監督 ジョン・マクティアナン

ポミエ(ピアース・ブロスナン)

ごろつきリーダー(アダム・アント)

アイリーン(レスリー・アン・ダウン)

ニキ(アンナ・マリア・モンティチェリ)

1985年/アメリカ

 

監督は後に『ダイ・ハード』を撮るジョン・マクティアナン。

ピアース・ブロスナンはこの映画のあと10年後に

『ゴールデンアイ』ジェームズ・ボンドを演じる。

主役の女医を演じたレスリー・アン・ダウン。

 

お勧め度

★★★★☆

 

 

 ロス・アンジェルス。

 深夜、精神科医の女医アイリーンが当直で眠っていたときに急患で起こされる。

海辺の公園で発見された男。血まみれで喚き散らし暴れて鎮静剤も打てない。

 

 

アイリーンが診察室へ行くと、男はベッドにつながれ、血まみれでフランス語を喚いている。診察する為になだめて近寄っていく。その瞬間、男が上体を起こしアイリーンを襲ったかに見えた。しかし、男はアイリーンの耳元で何かを呟く。男はそのまま死んでいく。

 

 アイリーンは当直を早めに切り上げて家に帰る。寝室で寝ると奇妙な夢を見る。現実感がある。驚いて起きると朝になっていた。

 

 翌朝、ラウンジで友人のキャシーと朝食をとっていると、同僚の医師が来る。そして、昨夜死んだ男は、学界では有名なカリフォルニア大の人類学者ポミエだったと聞かされる。麻薬中毒でも変質者でも浮浪者でもなかった。アメリカへ来て1週間だったという。フランス人だった。

 

 「ニ・ソン・パ、ソン・デジノワ」アイリーンは、男が死ぬ寸前に耳元でささやいた言葉を思い出す。キャシーにこの言葉の意味を聞いてみる。「ニ・ソン・パ」は「彼らはいない」だとキャシー答える。だが、「ソン・デジノワ」はわからなかった。

 

 勤務中、不可解なことをいうアイリーンを看護婦は心配そうな顔で見る。廊下を歩いていると、突然幻覚を見る。幻覚の強度が徐々に強まっていく。それは、死んだ学者ポミエがアメリカへ来たときから順を追って見えているようだった。彼は細君ニキと一緒に住むところを探している。

 

アイリーン

 

エポ三       ニキ

 

ポエミ      ニキ

 

 アイリーンは幻覚を見ながら院内で倒れて、目や鼻から謎の出血を起こす。医師たちにも原因は分からない。

 

アイリーン

 

アイリーン

 

 ポミエとニキが住むところを決めて、引っ越す。しかし、夜になると近所の路上で騒いでいるごろつき達がいる。車庫に「SEX DEATH PIGS KILL」などと落書きをされる。ポミエは不安を覚える。これまでは調査のために世界中の未発達の地域赴いて、現地の生活習慣を観察してきた。アフリカの少数民族、イヌイット…。結婚後初めての都会生活だ。いきなりの不安材料が降ってわいた格好になる。

 その後、越してきた場所で、殺人事件が起きていたことを知る。ミュージシャンが自分の子供を殺していた。

 

 アイリーンは、ポミエの体験したことを追体験しているようだ。ベッドに横たわり、覚醒していないのに脳波を図ると起きて活動している波形になっている。医師たちは訝しむ。医学的にあり得ない。どうしてしまったのか。

 

 ポミエとニキ気が寝ようとして2階へ行こうとしたとき、ポミエは家の前にごろつきの車が静かにゆっくりと近づくのを窓の外に見る。ニキにはうまいことをいってごまかし、カメラを持って家を出て確かめようとする。そこにニキがあらわれる。ポミエの言動に疑わしいものを感じたのだ。ニキは不審そうな表情を浮かべるが「街を見てくる」というポミエに、割り切ったように、微笑みながらフランス語で「行ってらっしゃい!」という。

 ポミエはごろつきの車を追跡する。

 

ニキ

 

 病院では、アイリーンがいなくなる。ポミエの動きと連動しているのだ。しばらくすると、アイリーンは海辺でひとり座り虚ろな表情をしている。

 

アイリーン

 

