監督 ジョン・ヒューストン

エイハブ船長(グレゴリー・ペック)

イシュメール(リチャード・ベイスハート)

スターバック(レオ・ゲン)一等航海士、物静かだが勇敢

スタッブ(ハリー・アンドリュース)二等航海士

船大工(ノエル・パーセル)

ダグー(エドリック・コナー)アフリカ人、三番手の銛撃ち

ガーデナー船長(フランシス・デ・ウルフ)息子を探す捕鯨船の船長

イライジャ(ロイヤル・ダノ)予言者

フラスク(シーモス・ケリー)三等航海士

クィークェグ(フレデリック・レデブール)一番の銛撃ち

ピップ(タンバ・アレン)黒人の給仕係の少年

タシュテゴ(トム・クレッグ)二番手の銛撃ち、先住民

マップル神父(オーソン・ウェルズ)

1956年/アメリカ

 

白いマッコウクジラに執念を燃やすエイハブ船長。

エイハブはその鯨に片足を食いちぎられ義足をつけている。

その義足はクジラの骨でできている。

闘いのとき、エイハブは白鯨に這い上がっていき、

縄に身を囚われながらも長い銛を何度も差し込む。

しかし、分厚い皮下脂肪を持った鯨は何もなかったように、

エイハブ船長とともに深みへと泳ぎ去る。

再び白鯨が浮上したときには、

鯨に括り付けられていたエイハブ船長は死んでいた。

しかしその腕が、皆を誘うように、

鯨の泳ぎに合わせて何度も振られるのだった…。

 

教会で説教を説く神父は、

豊かなひげを蓄えたオーソン・ウェルズ。

貫禄ある説教だ。

 

 

脚本を書いているのは、

監督のジョン・ヒューストンとのレイ小説家レイ・ブラッドベリ。

 

お勧め度

★★★★☆

 

 

 本映画の語り手はイシュメール。放浪している若者だ、彼は海の引き寄せられるように、捕鯨の拠点となっている港へとたどり着く。

 飲み屋へ行くと、鯨採りの乗組員たちが飲んでいて、捕鯨の仲間として受け入れられる。

 

スタッブ      イシュメール

 

 飲み屋は宿を兼業しており、同室となったのは先住民の男クィークェグだった。クィークェグは顔や体に独特の入れ墨を施している。

 

クィークェグ

 

 二人は友人となる。そして、エイハブ船長の船ピークォド号に乗り込むことになる。

 乗船するとき襤褸を着た男が2人に忠告する。エイハブは死に、残りの者たちも一人を残して全員死ぬ。確信に満ちた予言に、イシュメールは怒りよりも畏怖を感じる。イシュメールが名を聞くと予言者はイライジャと名乗った。

 

イライジャ 

 

 船は東方のクジラの漁場を目指す。船には大工や鍛冶屋も乗り込んでいる。

 

 

 

 エイハブは自室に閉じこもり、皆が寝静まった頃に置きだし甲板の上を歩く。その不気味な足音にイシュメールは目を覚ます。姿はまだ見ていない。

 

 あるとき突然エイハブ船長は皆の前に姿を現す。威厳と狂気を孕ませた表情。

 

 

エイハブ船長

 

 船は白鯨を追うことになる。エイハブの執念の探索。エイハブはすでに狂っているのかもしれない。

 船員たちの間では白い鯨:モビーディックは伝説のようになっている。幾人もの捕鯨船が戦いを挑んだが、皆返り討ちにされた。その白い体には幾本もの銛が刺さっている。仕留めたと思っても戻ってくる。巨大な白い怪物、大理石の墓石なのだ。

 

 捕鯨船にはエンジンが付いていなく、銛を人間が投げつけて鯨をしとめる。クジラを見つけると手漕ぎのボート数隻で鯨に近づき銛を投げる。鯨は潜ろうとする。船は転覆し命がけの戦いとなる。

 

 私的な復讐のために白鯨を追うエイハブ船長に一等航海士のスターバックは反対の意思を表明する。鯨漁は復讐のためではない。脂を取り人々の生活を豊かにするためのものだ。その結果、鯨猟師に富をもたらす。

 エイハブは「金など、どうでもよい」という。怨念と憎悪に掻き乱れた復讐心があるのみだ。

 

 船はロンドンに船籍を持つサミュエル・エンダビイ号に出会う。船長のブーマーが白鯨を見たというと、エイハブの顔色が変わる。大漁になる予定だった捕鯨を中断させ、白鯨を追い始める。二等航海士のスタップは不満顔だが船長の命令に従う。

