植田工が、この度の日本初の競歩銅メダルを記念して、競歩への思いを綴りました。
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ちなみに、高校生の頃の精神鍛錬のバイブルは、君原健二さんの『マラソンの青春』でした。
植田工記。
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開催前はどうなることかと思っていたリオオリンピック、始まってみれば日本選手の連日の大活躍でニュースも沸いておりますが、競歩で銅メダル獲得という快挙!スゴいですねー!!荒井選手、本当におめでとうございます!
先ほど先生から「競歩」のこと何か書いてみたら?とご連絡を頂きましたが、何を隠そう不肖植田、高校3年の夏の全国高校選手権大会混成競技5000m競歩で東京都2位でございました。と幾度となく吹聴してまいりましたが、実際は都大会で出場者が4人のうちの2位というネタのような結果です。出るだけで入賞、出場者が4人という一番競争率の低い全国大会にも出場するには一番可能性が高い種目というような邪な気持ちで挑んだ、スポーツマンシップの欠片もない根性です。
自分みたいな不埒な輩が語るのも烏滸がましいのは重々承知ではございますが、その時に1位だった岩倉高校の人は高校1年生の頃から競歩一本でやって来た選手でした。それはもうスタートの一歩目のストライドから何から何まで違います。パーンッ!と鳴って、一歩出たその瞬間に、あ、こりゃ敵わないわと思わされたのは今でも鮮明に覚えています。その岩倉の選手が全国大会に出場するも入選すら出来ないのが、本当の競歩の世界の入り口でした。
競歩という種目は、その知名度に反して意外と実際は知られていない競技の一つかと思います。傍から見てると、長げぇ、辛そう、地味という競歩。実際レースはマラソンよりも距離は長く、しかも世界記録だと50kmを3時間32分33秒で歩いてしまうという脅威のスピードの世界です。
不覚にも今回LIVE中継は見そびれてしまったのですが、金メダルだったスロバキアのマティ・トイ選手の3時間40分58秒、荒井選手の記録も日本記録(山崎勇喜選手の3時間40分12秒)に迫る3時間41分24秒と、トップと26秒差で3位という接戦のレースでした。1キロ4分半くらいのスピードで歩いているのですから、普通にジョギングしてる人では走っても敵わいません。
競歩ってお尻こうやって振るやつでしょと大抵の方がおっしゃいます。ちゃんと見ている方ならばお気づきかと思いますが、競歩には歩行のルールがあります。①歩行中どちらか片足が必ず地面に着いていなければならないこと、②脚が地面に対して直角にならなければならない、という2つのルールがあります。誰がこんなルールを決めたのか知りませんが、このルールの中で最大のパフォーマンスをするべく生まれたのが今日目にする競歩のフォームです。
腰をぐっと旋回して押し出して、左右の足交互に一直線上なのですが、ストライドの幅を稼いでいる柔軟性とチカラがハンパないので、正面からみると体が弓のようにしなって腰を左右に振っているように見えるのだろうと思います。
で、このルール違反が3回で失格となります。それを審判するためにロードレースでも周回コースになっていて、要所要所に審判が立っていて、たしか逆走しながら判定している審判もいるはずです。かつて世界選手権で日本人選手でゴール50m手前で三度目のファールで失格になっている光景を見た記憶がありますが、今回の荒井選手も審議があったように、一見地味な競技に見えて、窮屈な歩法ゆえの烈しい競り合いが起こったり、ゲーゲー吐きながら歩いたりと、なかなか色々なドラマのある種目です。
このたびの銅メダルで、マラソンの影に隠れていた競歩も一気に注目の競技に躍り出るのではないでしょうか!なんてことを素人に言われたくないでしょうけども、今後も競歩選手のご活躍を応援しています!!競歩をするなら前脛骨筋を鍛えろ!、ですよね?(笑)
ちなみに、高校生の頃の精神鍛錬のバイブルは、君原健二さんの『マラソンの青春』でした。
植田工記。