監督 ジョエル・コーエン

脚本 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

ジェリー・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)

カール・ショウォルター(スティーヴ・ブシェミ)

ゲア・グリムスラッド(ピーター・ストーメア)

ジーン・ランディガード(クリステン・ルドルード)ジェリーの妻                           

ウェイド・グスタフソン(ハーヴ・プレスネル)ジェリーの義父

マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)

ノーム・ガンダーソン(ジョン・キャロル・リンチ)

 

中西部の田舎町で事件が起こる。

最初は些細なたくらみだった。

ストレスフルな小市民。

義父に対する反発。

事態が進むにつれ、状況は複雑になっていく。

こんなはずではなかった。

 

 

●お勧め度

★★★★★

 

 

 1987年、ノースダコタ州ファーゴ。

 ジェリー・ランディガードは一軒の飲み屋に入る。そこで待っていたのはカールとゲアの2人の男。

 

 

ジェリー

 

        カール    ゲア

 

 ジェリーはミネソタ州ミネアポリスで自動車販売店の営業部長で金を必要としていた。駐車場の事業を起こそうとしていたのだ。義父に出資を相談しているがいい返事をしてくれない。妻の父親は販売店チェーンの社長をしている富豪。

 そこでジェリーは妻を誘拐して義父から身代金を取ろうと考える。協力してもらう仲間として、修理工場のシェプからゲアを紹介され、会いに来たのだ。カールとゲアは見た目からしてチンピラの怪しげな雰囲気。一方ジェリーは生真面目そうな堅気の勤め人。カールとゲアから見るといいカモである。

 手付としてジェリーは新車を二人に渡す。ミネアポリスからその車をけん引してきたのだった。車は報酬の一部なのだ。そして、計画がうまくいって身代金8万ドルが入ったら、4万ドルずつ山分けする。

 

 その夜、ジェリーが家に帰ると義父のウェイドが来ている。

 

ウェイド

 

ジーン

 

 事業家的な気の強さを発揮して娘であるジーンとジェリーを圧倒する。それでもジェリーは前々からウェイドに相談している話(土地を購買して駐車場をつくる)を持ち掛ける。ウェイドの返事はつれない。

「俺は昔、駐車場を作って大損をしたことがある」

 

その数日後、駐車場の話に義父のウェイドが出資することになる。そうなると、誘拐の話は不要となる。そこで、ジェリーはゲアとカールに連絡しようとするが電話がつながらない。

 

 そのため、予定通りゲアとカールはジェリーの家に行きジェリーの妻を誘拐する。

 そうとは知らず、ジェリーはウェイドに呼びだされて会いに行く。そこにはウェイドほかに会社の会計士がいて、何やら企んでいる風情だ。

「事業計画としていい話だ、しかしなぜ私がお前に金を貸さなければならないのだ。ここは銀行ではない。この話はこちらだけで進めることにする」

 ウェイドはジェリーの考えた事業を横取りしたのだった。

 失意と怒りにまみれたジェリーは、それでも心を静めて家に帰る。そして妻が誘拐されたことを知る。義父のウェイドに電話をかける予行練習をする。

「ジーンが、僕の妻が…」

 

 ゲアとカールがジェリーの妻ジーンを拉致し、車に積んで走らせているときに後ろからパトカーがサイレンを鳴らしながら迫ってくる。

 車を停めてカールが警官の質問に対応していると、助手席にいたゲアがいきなり警官の腕をつかみ動けないようにして銃弾を頭に打ち込み殺す。後ろの席ではジェリーの妻が恐怖の声を上げ、カールは顔に返り血を浴びて凍り付く。しかしゲアは平然としている。

 カールが警官を抱え移動させていると、車が通りかかり事態を目撃する。ゲアは素早く車を運転し後を追い、乗っていた二人を撃ち殺す。

 

ゲア

 

 寝ているところを電話で起こされるマージ。隣では夫のノームが寝ている。マージはすぐに署へ赴くことにする。マージは妊娠して結構お腹が大きくなっている。ノームも目を覚まし、「卵を焼くよ」などと妻に気を遣う。ノームは芸術家で絵をかいたり鳥のデコイを作ったりしている。

 

 現場に着くと一人の警官が待っている。マージはブレイナード警察署の署長を務めている。ブレイナードはファーゴトとネアポリスの中間点の街だ。

 

