皆さんお久しぶりです。
と言っても誰も見てないかもしれないけど
調べたことをメモ代わりに残しておきたく投稿することにしました(笑)

いよいよ明後日は関東学生剣道優勝大会
大学の団体戦はやっぱ胸が躍る。

最有力候補は
ズバリ【法政大学】

昨年、圧倒的な強さでインカレ優勝を果たしたメンバー7名のうち、
卒業した阿比留宏貴を除く6名が残る。
その中には全日本学生チャンピオンの矢野将利(4年/福大大濠)をはじめ、
昨年の全日本2位の鈴木龍哉(4年/九学)、関東3位の三宅涼介(4年/龍谷)
同じく関東3位の高橋京太郎(3年/秋田商)と、

同チームに個人戦3位以内入賞者が4人いるという、
個人の強さにおいてはダントツNo.1のチームである。

ここまでの個人成績を持つチームは、長い学生剣道の歴史の中でもそう多くはない。

今、私の記憶の中でパッと思い浮かぶのは
安藤翔率いる2012年の国士舘大。
あの時の国士舘は、全日本チャンピオンが2名(安藤翔4年、藤岡弘径4年)
全日本3位の中澤公貴4年、関東2位の菅野隆介3年、同3位の土谷有輝3年(翌年2位に)、

関東BEST8の國友錬太朗4年、武田直大4年という7名全員が個人BEST8以上。
しかも安藤は後の世界チャンピオン、國友は後の全日本選手権者である。
まさにモンスターチーム。
実際は菅野が控えに回り村上泰彦が五将に入ったわけであるが。
このモンスターの前に敵はいなかった。
全日本、関東ともに団体戦で国士舘大の圧倒的優勝。
今思い出しても凄まじいチームだった。

また、最近では、星子啓太、松﨑賢士郎という

世界ツートップが大将、副将を務めた2019年の筑波大。
全日本個人は1位星子、2位松崎、そして3位に白鳥湧也と、

ワンツースリーを独占したあの時の筑波大をもってしても、

関東は制したが、インカレで本間率いる中大に敗れるという、
勝負には絶対ということはないという教訓のような出来事を思い出す。

さて、話が脱線したが、
今年の個人の実力では圧倒的な法政である。
ちなみに、前出の4人以外に今年の全日本学生選手権の出場者が2人いる。
鮫島雅貴(3年/九州学院)、中尾王真(2年/九州学院)で、いずれも関東個人BEST16。
2人とも九州学院時代に大活躍している。
鮫島は全中個人チャンピオン、中尾はインターハイ個人2位と世代トップレベル。
そしてレギュラーの7人目を狙うのは、

宇賀神直也(4年/小山)、大古啓人(3年/翔凜)、

西浦尚希(2年/龍谷)、林寛太(2年/育英)、

荒井孝征(3年/佐野日大)あたりだろう。
まさに盤石の布陣と言える。

法政の選手を見ていると、質の高い稽古をしっかりとやっていることが窺える。
特に大将の矢野の安定感は抜群。彼は体幹がしっかりしていて全くブレない。
今年の学生チャンピオンという称号はもちろん素晴らしいが、
昨年3位、そして関東3位と、3位以内3回という抜群の安定感がスゴイ。

法政は団体戦でも、昨年のインカレ優勝と、
現3・4年が主力で臨んだ2年前の新人戦優勝のタイトルも獲っている。
そして、ハッキリ言って昨年の優勝時よりも戦力は高い。


