先日、本郷の東大生協書籍部に久しぶりにいった。

ここで思い出すのは、大江健三郎さんのサイン会に並んで書いていただいたこと(今でも、『懐かしい年への手紙』 に「茂木健一郎様 大江健三郎」とサインされた本を大切に持っている。後にも先にも、並んでサインしていただいたのはこの時だけだと思う。

大江さんが、ノーベル賞を受賞される、5年前くらいのことだったと記憶する。

あと、友人の数学者の中村亨が、当時ベストセラーになっていた浅田彰さんの『構造と力』を手にとって「これ、間違って建築のコーナーに置かれないかな」と冗談で言っていたのを覚えている。

ぼくがいた東京大学理学部1号館は、東大生協書籍部から歩いて1分のところだったので、便利だった。
だから、入り浸っていた。

それで、久しぶりになつかしい東大生協書籍部に立って、感じたことは二つだった。

まず、学術的には、高度で、深い本の品揃えがあるということ。数学のコーナーとか、物理のコーナーとか、本当に品揃えが良い。学術的な志向を持つ人にとっては、天国だろう。東大生協会員じゃなくても、割引は受けられないが買えるので、オススメである。

もう一つ感じたことは、和書が圧倒的で、英語の本がほとんどなかったこと。

明治以来、日本語で学問ができるようになったことは、偉大な成果である。
一方、さんざん議論されているように、そのことが、グローバル化の中で足かせにもなっている。

今の東大生協書籍部の品揃えの充実はそれでいいとして、別に、英語の本がたくさんならんでいるようなコーナーがあって、需要も旺盛である、という大学に生まれ変わればいいのにと思う。