監督 ジョン・カサヴェテス

ニック(ピーター・フォーク)。

メイベル(ジーナ・ローランズ)

原題『A Woman Under the Influence』

 

インデペンデンス映画の父といわれる

ジョン・カサヴェテス監督のドラマ。

 

お勧め度

★★★☆☆

 

 

家庭の問題を抱えたニックは

ブルーカラーの労働者。

仕事のグループのリーダー役でもある。

妻のメイベルとの間には子供が3人いる。

長男、次男、そして一番下には長女。

ニックは、よくしゃべり、場を仕切りたがる。

自分の思うように事を進めたいタイプだ。

 

ニック

 

メイベルは精神が不安定だ。

子どもたちに対して

異常なほどの愛情を持っている。

狂騒的な接し方をすることも多い。

 

メイベル

 

子どもを母親の家に預け、

ニックとゆっくりと過ごそうとしていたある晩

急な仕事でニックは帰れなくなる。

 

ニック

 

メイベルは時間を持て余し、

夜の街へ出かけショットバーで男をひっかけて

家に連れ込み一晩を過ごす。

 

 

男が帰った後、

ニックは仕事仲間を連れて家に戻る。

お客が来て、急に気持ちが昂るメイベル。

 

メイベル    ニック

 

初めは皆で和気あいあいと食事を楽しむが

サービス精神が高まりはしゃぎすぎるメイベルを

ニックが一喝し、場は静まり返る。

皆すごすごと引き上げていく。

 

子ども預けに来たママ友の父親を、

用事があるといっているのに

無理やり家に引き入れ、

自分の子どもたちと一緒にはしゃぎ戯れ

父親を不安に陥れる。

「あなたを見ていると、子ども預けるのが不安になる」

父親はそう言って子供連れて帰ろうとする。

そこにニックが帰ってきて、

知らない男や子供がいるのを見て

怒りだす。

ニックの行動は異常である。

ふつうは理由を聞いて状況の確認をするだろう。

しかし、ニックは理解できないことが発生すると

怒りだすのだ。

早口でまくしたて、怒鳴り散らし

男とその子を家から追い出す。

 

その後メイベルは症状が悪化し精神病院へ入る。

 

メイベル

 

現場の友人がメイベルのことを心配する。

それがニックには気に食わない。

「いかれて病院行きだ、と言えば満足か?」

と友人を怒鳴りつける。

問題のない理想的な家庭に見せたかったのだ。

見栄の張り方も尋常ではない。

 

妻が不在のあいだ、ニックは子供たちを海へ連れていく。

そこで無理やり遊ばせる。

自分の思うとおりに子供を動かそうとする。

子どもたちは不安になる。

独善的で相手を自分の支配下に置きたがる。

 

メイベルが退院することになって

ニックはパーティーを催す。

家に大勢招きメイベルを待つが、

ニックの母親が、

こんなに大勢呼ぶとは思わなかった。

家族だけの祝いと思っていたのに、

と怒りだす。

その言葉に、ニックは反発するが、

結局は、招いた人達に帰ってもらうことにする。

支離滅裂な状況になるも、メイベルが戻ってくる。

子どもたちに再開する。

メイベルは涙を流す。

子供たちも母親に子供らしい愛情を示す。

テーブルに着いたメイベルは、

集まってくれた自分の両親、ニックの母親、

医師たちに挨拶をするが、

その抑制された言葉に、ニックが怒りだし

「もっと自分を出せ」などという。

ニックの言動は見ていて

恐ろしさを感じてしまうくらいだ。

 

 

イックはメイベルを追い詰める形となり

皆が帰った後、メイベルはパニックに陥る。

子どもたちは母親に寄り添うが、

ニックはそれを許そうとしない。

ひと騒動の後、

子どもたちを寝かしつけるメイベル。

子どもたちは母親が大好きなのだ。

 

そのあと何事もなかったかのように

ニックとメイベルは寝る準備を始める。

 

 

原題は「その影響下に置かれた女」と訳せる。

ニックがメイベルに影響を与えて、

精神的に不安定な状況に追い込んでいる、

ということだと思う。

ニックの独善性、見栄の張り方、怒り方、

すべてが異常だ。

 

 

退院後の家族パーティーのとき

メイベルは父親に訴える。

「私のために立ち上がって」

父親は「何のゲームかな?」といって理解できないが、

母親は理解する。

「ニックの影響下から私を救うために、ニックと戦って」

とメイベルはいいたかったのだと思う。

 

 

メイベルも気が付いているのだ。

自分がおかしくなった理由を。

それでも、夫婦の生活を維持していこうとする。

人は、矛盾した存在なのだ。