さて法政以外の優勝候補をざっと一通り見ていこう。

法政大に続く有力候補が中央大
そして筑波大、日本体育大
ダークホースが順天堂大

さらには、国学院大、専修大というところだろうか。

トーナメント表を4つのブロックに分けて見てみると
左上ブロックからは筑波大
東海大がどこまでくらいつくか。

左下ブロックは、日体大、いや順天堂か
今までならば日体大と言っただろうが、
順天堂の秘めたる力が凄まじい。
ハッキリ言ってどちらが上がるかわからない。

右上ブロックは、
専修大か国士舘大
駒澤大と明治大にもチャンスあり。

右下ブロックが超激戦区。
法政大と中央大の激突。
なぜこの段階でこの両者をぶつけるのか。もったいない。。。
そこに国学院が絡んでくるという展開か。


もう少し掘り下げて戦力分析をしていこう。

【中央大学】
大将はおそらく昨年も大将を務めた小畔直(4年/福大大濠)だろう。
小畔は法政の矢野と如水館出身。大将小畔、副将矢野で小学生日本一に輝く。
2人は小学校から高校までずっと一緒だった。
矢野は首一つ違う大きな小畔を見上げ、
ずっと彼の後を追いかけ続けてきたのではないだろうか。
小畔は大学2年時に全日本個人3位に輝く。
しかし、大学3年生になって矢野が覚醒し大学チャンピオンに輝いた。
今現在の実績では矢野の方が上にきてはいるが、
もしも中大・法政の大将戦となったら、
手の内を知り尽くしている2人の戦いは全く予想できない。

皆感じていることかもしれないけど、
今年の中大は日本一の高身長軍団である。
私が知っているだけで180cm以上の選手が8名いる。
高い順に、

北原隆磨(184cm/1年)、佐伯凜太郎(183cm/1年)、

山本莞典(182cm/4年)、小畔直(181cm/4年)、

川口舜(180cm/4年)、山野慎治(180cm/3年)、

中西健吾(180cm/4年)、守安泰輝(180cm/1年)。

 

思わず絶句する。こんなチーム見たことない。
ちなみに北原修監督が181cm。
集団で歩いていたら、バレーボールチームと間違えられそうだ。
 

たまたま高身長の選手が集まったのか。
いや、勝手な推測であるが、

監督自身が高身長の選手として数々の実績を残してきたのだから、
高身長の選手の戦い方を一番理解している北原監督のもとに、
高身長の選手が集まってきているとも言えるのではないだろうか。

さて、話を戻ずと、
小畔に続く有力選手が
川口舜(4年/東山)
山野慎治(3年/九州学院)) IH団体優勝
福岡勇馬(2年/九州学院) 全日本学生個人BEST8、関東学生個人BEST8、IH団体優勝
山本莞典(4年/郁文館)
そして
林尚輝(2年/福大大濠)
森大翼(2年/福大大濠)
2人は如水館~福大大濠で大暴れしてきた。
林は関東学生でBEST16に入る。
森は今年の東京都学生選手権で優勝。
そして福大大濠と言えば、
宮本颯太(3年/福大大濠)
さらに1年生の2人。
守安泰輝(1年/福大大濠)
佐伯凜太郎(1年/福大大濠)
守安はご存じ、昨年のインターハイ個人チャンピオンである。
中大は福大大濠だけでもチームがつくれそうだ。
そしてそしてもう一人期待の1年生
北原隆磨(1年/三養基)
も忘れてはならない。

おっと中大だけで時数オーバーか。
ここから先は有力チームの有力選手のみを紹介していく
 

【筑波大】
昨年の関東団体優勝校である。
優勝を経験している筑波の主力の4人は強力だ。
平尾尚武(4年/九州学院)
阿部泰悟(4年/育英)
田城智也(3年/福岡第一)
高島壮右馬(2年/九州学院)
 

平尾は今年の関東個人チャンピオンにして、全日本2位。
法政の矢野と今年度のトップを争う存在だ。
九州学院の大将として高校時代に華々しい活躍をするはずだったが
コロナで大会がことごとく中止。その鬱憤を大学で晴らす。
田城は全日本個人3位、関東BEST8と個人の実績もしっかりと残している。
田城兄弟、藤島兄弟は福岡が同時期に生んだビッグスターである。
両兄弟の兄と池田兄弟が同じ学年で同じ福岡にいたことを考えると、
あの時の福岡はとんでもない激戦区だったなあ。とまた過去の思い出に浸っている場合じゃない。
高島は全中およびインターハイチャンピオンと世代トップをひた走る。
IH決勝で同門の中尾を破った飛び込みメンと返し胴はあまりに芸術的で、
ハッキリと目に焼き付いている。

