雪で覆われた白い平野。道路のわきに電信柱が立っているだけ。寂寞とした風景。このような風景の中にも、普通の人生とそうでない人生がある。
ミネアポリスは雪の積もる寒い都市だ。そこで自動車販売所の営業部長を務める中年男ジェリーには妻のジーンと一人の息子がいる。妻の父親は裕福な事業家だ。
ジェリーにはたくらみがある。
妻のジーンが誘拐されたことにして身代金を妻の父親に払わせる。その半分を自分のものにして、残りを誘拐犯役を演じる協力者に支払うという計画だ。
ジェリーには借金があったのだ。
このたくらみが、事件の発端だった。
妻の父親はジェリーを「頼りない」といって小ばかにしている。ジェリーにとってはいけすかない父親への復讐心もあったのだろう。
ジェリーの議事誘拐事件は、些細な出来事が積み重なり、当初の計画から大きく狂っていき、幾人もの人が死んでいく。
誘拐犯を演じるのはチンピラ二人組。ゲアとカールだ。ゲアは大きな男でめったに口を開かない。無口な男で何を考えているのかわからない。表情がなく非情な行動をとることができる不気味な雰囲気を醸し出している。
カールは小柄でよくしゃべるタイプ。如才なく立ち振る舞うかのように見える。しかし情けなさが漂い、抜けたところが多くある。
まず3人が殺される。うち一人は警官だ。
女性警察署長のマージが捜査に当たる。妊娠していて少しつらそうにも見える。
マージの夫は芸術家でいつも家にいる。売れているようには見えないのだが、マージと二人で仲良く暮らしている。
マージは冷静に粛々と捜査を行う。激情に駆られたり落胆などしたりしない。淡々とした仕事ぶりだが、確実に犯人へ近づいていく。
最初は誰も死ぬ予定ではなかった。しかし、計画性のなさやうっかりで物語は凄惨な事件へと変貌を遂げていく。
映画のメインストーリーには絡んでこないが、禿げ頭で中年太りのマージの夫が平凡な平和とか幸せの象徴に見える。
ダブルベッドに寄り添う二人。マージが言う。
「私たちは幸せな夫婦よね」
映画の最初に「この映画は実話である」とか「実際の事件はミネソタ州で起こった」、「匿名を使っているが忠実に映画化している」などとテロップが出てくるが、実は完全なフィクションだそうだ。
映画の所々に出てくる木こりの像(ポール・バニヤン)はアメリカでは嘘の象徴らしい。
ファーゴとは都市の名前。最初のシーンだけ舞台になっている。なんでこの題名なのか?
コーエン兄弟のほくそ笑む顔が目に浮かぶ。
監督 ジョエル・コーエン
脚本 イーサン・コーエン、ジョエル。コーエン
ジェリー・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)
カール・ショウォルター(スティーブ・ブシェミ)
ゲア・グリムスラッド(ピーター・ストー・メア)
マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)
アメリカ/1996年