横浜高野球部コーチ小倉清一郎の「続・鬼の遺言」 | 息子達が夏の甲子園100回記念大会へ出場することを祈っております。

息子達が夏の甲子園100回記念大会へ出場することを祈っております。

春から中学生1年生と小学生5年生になる2人の息子が野球を始めて6年が経過しました。野球というスポーツを通じて、逞しく成長してくれることを願っております。かなり高いハードルですが、夏の甲子園100回記念大会へ、息子達が連れて行ってくれることを夢みております。

夏の甲子園は前橋育英の初出場初優勝で幕を閉じた。横浜は2回戦で丸亀に7―1で勝利したものの、ベスト8をかけた3回戦はその前橋育英に1―7で完敗。横浜はレギュラー9人中8人が2年生。唯一の上級生だった主将の長谷川寛之をはじめとした3年生には、お疲れさまと言いたい。

「2勝できれば御の字」と思っていたが、やはり1勝止まりに終わった。春から夏にかけて毎年50試合ほどの練習試合を行っている。例年は5敗程度のところ、このチームは10敗以上。神奈川大会準々決勝で奪三振王の松井裕樹君(3年)擁する桐光学園を撃破したことは褒めてあげたいが、本当の実力はまだなかったと言わざるを得ない。

 甲子園出場の立役者でもあるエースの伊藤将司(2年)が初戦前に左肩の違和感を訴える中、治療しながら臨んだ丸亀戦の14奪三振は出来過ぎ。前橋育英戦は6回5失点で降板した。球威はもちろん、左打者への内角の精度など、全てにおいてワンランクレベルを上げないと、甲子園では通用しないことがよく分かったはずだ。

 前橋育英の2年生エース高橋光成君は好投手。この回は直球中心、ある回はスライダーを多投するなど、平均的な配球にならないように実によく考えて投球していた。これは伊藤も見習って欲しい。捕手のリード通りに投げるだけではダメ。お互いに考えないバッテリーに進歩はないのだ。

 浜風対策も実を結ばなかった。甲子園は両翼のポール脇のスタンドが切れている。この切れ目がライトからレフトへ向かっての風の通り道になるのだ。私は外野手にスコアボード上の旗を見て打球を判断する4パターンを「小倉メモ」に書いてレクチャーした。

(1)風速1、2メートルは左翼方向への打球が3、4メートル伸びる。

(2)旗が垂れたり伸びたりする風速3、4メートルは打球が5~7メートル伸びる。

(3)旗がピンと横に張る風速5メートルは打球が10メートル伸びる。

(4)旗がバタバタと音がするほどはためく風速10メートル以上は打球も10メートル以上伸びる。

 特に(3)(4)の強風の日は要注意。追い風のレフト方向は他の球場よりさらに5メートル以上も打球が伸びるから左翼手はたまらないだろう。逆風となるライトへの飛球はストーンと急降下する。外野手は頭に叩き込んでおかないといけない。前橋育英戦でライトの根本耕太(2年)の前に落ちたポテンヒットがあった。根本は一度下がってから前進し、追い付けなかった。急降下する打球についていけなかったのも残念だった。

<負けて泣いて宿舎でワイワイ>

 初戦で本塁打を放った4番の高浜祐仁、5安打を放った3番の浅間大基がこの試合はともに無安打。初戦の活躍と、2人は松井君から本塁打していることで、マスコミに取り上げてもらったのはありがたいが、まだまだ実力不足だ。

 高浜は打つ時に開きが早いクセがなかなか直らない。他にも大きな欠点がある。これらを克服しない限り、目標とするプロなんて夢のまた夢だ。

 前橋育英の1番・中堅の工藤陽平君は素晴らしい選手で手痛い一発を食らった。同じ2年生で左打者の外野手として、現段階では浅間より上だろう。

 ただ、評価できるのは1番・三塁を任せた川口凌(2年)。高浜、浅間同様、1年夏から公式戦に出場している。苦手だった外角球を克服し、桐光戦で初回に松井君から二塁打するなど、県大会から終始安定していた。2回戦、3回戦ともに1安打ずつと派手さはないものの、内容が良く、守備面も含めて一番成長した。

 このチームは「打倒松井」をエネルギーにして松井君に成長させてもらった感はある。が、「強い」と勘違いしてもらっては困る。秋の大会までにやることは山ほどある。

 それにしても、負けて泣いていた選手が、宿舎に戻った途端にケロッとしてワイワイ騒いでいる。私はいつも「敗戦を引きずれ」と選手たちに言う。一晩くらいはお通夜のようになって敗因を考えて欲しいと思う。これも今の選手の気質なのだろう。とてもついていけない。