さらに、
菅野透馬(3年/桐蔭学園)
松尾瞳太(3年/福大大濠)
蔵座透真(2年/明豊)
荒木千葵(2年/日章学園)インターハイチャンピオン
らがいる。
もちろん十二分に優勝を狙えるチームである。



【日本体育大】
日体大の一番の有力株は
藤島心(3年/福岡常葉)だろう。
今年の関東選手権では決勝で惜しくも平尾に敗れるも堂々第2位。
福岡で有名だった藤島兄弟は、大学に入ってから全国区の強豪として名を馳せた。
 

私が初めて心くんを見たのは、彼が高1の玉竜旗。
「こ、これが高1だって?怪物じゃないか」
そのキレのある動きに度肝を抜かれた。
緒戦、対PL学園 藤島心が5人抜き
3回戦、対中央学院 藤島心が5人抜き
4回戦、対花巻北 藤島心が5人抜き
ここまで15人抜きで取得本数26本。
5回戦、桐蔭学園の先鋒に勝利するも次鋒の久川泰史に1本負けで力尽きる。
ホントに凄い1年生がいたものだと感心した。

 

大学に入ると藤島心は1年生で全日本個人BEST8。

この時は3年生の兄の剣もBEST8。
そして剣が2022年関東個人2位。心が翌年の関東2位と、兄弟お揃いぶりにも驚かされた。
少年時代からのライバル田城智也(筑波大)との激戦がまた見られるのか楽しみだ。
ちなみに直近では関東選手権の準々決勝では藤島に軍配が上がる。

日体大の藤島心に続く有力選手は、
川崎将太朗(4年/龍谷)関東個人BEST8
松栄翔(4年/高千穂)
船木成太朗(4年/水戸葵陵)
谷川聖樹(2年/育英)
江島瑠海(4年/島原)
本村嘉偉(4年/桐蔭学園)
柴田琉成(3年/磐田東)
木村理吟(4年/翔凜)
というところか。


【順天堂大】
とにかく昨年の関東新人戦には驚かされた。
決勝戦の相手は中大。
中大選手との高校時代の実績の差は歴然。
私を含め多くの人が中大優勝を疑わなかっただろう。
ところがふたを開けてみれば順天堂大の圧勝。
あれよあれよという間に、

勝負がかかった中大自慢の後ろ3枚(中西、福岡、山野)が

バタバタと崩れ落ち、結果4-1で順天堂が中大を圧倒したのだ。
 

また2年前の新人戦も3位となっており、
今年の主力である3、4年生の本領を発揮する大会がいよいよやってきたという感じである。
 

また、今年度から筑波大から順天堂大の助教となり指導を担うのが佐々木陽一朗だ。
佐々木は高輪高校時代にインターハイチャンピオンに輝き、
筑波大では同期の筒井らとともに全日本、関東と2冠に輝く立役者となった実力者だ。
佐々木が指導人に加り、順天堂大がどこまで進化を遂げたか、この大会で明らかになる。

選手候補は次の通り
久川泰史(4年/桐蔭学園)
槻舘駿(4年/本庄第一)
伊東拓馬(4年/明豊)
阿部凜生(4年/福島西)
池田丞士(3年/長崎南山)
大沢柾也(3年/東海大浦安)
中丸真大(3年/小山)
小林遼太郎(3年/本庄第一)

最も注目する選手が、3年の池田だ。

長崎南山中で全中団体3位となり、高校時代は島原を破ってインターハイ出場した。
小柄ながら鋭い剣裁きシャープな振り、大型選手にも一歩も引かない度胸、

そしてとてつもない勝負強さは、中大の宮本兄弟を彷彿とさせる。
昨年の新人戦決勝では中大の山野を破り、また全日本団体では法政の中尾を破っている。
誰と対戦しても簡単に負けるとは思えない安定感がある。
昨年の新人戦のようなチームワークが発揮された時の順天堂大は

ハッキリ言って怖い存在だ。台風の目となるか。



国士舘大、国学院大、専修大にも言及したかったが、
今回は時間切れでした。

9/8(日)は学生剣道を心行くまで堪能しよう!!

