映画の冒頭

「いつも私たちを

笑わせてくれた人たち」への謝辞が入る。

笑いは傷ついた心を癒し励ます。

 

監督 プレストン・スタージェス

ジョン・サリヴァン(ジョエル・マクリー)

ヴェロニカ・レイク(女)

ロバート・ワーウィック

ウィリアム・デマレスト

エリック・ブロア

アーサー・ホイト

チェスター・コンクリン

アメリカ/1941年

 

お勧め度

★★★★★

(名作と思う)

 

ジョン・サリヴァンは

コメディ映画を得意とする

育ちのよい有名な映画監督だ。

 

右端 サリヴァン

 

しかし、失業と貧困の時代において

自分の作品群に疑問を感じる。

労働者や貧民をテーマにした

社会派の映画を撮りたいと、

映画会社の上役に談判する。

ところが、上役は明るいテーマの

笑える映画を撮ることを主張する。

「お前のようなお坊ちゃんに

社会派映画なんて撮れるのか」

 

サリヴァンは本当の社会を知るために

旅に出ることにする。

会社の衣装部でボロの衣類を借りる。

貧困を知るためにホームレスの格好をして、

彼らの仲間に入るのだ。

 

「貧乏人を笑いものにする行為だ」

と会社の支給係の老人がサリヴァンにいう。

サリヴァンにはそんな意図はないのだが

端からはそう見えるのか見知れない。

支給係はいう。

「貧困は弱いものではない。

貧困は蔓延し、

絶望という名の病を伝播していく。

貧困には近づかないほうがいい」

 

それでもサリヴァンは、旅に出るのだった。

そしてわずかな金をもって、

半ば衝動的に飛び出して行ってしまう。

 

 

しかし、会社の上層部がそれを簡単には許さない。

トレーラーハウスを用意して、

重役をはじめ、

何人もの要員を乗り込ませて

サリヴァンのあとをつける。

車には、

重役のほか、

記録を取るライター、カメラマン

料理人などが乗り込んでいる。

豪華な追跡である。

 

途中ハプニングで

車は使い物にならなくなる。

サリヴァンは重役たちと話をつけて、

いよいよ一人での旅へと出かけていく。

冒険が始まるのだ

 

しかし思ったような旅ができない。

大きな農家の未亡人に囲われそうになり

ほうほうの体で逃げ出すことになる。

 

その後、ヒッチハイクしてついた先が

出発した地のハリウッドだ。

振出しに戻ったとことになる。

 

入ったレストランで、

女優志望の美女(ヴェロニカ・レイク)に出会う。

その女は夢破れて

ヒッチハイクをしてシカゴまで帰るという。

そして、その女はホームレスに見える

サリヴァンにコーヒーやハムエッグを驕ってくれる。

 

サリヴァンは女が心配になり、

自分の車でシカゴへ送ろうとするが

警察に捕まってしまう。

 

(ヴェロニカ・レイク)     サリヴァン

 

貧乏な身なりの者が、

高級車を運転していたからだ。

 

(ヴェロニカ・レイク)

 

映画会社の重役が警察署へ

サリヴァンを迎えに来る。

結局、映画監督ということが

女にばれてしまったサリヴァンは

女をいったん自分の屋敷に連れていく。

 

しかし、サリヴァンはまだ「旅」を

続けるつもりだ。

サリヴァンは女に

旅からも戻ったら推薦状を書いてやる、というが、

女はその旅に同行したいという。

 

結局、女もぼろ服を着て、

ホーボーの格好をしてサリヴァンと

一緒に旅に出る。

女は少年のようにしか見えない。

まずは汽車にただ乗りする。

本物のホーボーに話しかけるが相手にされない。

偽物の「シロウト」とばれてしまったのだ。

 

サリヴァン    (ベロニカ・レイク)

 

汽車から、降りたところに、

映画会社のキャンピングカーが待機していて

再びハリウッドへ引き戻される。

 

体調を崩し、

しばしの休息を得るサリヴァンだが

再度、社会勉強と称し、

貧民の集落へと出かけていく。

女も一緒だ。

サリヴァンは一人で行くというが

女がいうことを聞かないのだ。

 

 

生活に困り

食べる者も満足にない多くの人たちを見る。

政府の無償の慈善活動で、

食事を与えられシャワーを浴びる人たち。

サリヴァンは、

蚤に食われながら眠りにつく。

寝ている間に

履いていた靴を盗まれたりもする。

 

二人で社会の底辺をなめた後、

再びハリウッドに戻る。

そしてサリヴァンは、

貧しいたちにお金を渡すために

ひとりで再び貧民窟へ行く。

そして事件に巻き込まれる。

 

世間では映画監督のサリヴァンが

貨物車の中で変死したと

大きなニュースになる。

 

しかし、死んだのはサリヴァンの靴を

盗んだホームレスだった。

サリヴァンは靴のかかとのところに、

身分証明書を入れていたのだ。

 

本当のサリヴァンは、

汽車に無賃乗車をして、

駅員に暴力を振るったかどで

刑務所へ入れられていた。

サリヴァンは、

事件に巻き込まれた影響で

記憶が定かでないのだった。

しかし、刑期は6年。

暴力的な所長に虐待される。

 

あるとき、刑務所の近くの教会で、

慈善活動で映画を見る。

上映された映画は、ディズニー映画だ。

アニメのばかばかしいギャグマンガ。

 

しかし、囚人たちがそれを見て大笑いする。

普段は渋い顔つきの不愛想な囚人たちがだ。

サリヴァンは驚く。

しかし、サリヴァンは何かを確信したようだ。

そして、一緒になって笑う。

 

 

サリヴァンは気づく。

映画には笑いが必要だ。

コメディ映画は必要なのだ。

傷んだ心をいやすために

なくてなくてはならないのだ。

 

自分は、映画を撮らなくてはならない。

しかし刑期は6年だ。

サリヴァンは出所するために一芝居打つことにする。

さて、サリヴァンはどんな手を使ったのか…。

 

サリヴァンを殺したのは自分だ、

と申し出たのだ。

大きなニュースとなる。

新聞にも大々的に写真付きで報道される。

 

それを見た映画会社の重役たちは驚く。

「サリヴァンは生きていた!」

 

映画つくりの打ち合わせの席で、

映画会社の重役たちはサリヴァンにいう。

「悲劇的な話を映画化するのだ。

観客を悲しませるのだ」

 

しかし、サリヴァンはいう。

「私は前みたいなコメディがとりたい。

人々には笑いが必要なのだ」

サリヴァンの脇には、一緒に旅した

女性が付き添っている。

 

(ベロニカ・レイク)    サリヴァン

 

 

面白い映画で引き込まれる。

サリヴァンは自分のやるべきことを見出し

伴侶となる女性を得る。

監督の映画に対する愛情を感じさせる

エンディングとなっている。

 

サリヴァン役のジョエル・マクリーは

『大平原』などの西部劇や

ヒッチコックの作品『海外特派員』

に出ていた二枚目俳優。

 

サリヴァンと一緒に行動する女には

『奥様は魔女(1942年)』のヴェロニカ・レイク。