監督 ジャン・ルノワール

原作 モーパッサン『野あそび』

ヘリンエッテ(シルビア・バタイユ)

ヘンリ(ジョルジュ・ダヌルー)

ロドルフ(ジャック・ブルニアス)

マダム・デュフール(ジャンヌ・マルカン)

ムッシュ・デュフール(アンドレ・ガブリエロ)

1936年/フランス

 

この映画を見るのは何年ぶりだろうか。

確か劇場へ見に行ったはずだ。

見終わったあと、リリシズム、という単語が頭に浮かんだ。

 

お勧め度

★★★★☆

 

 

1860年、パリから田舎に馬車に乗って遊びに来た一家。両親と娘のヘリンエッテ、祖母そして父の店の従業員の若い男の5人。うららかな日和。木々が風にそよぎ、草木は波のように揺れる。

 

 

 一家は川辺のレストランへたどり着き、そこで昼食をとることにする。そのレストランには常連の若い男ヘンリとロドルフがいて何やら与太話をしている。店の主人やおかみさんは、二人に料理を運んで家族のような付き合い方だ。

 

ヘンリ

 

ヘンリ     ロドルフ

 

 店の庭先のブランコに乗ってはしゃぐヘリンエッテとその母親のマダム・デュフール。母親は子供のようにうれしそうな顔をして夫に背中を押してもらい、娘のヘリンエッテも少女のような笑顔を浮かべている。

 

 

ヘリンエッテ

 

 店の窓からヘリンエッテを見たヘンリとロドルフはその可憐さに魅了されて何とか近づきになろうとする。

 ヘリンエッテの父親のムッシュ・デュフールはでっぷりと肥った商人でよくしゃべる。従業員の男はさえない感じでムッシュ・デュフールに何かとどやされている。

 

従業員    父親

 

 祖母は少しボケていて、自分がどこにいるのかよくわかない感じ。しかし猫が好きでよく抱っこしている。

 

母親   祖母   父親

 

 ヘンリとロドルフは、紳士然と振る舞い家族の信頼を得ることに成功する。そして、舟に乗ることになる。手漕ぎのボートで、穏やかな水面へこぎ出す。ヘンリはヘリンエッテと一緒に乗り、ロドルフはマダム・デュフールと乗る。

 

 

ヘリンエッテ     ヘンリ

 

 ヘンリはヘリンエッテを連れて川中の島に立ち寄る。そのころ、ロドルフもマダム・デュフールと陸に上がって、道化師のようにふざけて夫人を楽しませる。子供の様に楽しそうに笑い走る夫人。

 ヘンリとヘリンエッテは木陰で並んで座る。ヘンリはヘリンエッテを抱きしめる。ヘリンエッテは最初、抵抗するが、やがて身を任せる。ほのかに咲いた恋心。草の匂いを嗅ぎながら二人は何を思うのか。

 

ヘリンエッテ   ヘンリ

 

やがて雨が降り川面を打ち始める。優しい、慈しむような波紋が川面にいくつもいくつも生まれていく。

 

何年かたって、ヘリンエッテは店の従業員の男と結婚している。そして二人してかつてヘンリといっとき過ごした川中の島へ来ている。男は寝っ転がって眠っている。そこへヘンリが一人で舟をこいでやってくる。ヘンリとヘリンエッテは向かい合う。

 

ヘリンエッテ

 

「ここへはよく来るんだ。思い出の場所だから」ヘンリはいう。

「私は毎晩思い出すわ」そういうヘリンエッテの頬には涙が流れる。

 離れたところから、ヘリンエッテの夫の呼ぶ声がする。二人は一瞬見つめ合ったのち別れる。

 島の木陰から二人が去っていく様子を見つめるヘンリ。ものぐさそうな夫を舟に乗せ、オールをこいでヘリンエッテは遠ざかっていく。

 

 

 

青春の一瞬の切ない輝きを表した物語。希望と現実の落差。その残酷なこと。

印象派のような映像。陽の温かさ、木々香り、草の匂いが画面からほのかに漂ってくるようだ。この映画をジャン・ルノワールの最高傑作という人たちもいる。

主演のシルビア・バタイユは撮影当時、哲学者のジョルジュ・バタイユのであった。ジョルジュ・バタイユの『眼球譚(目玉の話)』『マダム・エドワルダ』を読んだことがあるが、不可解な小説でよく理解できなかった。ベースに横たわる素養が足りないのだろう。