私は、TEDの本会議に2011年から参加している。最初はロングビーチだったが、そのあとバンクーバーに移った。TEDは、さまざまな興味深い特徴のある会議だけれども、そのうちの一つは、拍手の仕方かもしれない。

TEDのキュレーターであるChris Andersonは、とても素敵な人だが、セッションが始まる前に、(今さらみなさんにこんなことを言うのも何ですが)という感じで、「ハウス・キーピング・アナウンスメント」をすることがある。その中の一つが、拍手の仕方についてである。
「もし、トークを聞いて、これはスタンディング・オベーションに値すると思ったら、立ち上がって拍手してください。そうでないと思ったら、周囲が立っていても、座っていてください。逆に、周りが座っていても、いい、と思ったら、立ち上がって拍手なさってください」とクリスは言う。

つまり、TEDでのスタンディング・オベーションは、個々人の自由な判断の積み重ねであり、その結果、満場の拍手になることもあれば、ぱらぱらと、何人かが立ち上がって拍手するだけのこともある。そのメリハリが、TEDという会議の良心であり、特徴であろう。

私が参加している範囲で、もっとも大きな自発的な拍手が起こったのは、15歳の少年が、膵臓がんの検査法をカーボンナノチューブを使って自分で研究して開発した、というトークをした時だった。あの時は、ほんとうにみんなが、立ち上がって拍手していた。

逆に、それほどでもないトークの場合には、儀礼的に拍手して、「さあ、次行こうか」という感じになるのが、TEDというもので、そのような生の反応は、ビデオでは編集されて消えてしまうので、わからない。

拍手するかどうか、立ち上がっての拍手かどうかを、個々人の判断の積み重ねとする、という思想は、実はきわめて重要な意味を持っていると感じる。そのような価値観が定着しているコミュニティの中でしか、創造性や個性の尊重は、ほんとうには根付かないのではないかと感じる。

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