 スターバックは他の二人の航海士に「エイハブは危険だ。彼に従っていると故郷に戻ることはできない」と話すが相手にされない。「エイハブは立派な船長だ」と他の航海士はいう。

 

 凪に入り船は停滞する。皆、暑さで参っている。

 クィークェグは骨で何やら占いをしている。イシュメールが寄ってきて何をしていると聞くと、クィークェグの顔が引きつる。そして船大工を呼ばせると棺桶を作ってくれと依頼する。そして自分の持ち物をイシュメールに譲る。その後キィークウェグは、イシュメールが促しても、座して食事もとらず水も飲まなくなる。その様子を見たスターバックはイシュメールに話をする。

「前にも見たことがある。財産をすべて人に譲って死を待つのだ」

 

キィークウェグ

 

 じっと座って動かないキィークウェグの胸にナイフで傷をつけて悪戯をする男がいる。それに気が付いたイシュメールはその男を殴りつける。男はナイフを持ってイシュメールに迫って来る。窮地に立たされるイシュメール。そこにキィークウェグが助けに入り男の首の骨を折って殺す。

 そのとき、見張り番が鯨を発見する。その塩の噴き方を見てエイハブは「モビーディックだ、俺にはわかる」と呟き、目を光らせる。エイハブはボートを出させるが、白鯨は悠々と逃げ去っていく。

 

 その後、航海の途中で、捕鯨船レイチェル号に出会う。白鯨と出会って銛を打ち込んだが一艘のボートを見失った。そこにはレイチェル号の船長の12歳の息子が乗り込んでいた。一緒に探してくれ、とレイチェル号の船長は懇願するが、エイハブは「自分は白鯨を追う」といって無慈悲にも断る。スターバックはエイハブに異議を唱える。

「キリスト者であれば断れない頼みだ」

しかし、エイハブは聞く耳を持たない。

 

 船は嵐に出くわす。遭難の危機だ。激しい風と豪雨。波しぶきが甲板の船員たちを襲う。スターバックは「帆をたたむ」ことをエイハブに訴えるが、エイハブはそれを拒否する。船を予定通りに進め、白鯨を追うことを優先する。

 マストを切り倒すとするスターバックにエイハブは銛を突きつけやめさせようとする。そのときマストが緑色に光だす。

「セント・エルモの火だ!」その火はエイハブの持つ銛にも宿る。

 

 

 不思議なことに嵐は収まる。

「神が味方したのだ」エイハブはいう。その様子を冷めた目で見つめるスターバック。

 破れた帆を張り替えて船は進んでいく。スターバック以外の船員たちは、エイハブに魅入られ、操られているようだ。

 

 スターバックはエイハブを拳銃で撃ち殺そうとするができない。それに気が付いたエイハブはいう。

「お前は、俺はから離れることができない」

 

 そのときだ、白鯨の気配を感じる。先頭に立ってボートに乗り込むエイハブ。

 

 

エイハブ

 

 白鯨の背中には幾本もの銛が突き刺さっている。

 近づき銛を次々に放つ。白鯨は反撃に転じ、ボートを転覆させる。

 白鯨によじ登ったエイハブは狂った容易銛を何度も突き立てる呪詛の言葉を吐きながら。白鯨は海に潜り、再び上がってきたときにはエイハブは溺れ死んでいる。しかしエイハブの腕は乗り組みん員たちを誘うように「」こっちにこい!」と叫んでいるかのように動く。

 

エイハブ

 

 それを見た乗員は怖気づくが、そこで声を上げたのはスターバックだった。

「鯨を追え! 奴はでかいがただの鯨だ」

 残りのボートは白鯨を追い、銛を打ち込むが、白鯨はボートをことごとく転覆させ、海に浮いた船員を飲み込んだり、尾ひれで叩きのめしたりする。

 

 

 

 そして最後に母船ピークォド号をたやすく沈め、海深く潜っていく。

 

 

 生き残ったのはイシュメール唯一人だった。乗り込むときに出会ったイライジャのいった通りとなった。

 棺桶が浮かんでくる。キィークウェグの棺桶だ。イシュメールはその上に乗り漂い、息子を探していたレイチェル号に救われる。

 

 

 原作のハーマン・メルヴィルは捕鯨船の乗組員をしていたことがあり、その経験と知識を持って小説を書いたとのこと。

アメリカの捕鯨は鯨油を撮ることが目的だった。海上で皮をはぎ、船内の釜で煮詰めて油を抽出した。航海は数年にわたった。鯨油はろうそくやランプ、産業用として重宝されたが、石油の普及とともに捕鯨業は衰退した。

 カフェチェーン店の「スターバックス」の店名は、『白鯨』に登場する一等航海士「スターバック」の名前から取られている。