グーグルが、囲碁で人間のプロに勝つ人工知能のプログラムを開発したというニュース、たいへん興味深い。価値と選択に関する二つのネットワークを合わせて使ったということだが、そのようなアーキテクチャーを含め、学ぶべきことは多いだろう。チェスはすでに世界チャンピオンが破られ、将棋は時間の問題、しかし、囲碁はまだ難しい、と言われていたのが、思ったよりも早くここまで来た。グーグルのことだから、この囲碁ソフトを、ネット上などで公開してくれないかなと願っている。私は、アマチュア5段レベル? とも言われる「最強の囲碁」のソフトで、時々スマホで囲碁を打って遊んでいる。負けたり、時々勝ったり、まあ、それくらいの「実力」であるが、人工知能と囲碁を打っていて、面白いと思うことがある。それは、囲碁ソフトには、「個性」のようなものがあるということである。「金沢将棋」のような将棋ソフトも同じことで、打っていて、「個性」というか「癖」のようなものを感じる。実は、それがいちばんおもしろいことの一つだと思う。将棋のAIのソフトと打ったことのあるプロ棋士の戦略は、一様に、相手のプログラムの「癖」を見抜くことにあるという。先日、羽生善治さんとお話した時にも、羽生さんは、「だから、プログラムとの対戦は、ハッキングに似ているんですよ」とおっしゃっていた。羽生善治さんは、同時に、「ぼくは将棋のソフトとは打ちたくない」と言って、その理由として、将棋のソフトの持つ、妙な癖、というか、個性のようなものを挙げていた。打っていて、その妙な人格が伝わってくるというか、感染ってくるというのである。一般に、評価関数が存在するようなものの最適化は、これから人工知能に勝てなくなることは明白である。ところが、人格は一種の資源の配分問題で、一つの正解があるとは限らない。人格の良いモデルも、まだない。だから、人工知能は人格が苦手である。人工知能の発達の一つのモデルとして、busy child というものがあって、つまり、せせこましい、落ち着きのない子どものような人格になるということである。果たして、今回のグーグルの囲碁ソフトは、対戦すると、どのような人格を感じるのだろう。子どもの頃、NHKの囲碁番組を見ていて、武宮正樹さんの「宇宙流」に心惹かれた。羽生善治さんの自由な境地は、皆が称賛するところである。人間が人工知能に対抗する方法は、人格を磨くことにしかない。今回のグーグルの囲碁ソフトに「勝つ」方法は、そこにある。

みなさんは人工知能はこわいですか? 個性をみがくことで、対抗できると思いませんか?