原題『La Vie en Rose』

監督 ジャン・フォーレエ

テュルロオ(ルイ・サルー)

ルコック(フランソワ・ペリエ)

コレット(コレットリ・シャール)

1949年/フランス

 

主人公テュルオロは、学校の教師。

きちんとした身なりで、背筋を伸ばし

高踏的な雰囲気を漂わせ、

切れ者のようにふるまいたいと思っている。

 

しかし実際のテュルオロは

そのような確信に満ちた言動をとることができないでいる。

膨れ上がった内的な自己と現実の自分の落差は、

見ていて気の毒になる。

夢想の中でのみ人生はバラ色になるのか…。

 

お勧め度

★★★☆☆

 

 

中学校の修了式の日に、

教師のテュルオロは

自殺を図るが失敗に終わる。

 

偶然、助けたのは同僚のルコックだった。

テュルオロは生真面目な教師で、

融通が利かず、人的関係をうまく

構築することができないでいる。

それゆえ周りの者からは

少々滑稽に見えていた。

 

一方で、美しい女と付き合っている自分を夢想して

悦に浸るようなところがある。

なんだかみじめで、ほの暗い人生を歩んでいる

四十男なのだった。

 

テュルオロ

 

ルコックは、弱ったテュルオロをベッドに寝かした後、

床に落ちていたテュルオロのノートを拾いあげる。

それをパラパラとめくり、

テュルオロがコレットに恋をしていることを知る。

コレットは校長の娘できれいな若い女だ。

そして、ルコックはコレットの恋人だった。

(ルコックは食堂で働く女性にも手を出していたが、

コレットが来て乗り換えたのだ)

 

ルコック

 

‐‐‐‐‐

 

テュルオロがコレットと出会ったのは、

生徒を連れて校外へ行ったあとの帰り道だった。

 

道端にきれいな女性がたたずんでいる。

女性は、自分は校長の娘で

名をコレットと自己紹介する。

女学校を卒業して戻ってきたのだ。

学校の敷地には校長の家があり、

教師たちや生徒の住む共同住宅(寮)もある。

 

テュルオロは、生徒たちにコレットの荷物を持たせ、

威厳あるようにふるまい、

饒舌にしゃべり始める。

 

18歳のコレットをテュルオロは美しいとほめる。

「今日は素敵な出会いの予感がしていた」

などという。

「きれいな風景ね」とコレットがいうと、

「君がいるからさ」などと答える。

口が達者である。打てば響くようである。

コレットはそんな風に振舞うテュルオロに

好意を抱いたようだ。

 

コレットは学校の仕事を手伝っているのか、

校内でよく見かけるようになる。

テュルオロはコレットと視線を交わす。

コレットはあいさつ代わりに微笑むのだが、

テュルオロは「自分に気がある」と思う。

自信に満ちているのだ。

その夜、自室で「何も言わなくても互いの気持ちは伝わる」

などとノートに書き込む。

 

ある夜、テュルオロが戯曲を書いていると

部屋にコレットが訪ねてくる。

 

外へ行きコレットから愛の告白を受け

有頂天になるテュルオロ。

しかし、表向きは大人の態度で振舞う。

クールに見せるために。

そして、りんごの木の

主枝の枝分かれしたところに手紙を置いて

交換し合うことにする。

 

部屋に戻る途中、ルコックに会う。

ルコックに愛の告白を受けたことをほのめかし、

悦に入る。

ルコックはテュルオロに合わせ

「あなたがうらやましい。

あなたは女性にもてる男だ」

などと褒める。

 

テュルオロは校長と話をした折に、

コレットの結婚相手の候補者が幾人かいることを知る。

そこで、結婚の相手になるには、

まず母親に好かれることが重要と考えて

花束を届けるように園芸屋に注文したりする。

なかなかしたたかだ。

 

道端で、シモーヌという女性が

話しかけてくる。

生徒の姉さんで、

テュルオロがルコックの友人ということを知っている。

シモールとルコックは恋人同士である。

しかし、「最近はわたしといても

心ここにあらずという感じがする」という。

テュルオロは威厳をもって答える。

「彼はあなたのもとに戻るはずだ」

なんとも調子がいい。しかし確信を持ったものいいだ。

シモーヌは安心した表情になる。

 

そのあと、テュルオロは

ルコックにシモーヌに会ったことを話す。

「シモーヌの心は君のことでいっぱいだ」

「彼女は良き妻になる。君は良き夫になるだろう」

テュルオロはおせっかい気味な話をするが、

ルコックはそれに素直にうなずく。

 

校長に家に招かれる。花のお礼だ。

そこで、書いている戯曲の話をする。

校長夫妻とコレット、そしてコレットの婿さん候補。

4人共熱心に話を聞く。

4人を揶揄した登場人物をでっちあげ、

ひとり悦に入る。

 

テュルオロはコレットとの愛をはぐくんでいく。

手紙の交換をして、愛を確かめ合う。

コレットはその身をテュルオロにささげる。

完璧な理想の生活…。

 

テュルオロ   コレット

 

‐‐‐‐‐

 

りんごの木に手紙を書いていたのは生徒たちの悪戯だった。

テュルオロの日記を読んだ生徒がからかったのだ。

教師として威厳がなく、

実際はおどおどしたテュルオロは

生徒に小馬鹿にされている。

校長もテュルオロの指導力を

問題視している。これが現実だった。

 

あるときは、生徒が手紙に、ある店に来るように書く。

呼ばれた喫茶店へ行って待ちぼうけを食って

2時間を無駄にする。

その店は、シモーヌが働いている店で、

その弟(テュルオロの教え子)はその様子を観察する。

テュルオロは待ちくたびれ

酒を注文し、

何杯もお代わりをして

酔っ払い醜態をさらす。

 

生徒がルコックとコレットが逢引きする情報を得る。

そこにテュルオロが来るように、

呼び出しの手紙を書く。

テュルオロは喜びその場所へ行く。

そこでテュルオロは

ルコックとコレットが

抱き合っている場面を目撃する。

テュルオロが抱いてきた妄想(コレットと恋仲になる)は

音を立てて立てて崩れ落ちる。

 

自殺未遂をし、傷心のテュルオロに学校を去っていく。

去り際にルコックとコレットとすれ違う。

ルコックには事情が分かっている。

そんなことを知らないコレットは、

「彼は結構いい人だったけど」

といってルコックに微笑みかける。

 

 

バラ色の人生、なんと皮肉な題名であろうか。

理想の自分は、誰しもが内面に秘めているであろう。

果たされなかった希望、その墓場は自己の内面に

築き上げるしかないのだろうか。