、ご自宅がどこにあるのかもわからなかった。親しい黒柳徹子さんでも、知らなかったろう、という。

山田監督が、スピーチされた。日本の映画の課題について、熱く語られた。日本映画には、もっと、公的なものを含めてサポートが必要だと山田監督は訴えられた。国として、映画を支援していかないと、他国の映画に比べて、ますます存在感が薄れていってしまうと。

今は、『家族はつらいよ』の続編の撮影を終え、編集に入っているという山田洋次監督。まさに、日本の映画史の中にある方だが、短い時間でも、親しくお話することができて、光栄だった。さまざまな、インスピレーションをいただいた。山田監督、ありがとうございました!

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