監督 北田直俊

賢治(柳内佑介)

樹里杏(AIRI)

刑事(剛州)

社長(池田ヒトシ)

事務員(中田茅佳)

2022年/日本

 

お勧め度

★★★☆☆

 

 

賢治は愛犬コロを連れて、

一人でモンスター映画を撮っている。

 

 

荷物の配送会社へ入って間もない。

小さな会社で、事務員や社長は人のよさそうな感じ。

賢治に気を使っている。

 

あるとき、縫いぐるみを抱えて

一人でぼんやりと歩く少女を見かける。

その淋しそうな雰囲気が賢治には気になる。

 

 

その少女は母子家庭の子。

いつもしょんぼりと一人で歩く。

 

 

雑貨店に入ってお菓子を買うと店の女性は、

くじを引かせる。

券は「はずれ」と出ているが、

「大当たり!」

といって、おにぎりとお菓子を好きに選ばせる。

この女性も少女の様子がおかしなことに

気が付いているのだろう。

 

少女は廃屋へと入り、お菓子を食べ、

ゴミ捨て場から拾ってきた絵本を読み始める。

いつも利用している廃屋だろうか。

少女の秘密の場所のようだ。

その近くで賢治が一人、映画の撮影をしていて、

二人は知り合いになる。

少女の名は樹里杏、9歳。

学校には行っていないようだ。

 

一緒に映画の撮影をするようになる。

そんな折、賢治の会社の事務員の女性と偶然会う。

事務員の女性は状況を知ると

少女は不登校で、

もしかしたら

ネグレクトされているのではないかという。

 

 

その後、賢治は樹里杏が

虐待されていることに気が付く。

樹里杏はそれをはっきりとはいおうとしない。

しかし、賢治は確信する。

 

樹里杏の母親は白い仮面をつけている。

母親は別れた夫から顔に酸を掛けられて

大火傷を負ったのだ。

樹里杏がまだ幼い頃だ。

それが原因で母親の精神は崩壊する。

樹里杏に対する虐待が始まる。

 

 

賢治は樹里杏に犬の縫いぐるみを与える。

縫いぐるみにはカメラが付いている。

母親が怒りだしたら、スイッチを押すように

樹里杏にいう。

「おかあさん、捕まっちゃうの?」

樹里杏は母を気遣う。

賢治は、捕まらないようにするといって安心させる。

 

樹里杏が賢治に渡したマイクロチップには

虐待の様子が克明に映されている。

それを手にして児童相談所に赴くが

盗撮だといわれて追い返される。

役所のやる気の無い態度と、

賢治の気の弱い部分が

ことを前に進めることができない。

 

賢治は、自身が子供の頃に

父親に虐待に近い扱をされていたことを回想する。

 

意を決した賢治は、

樹里杏を自宅に連れてきて面倒を見る。

自分で何とか、樹里杏を守ろうと考えたのだ。

会社には休みを取った。

 

服を買いに行く。

店員は「いいお父さんね」と樹里杏にいうが

樹里杏は

「お父さんじゃないの」

と答える。

それを必死にごまかす賢治。

店員は不信感を持つ。

 

 

ゲームセンターへ行って二人で遊ぶ。

孤独な男と恵まれない少女が一緒に遊ぶ姿は

刹那的で悲しい。

 

「人間のいない世界では、妬みや憎しみが消え

くだらない愛とか夢とか、意味のない家族とか

国境や、神とかお金とか、政治とか

本当にくだらない世界が消えて、

この星にようやく平和が訪れるんだよ」

 

「僕たちは、いつまで逃げようか」

 

 

賢治と一緒に映画の撮影をして、

樹里杏は楽しそうだ。

子どもらしい表情を浮かべている。

 

しかし、賢治の現実逃避のような

やり方はいつまでも続くはずがない。

そして…。

 

 

賢治の不器用でひっそりとした生き方。

なにかを避けているのか。

不遇な少女に手を差し伸べようする姿も

見ていて痛々しくなってくる。

小品だが重いテーマの作品だ。