要約します。

 

寝たきりの原因 1つ目は筋力低下

筋力が低下するのは、筋萎縮(筋肉の量が減ること)が原因です。実は年をとると、誰でも全身の筋肉量が減ってきます。
筋力は筋肉に負荷をかけることで維持されるので、筋肉を使わない人ほど筋力低下が早く進みます。

とくに高齢者では、筋肉を積極的に使わない生活が少し続いただけで、ガクンと筋力が落ちてくることも珍しくありません。

普段の食事も筋力低下の発生に関わります。
筋肉を増やすための栄養をとらない人は、しっかりとっている人と比べると、明らかに筋力低下が早く進みます。

寝たきりの原因 2つ目は認知症
認知機能の低下によって起こる症状の1つに、「意欲の低下」があります。いろんなことに対し、やる気が起こらなくなる症状です。こうなると「健康のために散歩しよう」といった意欲もなくなるので、家にこもりがちになります。
家の中でもあまり動かないので、筋力低下やそれによる歩行機能の低下が起こり、やがて寝たきりになってしまうのです。

認知機能の低下はゆっくり進行します。ですから、早めに認知機能の低下に気付くことが大事です。

テレビに出ている有名人の名前がパッと出てこなくなるのは、高齢になると誰にでも起こることなので、あまり気にしなくてよいという人がいます。

 でも私はこのあたりから認知機能の低下が始まっていると考えています。まだ黄信号とはいえますが、その段階で何らかの対策を講じることが重要です。

 その次は、昨日自分が食べたものや、会った人の名前が思い出せなくなるといった段階です。自分が最近経験したことが思い出せなくなっているわけですから、これはもう赤信号です。


 筋力低下と同じで、年をとると誰でも多かれ少なかれ認知機能が低下します。

 しかしこれも個人差があります。

頭をよく使う(脳に刺激を与える)生活をしている人は、認知機能の低下を遅らせることができる可能性があります。


寝たきりの原因 3つ目は骨粗しょう症

 骨粗しょう症というのは、年齢とともに骨がもろくなることです。そして骨粗しょう症になると、骨折のリスクが高くなります。病院の検査というのは、骨密度測定のことです。この検査を定期的に受けていれば、骨粗しょう症に早く気付くことができます。

 骨も運動や食事が大きく関わっています。まず運動ですが、骨は刺激を与えないと弱っていきます。また骨に必要な栄養素を食事からとらないと、やっぱり骨は弱くなります。

 さらに日光に当たらない人は、骨が弱くなりやすいこともわかっています。

このように、骨の強さには生活習慣が大きく影響しているのです。


寝たきりの原因 4つ目は脳卒中

 脳卒中は脳血管障害とも呼ばれますが、現在の日本では脳卒中が寝たきりの原因の第2位となっています。

 脳卒中では脳動脈が詰まったり破れたりすることで脳組織がダメージを受けます。そして、まひ、失語症、認知機能低下といったさまざまな症状があらわれます。

 これらの症状は適切なリハビリによって回復することもありますが、逆にリハビリを行っても症状が改善せずに、ついには寝たきりになってしまう患者さんもいます。

 これまでの3つの寝たきりの原因(筋力低下、認知症、骨粗しょう症)と脳卒中には決定的な違いがあります。

 それは先の3つがしのび寄るようにゆっくりと進行してあらわれてくるのに対して、脳卒中は突然に発症することがほとんどであるということです。


 発症の数分前まではまったく元気であった人が、脳卒中の発症と同時に一気に運動機能や認知機能が障害されてしまうのです。

脳卒中の発症には前触れがあることが少なく、脳卒中の発症を予知することは困難です。

 しかし、どんな人が脳卒中になりやすいかは、すでにわかっています。言い換えると、脳卒中の危険因子はすでに明らかになっているということです。

 脳卒中の危険因子としては、脳動脈硬化を悪化させるもの、具体的にいうと高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙です。


 これらをしっかりと治すことで、脳卒中の発症リスクは下げることができます。

そして、これらの危険因子をなくすためには、生活習慣の改善や食事療法が非常に重要になってきます。