花粉症などのアレルギーを予防する手だてとして効果が実証されているものは少ないといいます。
その中で、専門家が挙げるのは「腸内環境を整えること」です。
アレルギーの発症には、免疫を高める「ヘルパーT細胞」のうち、ばい菌などと戦う「Th1」と、ダニや花粉に反応する「Th2」のバランスが崩れ、てんびんで表すならTh2に傾き過ぎている状態にあります。
腸内環境を整えることで、善玉菌がTh1を刺激し、Th2に傾いたバランスを戻してくれます。
病原菌もTh1を刺激しますが、体に悪さをしないのが善玉菌といいます。
実際、母親の妊娠後期や、免疫が未成熟な乳幼児期に「プロバイオティクス」を投与することで、子どものアレルギーの発症頻度を低くできたとの報告もあります。
プロバイオティクスとは、乳酸菌などの微生物(善玉菌)のことで、ヨーグルト、みそ、漬物などはプロバイオティクス食品の代表とされています。
ただ、どの菌をどのタイミングで用いれば効果的か、誰にでも効果があるのかなど、不明な点は多いといいます。
食物アレルギーでは、肌の潤いを保つことによる予防効果も期待されています。
最近、アトピー性皮膚炎患者がぜんそくや食物アレルギーになりやすい理由の1つとして、肌のバリア機能を保つタンパク質の1種「フィラグリン」が不足していることが報告されました。
肌のバリア機能が低下した結果、食べ物やチリダニ、花粉などのタンパク成分が皮膚に染み込んで、アレルギーを引き起こすスイッチとなる抗体「IgE(免疫グロブリンE)」を作りやすくしているといいます。
現段階では、はっきりした証拠があるわけではないが、クリームを塗るなど肌の潤いを保つことが、アレルギーを防ぐ1つの手段となりうるようです。
一方、かつては「妊娠中に卵や牛乳をとると、生まれてくる子がアレルギーになりやすいので、控えた方がいい」と言われましたが、「予防効果は全くない」という説が有力です。
「子どもがアレルギーにならないために離乳食を遅らせた方がいい」という説も同様に、予防効果がないことが実証されています。
アレルギーの予防についてはまだ研究段階のことが多く、根拠のない情報に振り回されないことが大事のようです。
吉川秀幸
悪者と思われているコレステロール、中性脂肪は本来、私たちの体に無くてはならないものです。
体は通常、ぶどう糖をエネルギーとして使っていますが、ぶどう糖が足りないときに中性脂肪を使います。
コレステロールは大切なホルモン、細胞膜、消化酵素の胆汁酸に役立ち、体の成長、維持に欠かせません。
しかし、成人した体にとっては多くを必要としないのに、体はコレステロールを大切にする仕組みになっています。
食べたコレステロールの95%が体に残り、血管の壁にたまります。
日本動脈硬化学会は、コレステロールの上限を220mg/dlに決めていますが、これを超えたから大変だという意味ではありません。
女性のコレステロール値は、40歳代まで女性ホルモンによってあまり高くありませんが、閉経を過ぎると高くなります。
ただ、動脈硬化になるには長い年月がかかるので、生理が終わって急に高くなったからといって、他に病気がなければ、それほど心配はいりません。
コレステロールのうち、LDL(低比重リポたんぱく)は血管の壁にたまって動脈硬化を起こすので悪玉、HDL(高比重リポたんぱく)は血管の壁からコレステロールを引き抜いて処理工場の肝臓に戻すので善玉と呼ばれています。
だから、総コレステロールが高いからといってそう驚くことはありません。
総コレステロールがそれほど高くないが、HDLが低い場合は要注意。
とくに、40mg/dlを切るようであれば危険と考えてください。
本当の悪玉は、酸化されたLDLです。
血管の壁のマクロファージは、酸化LDLをどんどん食べ大きくなり、血管を狭め、動脈硬化を引き起こします。
LDLを酸化させないことが重要です。
酸化を抑制するのは、ビタミンE、ビタミンC、ベータカロチン。
逆に促進するのは、喫煙、高LDL血症、糖尿病、高中脂血症です。
特に、糖尿病患者では同じコレステロール値でも動脈硬化が進展し、心筋こうそく発症率、心臓死が高いのです。
北欧での実験ですが、糖尿病、喫煙など危険因子を3つ以上もった40歳から79歳の人に、まず血圧を下げる薬で、血圧を正常にした後、コレステロール値250mg/dl以下の人を、薬を飲む、飲まないの2群に分けました。
その結果、飲む人は飲まない人に比べ、心筋こうそくが36%少なかったのです。
コレステロールを下げる薬を飲むと2週間ほどで下がるので、1、2か月で薬をやめる人がいます。
しかし、最低でも2年、できれば3年続けなければメリットは得られません。
子供たちのコレステロールが高くなっていることが心配です。
動物性脂肪の摂取過多、運動不足が原因です。
このままでは、動脈硬化の発症が20年早まる可能性があります。
吉川秀幸