監督 ノーマン・ジェイソン
ジョナサン・E(ジェームズ・カーン)
バーソロミュー(ジョン・ハウスマン)社長
ムーンパイ(ジョン・ベック)同僚
クレータス(モーゼス・ガン)コーチ
エラ(モード・アダムス)元妻
1975年/アメリカ
かつて「ローラーゲーム」という番組がはやっていた。
ローラスケートを履いて、トラックを走りながら敵を倒していくというゲームだった。
どのように加点されるのか覚えていないが、
子供だった頃それを見て興奮したことを思いだす。
プロレスを見るような感覚だった。演出がなされていたのだろう。
そんな折に、作られたのがこの映画『ローラーボール』だったと思う。
公開当時、劇場で見たことがあるが、映画の中の「大人の事情」を理解しておらず、
ただの殺人ゲームと思っていた。
さらに、モード・アダムスの存在の意味もわかっておらず、
ジョナサンのただの愛人と思っていた。
今回見て、「大人の事情」もモード・アダムスの存在理由もよくわかった。
お勧め度
★★★☆☆
2018年、世界は平和な時代になっていた、戦争はなくなり、食糧危機、自然破壊、エネルギー問題もなくなっている。物質的には何の心配もないが、人が本来有する闘争心のはけ口としてローラーゲームが存在している。
ローラーボールは過激なゲームで、怪我は当たりまえで、死亡することもある。大衆はその試合を見て興奮し、ストレス、闘争心を解消する。
競技は円形のトラックで行われる。2チームに分かれて選手は10人ずつ。バイクも数台走る。鉄球がトラックに放たれるとそれを奪い合ってマグネット・ゴールに投げ入れる。鉄球を奪い合う過程で、相手を殴り、蹴り、叩きのめす。
世界は6つの企業に支配されている。その中でも強大な力を持つのがエネルギー部門のボス、バーソロミューだ。彼は、ヒューストンチームを配下に置いている。
バーソロミュー
ヒューストンチームの人気選手ジョナサンは、圧倒的な戦闘力で他の選手を凌駕している。
彼はジョナサンが大衆のカリスマとなることを恐れている。大衆が彼に先導されて、大企業が治める「平和な状態」をかき乱すことを恐れる。
ジョナサン
あるとき、バーソロミューは本社にジョナサンを呼び出し、引退を勧告する。ジョナサンは戸惑い反論する。しかしバーソロミューは言い切る。
「私に反抗しないことだ」
バーソロミュー
ジョナサン
ジョナサンは、妻エラが家を出ていったのも、バーソロミューが関係しているのではないかと疑う。
ジョナサンはコーチのクレータスに相談する。クレータスは心の許せる友人でもあるのだ。
クレータス
クレータスは誰がどのような理由で手をまわしたのか探り始める。しかし、皆、ダンマリでしゃべろうとしない。実際知らない者も多いようだ。
東京のチームと準決勝をすることになる。ルールは変更され、過激度が増している。ペナリティはなしだ。監督のラスティがチームのメンバーにルール変更を告げる。
「ルールが変わっても、勝つことはできる」監督はいう。
新しいコーチが追認される。日本人だ。コーチは空手や合気道の話をする。
日本人コーチ
「戦法を変えろ」コーチはいうが、チームメンバーは聞く耳を持たない。ジョナサンの相棒ムーンパイは日本人をなめ切り、調子づいている。ジャップの小さい奴らなど叩きのめせばいいと思っている。
ムーンパイ
ルールの変更は、実はジョナサンを消すことが目的で、裏で指示されていたのだった。
メンバーたちはそうとも知らずに、パーティーに参加して女と踊り酒を飲み、浮ついた行動をする。ジョナサンの活躍する映像を見て熱狂する。きれいな女たち。酒と食事。ムーンパイもはしゃいで、女に手を出し遊んでいる。しかしジョナサンは、思案気な顔つきでパーティーを楽しむことができないでいる。
夜が明け、パーティーの参加者が銃で背の高い樹木を撃ち始める。木は一気に燃え上がる。それを見て熱狂する男と女たち。何かを破壊したいという願望を皆が持っている。その潜在的な欲望がローラーゲームに反映されている。大衆はローラーゲームにのめり込む。
バーソロミューはジョナサンにいう。
「東京へ行かせない。君はもう引退したのだ」
ジョナサンはその言葉に逆らい東京へと乗り込んでいく。
意気揚々と敵地へ乗り込むヒューストンチーム。
試合が始まり、日本人が相手を倒すと日本の大衆は熱狂する。ゲームは壮絶を極める。死者も多く出る。
ムーンパイ
ジョナサンの盟友ムーンパイは、日本人に捕まり、後頭部に空手の突きを食らって植物状態になる。ゲームには勝ったが、ジョナサンの胸中には冷たい風が吹いていた。
ムーンパイ
次のゲームが最終試合となる。交代なし、罰則なし、時間無制限のルール。つまり最後に一人だけ生き残ることになる。
ジョナサンの元妻エマは、ジョナサンに深刻な顔でいう。
「次の試合には出ないで」
ジョナサンは、しかし元妻の言葉に従う気持ちはない。
「俺が試合に出ないことで、お前は何を得るのだ」
エマはバーソロミューの手先ではないか、とジョナサンは疑っている。
エマ
最後のゲームが始まる。東京でのゲームよりも凄惨な試合となる。互いに相手を殺すつもりでやっている。次々と死者が出る。残るは、ジョナサンと相手のチーム2人だ。
ジョナサン
ジョナサンは疲れ傷ついている。そこへ、相手のひとりが襲い掛かる。ジョナサンは相手をかわし逆に取り押さえて首の骨を折って殺す。
残りのひとりも、ジョナサンに打ちのめされる。ジョナサンは鉄球を拾い上げて、マグネット・ゴールに叩き込む。
観衆は「ジョナサン!」と連呼し会場は割れんばかりの声援に包まれる。試合を見ていたバーソロミューは恐怖にも似た表を浮かべる。ジョナサンは、怒りを込めてトラックを疾走する。
ジョナサン
途中、水増し的な描写が多くあるような気がする。バーソロミューがジョナサンを恐れる理由も根拠がはっきりとしない。なんだか締まりのない映画と感じた。
ところで、バーソロミューを演じたジョン・ハウスマンについては『ペーパー・チェイス』の教授役が印象に残っている。見たのはずいぶん前だ。リンゼイ・ワグナー(バイオニック・ジェミー!)も少しだが出ていた。大学生が試験勉強をして好成績を残すが、なんだかむなしい、という感じの映画と記憶しているが、もう一度見てみたい。