監督 中川信夫

1958年/日本 新東宝

 

<現代編>

久住哲一郎(細川俊夫)

久住頼子(江島由里子)

頼子の兄・健一(倉橋広明)

老婆(怨霊)(五月藤江)

慧善和尚(杉寛)

 

<時代篇>

石堂左近将監(芝田新)

石堂新之丞(和田桂之助)

腰元・八重(北沢典子)

老母(五月藤江)

佐平治(石川冷)

竜胆寺小金吾(中村龍三郎)

母・宮路(宮田文子)

 

お勧め度

★★★☆☆

 

『地獄』『東海道四谷怪談』『女吸血鬼』の監督である

中川信夫の監督作である。

 

 

古い作品ではあるが、雰囲気抜群。

 

 

深夜、停電となった大学病院の部屋の中で

医師 久住哲一郎が述懐する。

暗い部屋で莨をくゆらしながら

思い出を語り始める。

 

哲一郎

 

6年前の出来事だった。

妻頼子が結核を患い、

東京から妻の田舎に転地することになった。

そこで頼子は滋養を養い、

病気の回復を図ることにする。

田舎には頼子の兄がいて、

空いている屋敷を紹介してくれた

 

屋敷の門の前

 

古い屋敷で、長らく人は住んでいない。

そこで暮らし、哲一郎は医院を開業して、

しばらくはのんびりと暮らすのだ。

 

初めて屋敷を見に行ったとき、

頼子は、薄暗い厨の中に

石臼を挽く白髪の老婆の姿を見る。

 

謎の老婆

 

驚いた頼子は、すぐに哲一郎を呼んで、

中を見てもらうが、老婆はいなくなっている。

屋敷の周りには木々が立ち並び、

鴉が多く枝にとまっている。

鴉は死人に集まるという。

頼子は気味悪がる。

 

 

ある夜、医院の受付に白髪の老婆が現れる。

哲一郎が看護婦に呼ばれて行ってみると誰もいない。

そのすきに老婆は

妻が寝ている部屋に現れて、

妻に襲い掛かり首を絞めるのだった。

 

頼子            老婆

 

さらには、往診の依頼と偽り

哲一郎を外出させ、

そのすきに老婆は、

飼い犬を殺し頼子を襲う。

 

危ういところで帰ってきた哲一郎が

妻の窮地を救う。

哲一郎は、

お化け屋敷といわれていた屋敷の過去の

いわれを妻の兄から聞き、

興味を持ち、老婆の正体を探求し始める。

 

そして、土地の歴史に詳しい和尚の慧善に

屋敷の歴史について話を聞くのだった。

 

哲一郎    頼子の兄          和尚

 

その昔、屋敷は家老の

石堂左近将監のものであった。

石堂は、常軌を逸した癇癪もちであった。

その石堂は碁に負けた悔しさで

相手の男 小金吾を殺して、

家人の佐平治に手伝わせて

小金吾を壁に塗り込んで隠ぺいする。

 

 

小金吾

 

その小金吾の母は息子の幽霊を見て、

犯人が誰であるかを知る。

母親は、石堂のところへ行き

真実を問うが、

石堂はその母を辱める。

 

小金吾の母

 

復讐のため、母親は首を刺して

自害し、猫に生き血を啜らせる。

 

血をなめる猫

 

母親は死ぬときに、

石堂の家系を絶えさせるように怨嗟の念を

猫に頼むのだった。

猫は、母親の怨念を受容して「化け猫」となる。

 

その後、石堂に不穏な出来事が続く。

そして母親の怨念のとおり、

幾重かの不幸の末、

石堂の家系は絶える。

 

しかし、家人であった佐平治の血筋は生き延びる。

その末裔が哲一郎の妻 頼子なのであった。

老婆の復讐の念は、

哲一郎の妻 頼子に及ばんとしている…。

 

哲一郎

 

話は現代に戻り、深夜の大学病院の一室で、

回想にふける哲一郎のもとに、

怪しげな足音が忍び寄るのだった…。

 

◆◆◆

 

映画の冒頭で、

タクシーが黒猫を轢きそうになるシーンがある。

題名つながりの伏線で、

禍をもたらす猫なのかと少しドキリとする。

 

屋敷で石臼を挽く老婆の

陰惨な雰囲気に心がときめく。

「何かが起こるぞ!」

このような思わせぶりは

私の好むところなのだった。

 

現代編はモノクロ、

時代編はカラーで描かれている。

 

しかし、猫は怖かったり可愛かったり

不思議な生き物だ。