アルトゥーロ

 

映画の冒頭、

精子たちが競争するかのごとく、

卵を目指して泳いでいくシーンは

『アメリ』の映像を彷彿とさせる。

 

なんだかパクリの話なのか? 

おふざけ映画か?

と思いながら見進めていくと

全くそうではないことがわかってくる。

 

コメディータッチに描いてはいる部分もあるが、

シシリーのマフィア:コーザ・ノストラの歴史と並走した、

直球で純情な恋物語なのであった。

心にジーンとくるラストもとても良い。

 

仮装したアルトゥーロ

 

シチリア島の州都パレルモで暮らす

小学生のアルトゥーロは、

物心ついた頃から、

毎日のように起こるマフィアの犯罪を見聞する。

しかし、周りの大人たちは見て見ぬふりをして

「殺されたのは女のせいだ」

といってマフィアの責任にはしない。

 

アルトゥーロ

 

小学校に転校生がやってくる。

フローラだ。金髪の可愛い女子。

アルトゥーロは恋してしまう。

 

フローラ

 

しかし、それゆえ彼女を避けるようになる。

女に恋した男は殺されるのだ。

 

学校での仮装大会のとき

アルトゥーロはイタリア首相のアンドレオッティの仮装をする。

フローラはお姫様の仮装だ

 

フローラ

 

しかし周りの者は「ノートルダムの背むし男」と勘違いしている。

アルトゥーロにとってアンドレオッティは、

テレビを通して恋のアドバイスをしてくれた恩人なのだ。

「告白は墓場でするとうまくいく! 」アルトゥーロはそう思う。

まったくの勘違いだが…。

 

レストランでアルトゥーロは

見知らぬおじさんからパレルモの名物お菓子

イリスをプレゼントされる。

 

その男は、地元警察の警部ジュリアーノ。

お菓子が気にいったアルトゥーロは

それを毎朝学校でフローラの机の上に黙って置いておく。

しかし、フローラはそれを別の男子からのプレゼントと勘違いし、

アルトゥーロを落胆させる。

 

ある時、イリスの売っているレストランへ行くと、

警察が大勢いて人だかりができている。

店のなか覗くとアルトゥーロにイリスをくれた

ジュリアーノ警部が倒れている。

マフィアの捜査をしていたため殺されてしまったのだ。

 

しかし、大人たちは、マフィアに対して無関心を装う。

マフィアに殺されるのではないかと不安になるアルトゥーロに父親はいう。

「心配するな、マフィアは夏にしか殺やない」

…意味のない言葉だ。

 

 

警部が殺されてから、

マフィア同士の抗争で毎日にように殺人事件が起きる。

殺されるのは、反マフィアの政治家や裁判官たちだ。

しかし、市民たちは怯えながらもマフィアのことを口にしない。

 

フローラに対するアトゥーロの恋心はうまく転がっていかない。

あれこれと気を引こうとするが、すべて裏目に出てしまい

嘘つき呼ばわりまでされるしまつ。

 

ある日フローラの父親が教室を訪れる。

フローラの父は銀行家なのだ。

銀行の見学会があるので参加したい人は

「ある日パレルモで」という題で作文を書いてほしいという。

 

アトゥーロはさっそく取り掛かる。

首相の集会に出かけた話を書く。

そしてなんと最優秀賞を受賞する。

喜ぶアトゥーロ。

ところが授賞式の最中、また暗殺事件が発生する。

授賞式は中断する。

 

相次ぐ暗殺事件に危機感を覚えたフローラの父親は

スイスへ行くことになる。

もちろんフローラもついていく。

 

アルトゥーロは、彼女の住む高級アパートの前の歩道に

チョークで告白の文を書くが、

彼女が読む前にアパートに爆弾が仕掛けられる。

暗殺されたのは反マフィアの判事だった。

判事はアルトゥーロの恋心を理解していて

蔭ながら応援していたのだったが…。

 

結局、フローラはアルトゥーロの「恋文」を読むこともなく

スイスへと旅立つのだった。

 

青年になったあるアルトゥーロは就職する。

あまりやる気のない様子だ。

しかし、フローラのことは忘れていない。

思い続けている。

 

アルトゥーロ

 

そんな時、思わぬ再会をする。

フローラはキリスト教民主党の

代議士サルヴォ・リーマの秘書としてパレルモに戻ってきたのだ。

 

フローラ

 

フローラの口添えでアルトゥーロは

リーマ代議士の選挙戦の様子を伝えるリポーターに抜擢される。

 

少しずれながらも奮闘するアルトゥーロ。

ある晩、フローラから電話があり食事に誘われる。

張り切るアルトゥーロ。

 

しかし、政治的意見が食い違い

二人はそれ以後会うことがなくなってしまう。

 

反マフィアを唱える政治家がまた殺される。

もう、民衆も黙っていない。

大規模なデモがあちこちで発生する。

「マフィアをパレルモから追い出せ!」

デモの中、アルトゥーロとフローラは偶然にも再会する。

抱き合ってキスをする二人…。

 

 

アルトゥーロは、生まれて間もない赤ん坊を連れて、

街中の「反マフィア」のために死んでいった人たちの

記念碑を回って歩く。

そして赤ん坊にその人物の説明をする。

赤ん坊には理解できなくても真剣に説明する。

 

子供が幼稚園児くらいに大きくなっても、

同じように回って歩いて説明をする。

その傍らには、

フローラが微笑みながら立っているのだ。

 

なんて素敵な恋物語なのだろう!

 

お勧め度

★★★★★

 

監督:ピエルフランチェスコ・ディリベルト

2013年/イタリア