監督 マリオ・パーヴァ
レアンドロ(テリー・サバラス)
リサ・ライナー(エルケ・ソマー)
ソフィア・レハー(シルヴァ・コシナ)
カウンテス(アリダ・ヴァリ)女主人
マックス(アレッシオ・オラーノ)カウンテスの息子
1973年/イタリア、スペイン
監督は幻想的なホラーを作りたかったのだろう。
『白い肌に狂う鞭』も『クレイジー・キラー』もそのような線を狙った作品のような気がする。
『エクソシスト』のヒットにあやかって
1975年にこの映画をもとにして『新エクソシスト/死肉のダンス』を作っている。
お勧め度
★★☆☆☆ ~ ★★★☆☆
イタリア(ひょっとしてスペインか?)の古めかしい都市へ友人と二人で団体旅行に参加して来ていたリサは、オルゴールの奏でる音色に惹かれて、勝手な行動に走り、皆から離れ、アンティークショップに入り込む。そこでは何やら人形を作っている職人と客の男レアンドロが話をしていた。レアンドロは店の職人に人形制作を注文したらしい。その出来栄えをレアンドロはほめている。リサに気が付きレアンドロが振り返る。レアンドロは驚いた顔つきをする。リサもレアンドロの顔を見て凍り付く。先ほど見た、広場のフレスコ画に描かれていた悪魔の顔にそっくりなのだ。
レアンドロ
リサ
リサは、慌てて店を出るが迷子になってしまう。石造りの古い街中には人気がない。たまに見かける人もリサのことを無視する。
「エリカ! 待っていたよ」見知らぬ男がリサに話しかける。リサは言い寄る男を、思わず突き飛ばす。男は階段を転落し頭から血を流し動かなくなる。その傍らには壊れた懐中時計が転がっている。
街をさまよっているうちに夜になる。リサは偶然通りかかった高級車に乗せてもらう。後ろの席には裕福そうな夫婦が乗っている。運転者は二人の専属の運転手だ。
車の調子が悪くなり止まってしまうと、その前の大きな門扉が開き、そこから顔を出したのはレアンドロであった。レアンドロはこの屋敷の召使だったのだ。
レアンドロ
車から降りたリサが、レアンドロを見て驚いていると若い男マックスが「エリカ!」と話しかけてくる。
「そこにいて。僕と一緒にいて」などといいだし、車に乗っていた一行は、屋敷の女主人カウンテスの許可を得て、その不気味な雰囲気漂う屋敷の離れに泊めてもらうこととなる。
マックス
リサが部屋にいると、昼間、階段から落ちた男の時計がいきなり部屋の床に転がる。
そして窓から、あの男がのぞいている。
驚いたリサは、部屋から逃げ出し、暗い庭に出る。するとまたあの男が木陰からリサを見つめている。リサはとっさに反対方向へ駆け出すがそこにマックスがたっている。
「エリカ! 君が戻ってくれてうれしいよ」
とマックスはまたわけのわからないことをいう。
晩餐が始まり、女主人が現れる。レアンドロは敬虔に迎い入れ、椅子に座らせる。息子のマックスも母親には異常なほど気を使っている。
女主人
裕福な夫婦の運転手ジョージが喉を裂かれて殺される。夫人は嘆き悲しむ。
運転手ジョージ
裕福な夫人
夫人と運転手はできていたのだ。それを夫も知っていた。黙認していたのだ。しかし、誰かが殺してくれた。
「ロマンスは終わりだ」夫は夫人に告げる。夫人はその言葉に怒り、夫を車で轢き殺す。何度も轢く。溜まっていた怨念を解放する。
次に、夫人が殺される。頭を何度も殴りつけられて撲殺される。殺したのはマックスだ。そのあと、マックスは母親カウンテスも殺してしまう。そして、リサに愛しているといいながら薬を嗅がせて眠らせる。
マックスはいったい何を考えているのか。物語は迷宮の世界へと入っていく。
最後に生き残るのは誰なのか?
かなえられなかった愛の生活。追想のむこうから忍び寄る孤独と寂寥。哀しくて切ない愛の物語。そんな映画にしたかったのではないかと思う。しかし、少し生臭い人たちもいて、途中からよくわからない展開となり、出てくる人たちが、生きているのか死んでいるのかどうでもよくなってくるあたりが、この映画の特徴ではないのか。
リサは自分が死んでいることに気が付いておらず、そんなリサを温かいまなざしで見つめるレアンドロには悪魔感を感じることができず「いい人なのか?」と思ってしまう。
謎めいた女主人(アリダ・ヴァリの貫禄の演技!)。母親にかしずく変態息子のマックス。思わせぶりな召使のレアンドロ(不気味なテリー・サバラス!)。
軽率なのか心配性なのか、少し頭の弱そうなリサ。運転手と不倫をしている夫人とそれを黙認している臆病な夫。
MとSが入り乱れ、誰一人としてまともな人が出てこない。音楽はかわいらいオルゴールだったり、アランフェス協奏曲になったり、さっそうとしたマカロニウエスタン風になったりと幅が広い。
レアンドロを演じたテリー・サバラスは『刑事コジャック』でも飴をなめていたことが思い出された。テリー・サバラスが映画の始まりと終わりを飾っている。