ジャックが、もの凄いスピードでテクストを打ち始めると、ビリーが、電話をかけた。

 ピザを注文している。それを聞いて、トムも、まんざらではない顔をしている。

 トマス・アクィナスの生まれ変わりでも、お腹は空くようだ。

 ジャックが、トムを見て、「ここは、配達が早いんだ」と言って、笑っている。

 やがて、ドアの呼び鈴が鳴った。

 ビリーが向かって、やがて、一人の若者と部屋に戻ってきた。

 「グレッグ、そこに置いてくれ。」

 グレッグと呼ばれた若者は、白と赤のピンストライプの上に「マリオのピザ」と書かれたキャップを被り、ひょい、ひょいと体を動かしながら部屋に入ってきた。

 「ほいよ」とピザを置いたグレッグに、ビリーは、10ドル札を渡し、「2、3分はいいんだろう?」と言うと、グレッグは、親指を立てた。

 ビリーは、冷蔵庫から容器を取り出して、コップの中にたっぷり注ぎこむと、グレッグの前に置いた。

 「特性のジンジャーエールさ。うまいぞ。」

 グレッグは、一気に飲むと、ぼんやりとテレビを見始めた。いつの間にか、24時間ニュース局から切り替わって、人気コメディアンのトーク番組になっている。

 客席には、若い女の子が多い。トムが、それらの女の子の顔を、熱心に見ている。

 「この人・・・」

 グレッグが話し始めた。

 「ああ、トムだ。ちょっとした注目人物だぞ。」

 「そうなんだ。この人、さっきから、女の子ばかり見ている。」

 「ははは。仕方がないさ、トムは、ちょっと、探し人があってね。」

 グレッグは、首を少し大げさに左右に振ると、再び言った。

 「さっきから、かわいい女の子の顔ばかり見ている。」