監督 筧昌也

2003年/日本

大町健太郎:藤川俊生

美知川ユキ:吉居亜希子

マリ:木村文

隣人の富岡:小沢喬

 

筧雅也の自主製作映画。

前2作も学生時代(日芸)に作成した自主作成映画で、

夕張国際映画差に出品していた。

この3作目で賞を獲得。

映画の名前は知っていたが

見るまでは

「コメディのふざけた映画なのだろう」

と思っていた。

妙に心を揺さぶられた。

素人くさい作りに、

かえってそう思わされたのかも知れない。

 

お勧め度

★★★★☆

 

 

大学4年生の健太郎は演劇に興味があり、

一人芝居をかけるが観客は集まらず、

その劇場の最低動員記録を更新してしまう。

 

彼女のマリは、そんな健太郎を励ます。

健太郎は、B-ingで就職を探しながら、

適当に返事をしている。

卒論と就活で忙しい憲太郎。

福祉関係の仕事するマリは穏やかな眼差しで

健太郎を見ている。

 

健太郎     マリ

 

二人は一緒に暮らしている。

健太郎は、マリが少し疎ましくなってくる。

健太郎は別々に暮らすことを提案し

マリはそれを受け入れ、

健太郎の新しいアパートを

見つけてくれる。

 

引っ越した日、

荷物の整理をしていると

宅配便が来て、

隣の留守宅の荷物を預かることになる。

 

その後、隣の富岡が荷物を取りに来る。

ランニングに赤いジャージを履いたあくの強い男。

眼鏡がおしゃれだが似合っていない。

女に縁のなさそうな風体だ。

 

富岡

 

暮らし始めると、健太郎は奇妙なことに気が付く。

隣の部屋から、毎朝美女が出てくるのだ。

外人もいるし日本人もいる。

彼女たちは富岡にデレデレで

富岡も愛想よく振る舞っている。

熱愛中の恋人同士のようだ。

 

美女と富岡

 

なぜ、あの男がこんなにモテるのか?

健太郎は首をかしげる。

とある朝には、続々と10人以上の美女たちが

富岡の部屋から出てくる。

富岡は笑顔で彼女たちを送り出す。

健太郎は唖然とする。

 

健太郎

 

ある朝、ゴミ出しに行くと、

富岡が大きなごみ袋を出すところを見る。

富岡が去ったあと、

健太郎は袋の中身を確認する。

そこには「美女缶」と書かれた

空き缶がたくさん入っている。

 

 

 

ある日、健太郎は富岡の留守を確認して

ベランダから富岡の部屋にしのびこむ。

ブラジャーがたくさん干してあり、女子の部屋のようだ。

そして、テーブルに

たくさんの「美女缶」が置いてあるのを発見する。

 

憲太郎はそのうちのひとつをくすねる。

 

 

部屋に戻ると、マリがいる。

マリは合鍵を持っているのだ。

驚く健太郎に

「何してるの?」とマリはあどけなく聞く。

憲太郎は必死にごまかす。

 

健太郎はマリに、

合鍵を返してくれ、という。

どうして急にそんなこというの、

というマリは寂し気だ。

 

夜、健太郎は美女缶の説明書通り缶をかけて処理する。

「40度くらいの湯を張ったバスタブの中に

缶の中身をあけて30分待つ」とある。

 

 

30分後、美女が浴室から出てくる。

ユキというその少女は

無垢でかわいらしかった。

短大生で臨床心理学を勉強している。

 

それから二人は一緒に暮らし始めるが

何処かぎこちなく、清らかな関係だ。

 

ある夜隣に眠るユキの腰のあたりに

賞味期限が書かれたバーコードを見つける。

8月31日までがユキの命らしい。

彼女の後ろから抱くように手を回す

憲太郎。

 

隣の富岡は、健太郎がユキの美女缶を盗んだことを察知する。

そして、美女缶に付属しているテープを憲太郎に送る。

 

見知らぬ封書が届き

憲太郎は訝りながらも封筒を開ける。

「美知川ユキ」のオーナー様用の

事前学習用のビデオテープだった。

その内容は、ユキが憲太郎に語った話と一致していた。

大まかな生い立ちの記憶がユキには仕込まれていたのだ。

 

憲太郎が隠したビデオテープを、

憲太郎の留守中にユキが見てしまう。

 

憲太郎が、雨の中びしょ濡れになって家に帰ると

ユキがいない。

テーブルの上には食べかけのカレーライス。

(カレーは憲太郎の得意料理なのだ。

ユキのために作っておいたのだろう)

ビデオテープがテーブルの上に置いてあった。

 

呆然とする憲太郎。

そこにマリが訪ねてくる。

びしょ濡れの憲太郎を見て、着替えるように促す。

マリは世話女房のようだ。

憲太郎を見つめる目がやさしく、

そして心なしか淋しい。

 

「今度温泉に行こうよ」マリはいう。

憲太郎は上着を脱ぎながら答える。

「うん、そうしよう」

上着を脱いだ憲太郎の腰のあたりにはバーコードがあり

賞味期限が8月25日とある。

今日は8月25日だ。

マリは最後に憲太郎の顔を見に来たのだ。

そして「温泉いけなかったね」

とつぶやいて部屋を出ていく。

 

憲太郎はその後ユキを探しに街に出る。

公園の砂場のところでユキを見つける。

見つめ合う二人。

 

 

 

祭りの中を健太郎とユキが二人で

デートする描写に、

懐かしさを覚える。

金魚すくいをし、射的をして

子供のようにはしゃぐ。

掬った金魚2匹を水入れのポットで飼う。

水草も入れて、それを見つめるユキの表情は

健やかできれいだ。少し痛々しいくらいの幼さも感じる。

 

 

この子は将来、どんな人生を歩むのか、考えてしまう。

 

彼女と二人で金魚を見ていた

遠い昔の記憶が少し蘇った。