やせ薬はあるのか | 生活習慣病の予防

やせ薬はあるのか

 1995年にFriedmanらによりレプチンが発見され、体重調節のメカニズムが明らかになってきました。レプチンは脂肪組織から分泌されるホルモンで、視床下部の満腹中枢と摂食中枢に作用し食欲を抑制し、交感神経の活性化を介して基礎代謝を亢進させます。太ると脂肪組織が増加しレプチン分泌量が増え、その結果食欲が抑制され基礎代謝が亢進し体重が減少します。やせると逆のメカニズムで体重が増加します。このようにして体重の恒常性が維持されている事が分かってきました。実際、レプチンの遺伝子異常による異常肥満の症例報告もあります。
 では、レプチンはダイエットに有用な肥満治療の特効薬になるでしょうか。残念ながら、そう簡単ではありません。第一に、レプチンはペプチドホルモン(たんぱく質でできたホルモン)なので、飲み薬になりません。飲むと消化されてしまいます。注射しなければならない。第二に、レプチンは食が太いとか細いといった長期の食欲をコントロールしているのだということが分かりました。従って、レプチンを注射しても即効性の効果は期待できず、食事制限と併用するとリバウンドを防ぐ効果はあることが分かってきました(アメリカの治験結果)。レプチンを使用したダイエットにも努力は必要という事です。それでも自分にレプチンを使って欲しい、お金はかかっても構わないという人は、アメリカに行けばレプチン治療を受けられるかもしれません。日本国内では、脂肪萎縮性糖尿病やレプチン遺伝子異常症といった特殊な病気を除き、法的に難しいでしょう。レプチン遺伝子異常症は国内では症例報告がありませんが。
 短期の食欲を調節しているのは、胃や小腸から分泌される消化管ホルモンです。こちらの関連薬剤の方が、即効性のある肥満治療薬になりうるかもしれません。