 ポエミはごろつきの車を追って街中で連中を撮影する。翌日も、追跡を続けて個々のメンバーの写真を隠れて撮る。キツイ顔つきの女、革のベストを着て鋲のついた革のブレスレッドをしたマッチョな男。金髪に派手な化粧の女。刹那的で荒々しい行動。人に迷惑をかけることに喜びを感じているように見える。

 

 高架下の片隅の薄暗いところで、ごろつき達は人を殺す。その死体をゴミ箱へ放り込む。見ていたポミエはこらえきれずに

「やめろ」と叫ぶ。

 ごろつき達はポエミを認め、ポエミは身の危険を感じて逃げ出す。うまく巻いたあと、ごみ箱を確認するが死体は入ってない。ポエミは再び追跡を始めるのだった。

 

 ポエミはごろつき達を探し当て、写真を撮り始める。それに気が付いたごろつきのリーダーは女を促し踊らせる。ロックを流し激しく挑発するように踊る。撮られていることを承知している。ポエミはその女に近づきシャッターを何枚も切る。

 

 

 家に戻ると心配したニキが待っていた。怒っている。ポミエはニキをなだめ謝り、ごろつき達を、都会の放浪民と説明する。定住せず、常に移動して歩く。未開の地にいる放浪民がこの都会でも存在していることに驚きを隠せないでいる。

その後フィルムを現像する。写したはずなのにごろつき達の姿は写真にはなかった。

 

 アイリーンを探しに家に行ったキャシーは電話を受け取る。ボストンに住む学者でアイリーンから言葉の意味の解明を依頼されていたようだ。元の同僚だ。

 「デジノワ」は架空の名前らしい。しかし、エスキモー語に「イヌアト」という言葉がある。「悪霊」という意味で、姿形は人間と同じで、災難の有った場所に住み、災いと混乱をもたらすものだという。

 

 ポエミはごろつき達の謎を解こうと、また夜の街へ赴く。ごろつき達を発見するが車で後を追われ、廃墟へたどり着く。入り口に539と表示されている。

 中に入って様子をうかがっていると、突然女の声が聞こえる。ポエミは最初驚くが、尼僧と分かり安心した顔をする。しかし、尼僧が自分の名前を知っていることに驚く。疑念を抱きながらお茶に誘われる。尼僧はいう。

 

尼僧

 

「世の中にはいわくつきの場所があって、それらを引き付けるわ。あなたは深入りしすぎてしまった。彼らはあなたを知ってしまった。街を出て身を隠すのよ。逃げるのよ」

 すると突然多くの尼僧が追いかけてくるシーンに転換する。ポエミは逃げる。

 そして車の中で目を覚ます。家の車庫の前に停めた自分の車の中で寝ていたのだ。悪夢だったのか? しかし、ルームミラーを見ると、ごろつきのメンバーの女が映りこみ蔑むように笑う。車から転げでるポエミ。どこまでが幻想でどこからが現実なのか?

 それでも尼僧の進言に従って、ニキを連れて他所へ逃げようとする。

 

 アイリーンは気が付くとニキに介抱されている。知らぬ間にポエミとニキの家に来ていたのだ。幻覚と現実が入り混じりアイリーンは混乱する。しかし、ポエミがここから逃げようとしていたことに気が付き、逃げる準備をするのだが、ごろつき達が家の前に集まってくる。

 ハーレーに乗ったバイカー達も終結し、人数は膨れ上がっていく。そして、一気に家の中へとなだれこんでくる。屋根裏部屋に逃げて、何とか難を逃れ、翌日アイリーンとニキは乗用車に乗り走り始める。するとバイクが1台途中からついてくる。追い立てているようだ。バイクは州境で車を追い抜き、路肩に泊る。そして車のほうを見つめ、ゴーグルを外す。その顔はポエミのそれであった。

 

 

 

 何とも言えないあと味の映画。サスペンス風に始まり、悪霊に取りつかれ命を狙われていく。取りつかれて死んだポエミは、女医に望みを託し妻のニキを助けるように誘導していく。

 539とは「そんなことをしてもうまくいかないよ」という意味になるらしい。

 髭面のピアース・ブロスナンの男くささがムンムンと香り立つ。