 

 マージは現場をざっと検分する。現場は雪原の中を通る一本の道沿い。殺風景な景色。

マージは、殺された警官のメモの「DER」というメモからディーラーの車ではないかと推理する。

 

マージ

 

 

 そのメモを起点に車が目撃されたモーテルを探り当て、そこで二人の男と関係した娼婦に話を聞き出し、モーテルから発信された電話をたどりシェプを知り、シェプを経由してジェリーにたどり着く。マージは質問に答えるジェリーの態度に不信感を持つがいったんは引き下がる。

 

 カールは人を3人も殺してしまい、ことが大きくなり慌てている。ジェリーに電話して、不測の事態が起こった。8万ドル全部よこせ、と高圧的に迫る。ジェリーは話が違うといって断る。しかし、義父には、事業を横取りされた腹いせもあって、妻の身代金は100万ドルといっているのだった

 ジェリーの義父のウェイドは「金は自分が届ける。わしの金だ。お前では当てにならない」などというが、ジェリーは自分が窓口になっているからダメだと言い張る。しかし、ウェイドは治まらない。結局、自分で金をもってカールが指定した場所へ金を持っていく。

 金を持ってきたウェイドを見たカールは指示と違うといって怒りだす。ウェイドはひるむことなく「娘は何処だ」と怒鳴りつける。

カール

 

ウェイド

 

「娘を返さないと金もなしだ!」

 しびれを切らしたカールはウェイドに弾を打ち込む。倒れながらもウェイドもカールに向けて発砲する。その弾はカールの喉元をかすめる。血で喉のあたりを濡らし、逆上したカールは何発もウェイドに弾丸を打ち込んで殺す。そして金の入った鞄を持って逃亡する。

 

カール

 

 その直後ジェリーは現場へいく。倒れているウェイドをトランクに積んで走り去る。

 

 翌日、ジェリーの仕事場にマージが訪ねてくる。

 

マージ

 

ジェリー

 

 マージの質問に答えるために、車の台数を数えるふりをしてジェリーは逃亡を図る。それに気が付いたマージは署に連絡を取り捜査網を張らせる。

 

 一方、カールは持ち去ったスーツケースの中を見て驚く。こんなに金が入っているなんて。鞄の100万ドルから8万ドルだけを出して、残りの金の入った鞄を街道の脇の雪の中に埋める。後で取に来るつもりなのだ。

 アジトに戻ると、ゲアがインスタント食品を食べながらテレビを見ている。誘拐したジーンは死んでいる。

「急に騒ぎ出したんだ」

 ゲアはカールに説明する。無表情で何を考えているのかわからない。カールは4万ドルをゲアにわたし、こんな奴とは縁を切ろうと考える。

 その後、車をどちらが取るかでもめる。ゲアはカールをまさかりでたたき殺す。

 

 ムース湖を巡回中のマージはカールとゲアが乗っていた車を見つける。こっそりと近づいていくと、木材を粉砕する機械でゲアがカールの死体を粉々に砕いているのだった。

 

マージ

 

ゲア

 

 マージに気が付いたゲアは走って逃げるが、マージが足を撃ち捕獲される。

「わずかなお金のために何人も人を殺した。人生は豊かなものよ。こんなにいい天気」マージはゲアに話すが、ゲアは黙って相変わらずに不表情で静かに座っている。

 

マージ

 

 その後、逃亡中のジェリーは潜んでいたモーテルで逮捕される。

 

 夜、ベッドでノームがテレビを見ている。その横にマージが入り込む。

「絵が3セントの切手に採用された」そうノームがいうとマージは喜び、ノームを励ます。

「私たち、幸せよね」マージがノームに聞く。ノームは「愛してるよ」と答える。

 

マージ      ノーム

 

「あと2カ月だ」ノームはマージの腹をなでる。

「あと、2カ月」マージは答え、ノームに寄り添う。

 

 

普通に暮らしている小市民が、よからぬことを企む。

殺漠とした犯罪者が儲け話に乗っていく。

尊大な経営者が傲慢なふるまいをする。

殺人事件を地道に解決していく警察署長。

その優しい夫。

人生はさまざまである。

 

 

 

ファーゴ(字幕版)