監督 アキ・カウリスマキ
ニカンデル(マッティ・ペロンパー)
オロナ(カティ・オウティネン)
メラルティン(サカリ・クオスマネン)
ニカンデンの相棒(エスコ・ニッカリ)
1986年/フィンランド
アキ・カウリスマキの『労働者3部作』の1作目。
庶民の質素な生活。「雇われ人」という生き方の地位の危うさ。
変わり映えのしない日常の中に不意に訪れる心ゆれる出来事。
カウリスマキらしい映画。
お勧め度
★★★★☆
ゴミ収集の仕事しているニカンデン。相棒は勤続25年の初老の男だ。
ニカンデン
あるとき仕事終わり、更衣室で休んでいるときに、男がニカンデンに「独立する。まずはトラック5台から始める。手を貸してくれないか」と相談を持ち掛ける。
ニカンデン
ニカンデンの相棒
ニカンデンはその帰りにスーパーに寄る。手首に怪我をしていることにレジ係の女性オロナが気付き、バックヤードで手当てをしてくれる。
オロナ
ニカンデンは独身で、自分のアパートへ戻り独り夕食を作って食べる。
オロナは同僚の女性に誘われ、仕事の後なんとなくダンスホールへ行く。古めかしいロックンロールのかかった大衆的な店。オロナはつまらなそうに煙草に火をつける。
オロナ 同僚の女性
ニカンデンは初老の相棒の誘いに乗って一緒に事業をすることを約束する。男はいう、銀行の融資もついている、車庫も確保した。男は張り切っている。ニカンデンは、独立のため英語を習い始める。英語を会社経営に役立てようとしている。
しかし、初老の相棒はニカンデンと仕事しているときに心臓を押さえて倒れこみ、あっけなく死んでしまう。
ニカンデンは夜の飲み屋で酔い過ぎて暴れ、留置所に入れられる。そこで、同じ房に入っていた男メラルティンと知り合う。ニカンデンは失業中のメラルティンをゴミ回収の仕事に誘い一緒に働くようになる。
メラルティン
ニカンデンはスーパーで働くオロナをデートに誘う。オロナはOKする。
オロナ ニカンデン
初デートにスーツを着込んで迎えに行くニカンデン。車の乗っていった先は、ビンゴハウス。オロナは呆れて立ち去る。
「私たちはうまくいかないわ」
ある晩、店長に呼ばれたオロナは解雇を告げられる。猶予は2週間あったが、怒ったオロナはすぐにやめる。店を出るとき、店長室の手持ち金庫をくすねていく。
その後、偶然、ガソリンスタンドにニカンデンを見かけてオロナはドライブに連れて行ってと誘う。
二人でホテルへ行き部屋をとる。まずは食事をすることになる。ピアニストがやけっぱちに鍵盤をたたく中で二人は食事する。その後は別々の部屋に入って眠る。
翌朝、オロナは盗んだ金庫のことをニカンデンに話す。二人は金庫をもとに戻すことにし、ニカンデンがスーパーへ持ち込むことになる。オロナは自宅へ戻ったところ、警察に捕まってしまう。取り調べでは、金庫を盗んでいないと言い張る。
その後、店で庫が発見されて、オロナは解放される。そして、トランクに荷物を積めアパートを出ていく。一晩街を彷徨ったのち、オロナはニカンデンのアパートへ行く。
ニカンデン オロナ
オロナは新しい仕事を見つけ、働き始める。しかし、ニカンデンとの関係がうまくいかない。ニカンデンは消極的だし、オロナはどこか素直になれないところがある。結局、オロナはニカンデンのアパートを出ていく。
ニカンデン オロナ
ニカンデンは寂しく心が荒れ、オロナも喪失感が大きい。
ニカンデンは、オロナの仕事場に現れるが、店長と一緒に出掛けるところであった。ニカンデンは店長を追い払い、オロナと少し会話をするが気持ちが通わない。
同僚のメラルティンが、暴漢に襲われて怪我をして入院しているニカンデンを見舞いに来る。そしてオロナとのことを聞き、ニカンデンを鼓舞する。
ニカンデンは着替えをし、身なりと整えオロナの勤める店に向かう。
ニカンデン
少ない科白。淡々とした物語の運び方。聞こえてくる古めかしい音楽。街の風景の中にごみ収集車が走る。ブルーカラーの生活感が漂う。
ニカンデンの同僚のメラルティンもいい味を出している。どこかだらしがなく、アル中気味でやる気の無いように見える。しかし家庭を持っており小さな子もいる。奥さんは苦労しているようだが仲は悪くない。ニカンデンがオロナとデートするときに金を苦労して工面したり、4人でデートを持ち掛けたり、ニカンデンが落ち込んでいると励ます。
メラルティンの妻 メラルティン ニカンデン
つつましくそれなりの悩みや淋しさを抱えて暮らす人々が街を形成している。あまり明るい将来は見えてこないが、微かな希望を感じることのできる映画だと思う。