アルゼンチンはお肉がおいしい、という噂だった。

たしかに、おいしい。

どこかで、昔、ヨーロッパから牛がきた時、アルゼンチンの大平原で大繁殖して、何千万頭にもなっちゃった、というのを読んだことがあるけど、そのせいかどうかわからないが、とにかくおいしい。

でも、ブエノス・アイレスに来ていちばんおいしかったものと言えば、「チョリ」だった。

道路脇の屋台の前に、ひとが群がっていて、なんだろう、と思ったら、なんか焼いてパンに挟んでいる。

でも、こまったことに、スペイン語のメニューがよくわからない。どうしよう、と思って立っていたら、前のお兄ちゃんが「チョリ」と言っていたので、ぼくもまねして「チョリ!」と言ってみた。

屋台の中には、いい感じの渋いおじさんが腕組みして立っていて、注文をさばいている。

おそらくは「ボス」なのだろう。

一方、「焼き手」の人はボスよりも若い感じの兄ちゃんふたりで、ずっと、せっせと立ち働いている。

ボスは、お客さんの注文を受けたり、料金を受け取ったり、焼き手が作り上げたのを「ほいよ」と渡す役割をしている。

焼くのは若手なのに、お客さんに渡す、という、ある意味ではいちばん感謝されるというか、おいしい役割を自分がやっているところが、やはり、年季の入った、渋いボスならではだろう。

やがて、チョリが来た。

平たいソーセージ? みたいなものが、焼かれて挟まっている。

屋台の前には、緑色のハラペーニョ? のスライスみたいなやつから、赤い野菜を刻んで、オイル漬けにしたようなやつまで、いろいろな「薬味」がある。

他の人の真似をしながら、ちょちょいのちょいと、たっぷり薬味をかけて、挟んで、もう待ちきれない、屋台の横の路上で、ふはふは食べた。

うまかった!

たっぷりの肉汁、薬味の香ばしさ、そして、飾り気のないパンが、得も言われぬハーモニーで、ほんとうに美味しかったのだ。

ああ、これを食べるためにだけでも、ブエノス・アイレスに来る価値があるなあ、としみじみ思った。

それくらいのもんです。はい!

地元の人で、混む屋台。やはり、常連さんは、おいしいものを知っている。

チョリ、350ペソだった。
日本円にして、約260円?

おいしいものは、安くて、おいしい。
もう、ブエノス・アイレスったら、は・な・ま・る!!!!!

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