緑内障とは、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、視野(見える範囲)が狭くなる病気のことです。治療が遅れると失明に至る

 

緑内障は、40歳以上の20人に1人、70歳以上では10人に1人が罹患する眼の病気です。現在、緑内障は中途失明原因の第1位で、2022年は失明原因の28%を占めていましたが、23年は41%に上昇。
東北大学病院の眼科科長・教授の中澤徹医師はこう話します。

「悪化するまで自覚症状がないため、気づきにくい病気です。緑内障を発症している人のうち、約7割が気づいていないというデータもあります。近視が危険因子です。近視は小中学生で神経が変形し、老眼になる40歳ごろから緑内障が始まります。症状が出るのは60歳ぐらいで、病気になっているのに自覚がない空白期間が20年もあります。緑内障でいったん視野が悪くなると、もう元には戻せません。早く病院を受診すると、進行を食い止めることができますので、近視の人や緑内障の家族がいる人は、40歳になったら必ず眼底検査を受けるべきだと思います」


■3年に一度は「眼底検査」を受けよう

 なぜ気づけないのでしょうか。中澤医師は、その理由は三つあると話します。

「一つは、人は左右両方の目で見ているので、片目に少しの変化があっても、もう一方の目が補って見てしまうことです。

二つ目は、白い霧がかかったように見えるという気づきにくい初期症状であること。

三つ目は、脳が過去の記憶から画像を補ってしまうことです」

(中澤医師)

 そのため、検診のほか、コンタクトレンズや眼鏡を作製する際に偶然見つかることが多く、早期発見のためには眼鏡調整などで眼科を受診し、その際に検診を受けることが重要だといいます。

 進行が比較的遅い病気であることから、中澤医師がすすめるのは、3年に一度は「眼底検査」を受けること。

眼底とは眼球の後ろ側のこと。眼底検査とは、眼底の血管、網膜、視神経などを調べる検査です。

「通常の健康診断では眼底検査がなくなっていますので、受ける健診に眼底検査があるか、確認してください」(中澤医師)

■両親が重度の緑内障の人、近視の人などは要注意

 特に、次の4種類のうち一つでも該当する人はハイリスク軍のため、必ず検査を受けましょう。

 一つ目が、両親など家族が緑内障になり、重症または3本以上の点眼薬で治療している場合。

親が罹患していると、通常の3~9倍緑内障にかかりやすくなっています。

 二つ目が、フラマー症候群の人。血管運動調節不全による末梢血流の障害により、からだのさまざまな部位に支障が出る症候群です。手足の冷えや匂い、痛み、振動、薬に過敏な血管収縮反応を示し、頭痛などを伴います。冷え性、低血圧、偏頭痛、背が高くてやせ型の人は要注意です。

 三つ目が、いびきをかく人。特に睡眠時無呼吸症候群の人は緑内障の視野障害の進行が速く、失明にいたりやすいと言われます。太り気味で心臓が悪い人、家族から「寝ているときに息が止まっている」と指摘された人は、要注意です。

 四つ目は、近視の人。近視は一番のリスクファクターといわれます。近視では、目が大きくなるために、神経などが薄く、視神経乳頭という神経の出口が変形し断線します。目の血流も悪くなるといわれています。