1・髭爺の非日常的ミステリアスな話 (再録)
 
不思議な奇問遁甲占いおじさんとの邂逅
 
占いの師匠と思える人に出会ったのは、半世紀前のことであった。
 
ここで師匠といっても、私自身が占い師をやっているわけではないので、あしからず。
 
ただ、若い頃に占いの手ほどきを受けたというだけの話であって、占いの師匠との交流はそう長い期間ではなかった。
 
師匠は当時すでに七十歳前後であったから、その師匠が亡くなってすでに相当な年数が経過していることになる。
 
師匠との出会いに至る経緯は少し変わっていて、その最初のきっかけというのは身内の出来事に深くかかわっていた。
 
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当然ながらそれはずっと昔のことになるのだが、それは父親が自分の姪の結婚相手を探していたときのことであった。
 
父親は心当たりをあちらこちらと探し回っていたのであるが、あるときふと思い立って隣町に住む義兄の家に相談がてら訪ねて行ったことがあった。
 
義兄の家で父親が客間に入っていくと、そこには先客がいて義兄の隣に座っていた。
 
それは初老の男性であったが、父親とは初対面の人物であった。
 
父親は互いに挨拶を済ませると、さっそく姪の結婚相手を探しているというその日の訪問の目的を手短に話し始めたのであるが、義兄と客とは顔を見合わせてにこにこと笑顔で父の話しを聞いていた。
 
父が話し終わるも間もなく、「その話ば、待っとったとよ」と義兄が口を開いた。
 
父親が怪訝な顔をしていると、義兄は意外なことを話し始めた。
 
「こちらの〇〇さんは今日、息子さんの嫁さんを探しにうちに来られとるとたい」と云いだした。
 
驚いている父親を前にして、義兄はさらに話を続けた。
 
「〇〇さんは、今日午前中にここに来ると、よか縁談が見つかるちゆうて、さっきからうちで待っとらしたとたい」
 
「一体どういうことですか?」と、父親は突然の成り行きに戸惑いながらも尋ねた。
 
「〇〇さんは昔から占いが得意たい。息子さんの縁談を占ったら、今日ここに来るとよか縁談に繋がるちゆう占いの卦が出たそうな。それで先ほどから、二人でその話ばしょったとたい」と、義兄は笑顔で話す。
 
客の男性が、ここで始めて口を開いた。
 
「今日の日時、方向ば占ったらこちらの〇〇さんの家になりました。しかも私の家の名前とこちらの家の名前とが、もっとも運気が繋がる日が今日でした。縁談はもちろん、交渉事や約束事が成就してより運気が高まる最初のきっかけになる日時がまさに今日という日で、方向と場所がこの〇〇さんの家がぴったり当てはまるということで、いまここで貴方が来られるとば待っとりました」
 
意外過ぎる、不可解な展開であった。
 
普段から占いなど端から信用していなかった父親にしてみれば、まるで狐に鼻を摘ままれたようなおかしな話であったのだ。
 
ここでは当初そうした不可解過ぎる展開ではあったのだが、意外にもその場で相手の方と父親との間で縁談の話はとんとん拍子に進んでしまって、結局そのまま両家とは近日中に見合いをするということに話が決まってしまったのだという。
 
帰宅した父親からそのようなおかしな話しを聞かされたときは、家族皆が半信半疑であった。
 
結果から言えば、その後この縁談はうまくまとまって無事結婚まで至ったのであるから驚きではあるのだが、当時の私はこうした経緯を身近に見聞きしていても、何やら面妖な話しであって、どうにも合点がいかず一部始終が不可解でならなかった。
 
というのも、その相手のおじさんの占いというもの存在が、いかにも神妙で不可思議な事象そのものに思えてならなかっからであった。
 
とにかく、どこまで信じていいのか分からなかった。
 
後日その占いおじさんは我が家にも挨拶に来られたので、親しく話しをする機会が出来たのだが、最初の印象でいえばその占いおじさんは易者然として威張っている風でもなく、外見から云えば格別変わったところはなかった。
 
見た目には普通の、どこにでも居そうな田舎のおじさんといった風貌であったのであるが、しかしよく様子を窺っているとその占いおじさんは何となく飄々としていて、次第に不思議な雰囲気が漂っているようにも思えてきたのだ。
 
話すことも常人とは少し変わっていて、占いおじさんと親しく話しをしていると、いよいよその占いという妙技から見えてくる時空世界というものが気になりだした。
 
占いおじさんと話していると、ときたま不思議なことを口にした。
 
にわかには信じられない話しであるのだが、占いおじさんの話しでは、そこらを飛び回っている鳥たちはただ囀っているだけではなく、人間同様に喋っているというのである。
 
さらには空に浮かんでいる月について話が及んだときには、「誰も知らないことだが、月の内部には巨大な空洞がある」のだと云って驚かせてくれた。
 
それはまるで、月は誰かが造った人工物だと云わんばかりの口ぶりであった。
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そうした現実世界ではおよそ語られないような話を聞いていると、何だか異次元空間に誘われているような不思議な感覚がふわっと湧いてくるようで、占いおじさんとは話しているだけでも楽しかった。

 



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