 

(文中敬称略)


 

何年ぶりの投稿か。

そもそも、Yahooブログが終わってしまって、そのまま閉じようかと思ったが、
こんなブログでも、「残してほしい」という人が意外と多く、
アメーバブログに引っ越した。
使い方もよくわからずいままで放置していたが、とりあえず投稿してみた。


待ちに待った「高校生想代」が12月27~28日で開催される。
この大会はまさにみんなの「想い」が込められている。
九州学院の米田先生からわざわざご連絡いただき、
その素晴らしい試みに感銘を受け、
微力ながら大会に協力させていただくこととなった。

そして今回のパンフレットには久々に剣キチ名で寄稿した。
タイトルは「高校剣道史に燦然と輝く7名のヒーローを紹介!」である。
今年の高校生の勢力図については、勉強不足で正直よくわからない。
そこで過去のヒーローを思い起こし、今の高校生に知ってほしいと思ったのだ。

高校剣道界から様々なヒーローが生まれた。

私の記憶に強烈に残っている剣士は少なくとも100名はいる。

その中から今回パンフレットで7名を紹介した。

彼らはいずれも伝説を築いた剣士たち。

彼らに共通する点は「絶対にあきらめない強靭な精神」だ。

高校剣士たちもぜひ偉大なる先輩に続いてほしいという思いで寄稿した。

その7名とは、

◎白水清道選手(福岡商業高1976年度卒)
◎鍋山隆弘選手(PL学園高1987年度卒)
◎内村良一選手(九州学院高1998年度卒)
◎石田雄二選手(高輪高2006年度卒)
◎竹ノ内佑也選手(福大大濠高2011年度卒)
◎梅ヶ谷翔選手(福大大濠高2013年度卒)
◎星子啓太選手(九州学院高2016年度卒)

である。紹介内容はパンフレットを見ていただければと思う。


さて今回は、この7名に匹敵する
その他の伝説の高校剣士を紹介する。



◎田沖大介選手(福大大濠高1993年度卒)

福岡県の高校剣士の宿命なのか、
特に福岡大大濠高校は、多くの無冠の帝王を生み出してきた。
(誤解なきよう、あくまで個人タイトルがないという意味での「無冠」)
その代表格が竹ノ内佑也と梅ヶ谷翔だろう。

そして、90年代の無冠の帝王、怪物と言えば田沖大介だ。

田沖の名を日本全国に轟かせたのは、
初の開催となった第1回全国選抜大会だ。

田沖は1年生にして福大大濠の大将として
堂々と春日井のコートに立っていた。
順調に勝ち進んだ福大大濠の準々決勝の相手は強敵・三養基。
大将戦まで戦い勝負がつかずついに代表戦となった。
福大大濠の代表はもちろん田沖。
相手はこれまたこの時代を代表する2年生の田中鉄平。
苦戦を強いられることが予想されたが、開始と同時に田沖の強気のメンで勝利!

なんということだ。
この1年生は、いったいどういう心臓をしているのか。
とてつもない選手が現れた。


そして準決勝。

相手は強豪鹿児島商工。
中でも抜群の剣道センスでこの年代のトップランナーをひた走る小田口享弘は、
ポイントゲッターとして鹿商工の中堅をつとめ無敵を誇る。
その小田口が1勝を挙げ、残り全員引分で、大将戦を迎えた。
田沖が引き分けでも福大大濠の負けが決まる。
しかし田沖は強かった、
そのプレッシャーを跳ね除け、福大大濠・大将の高橋からメンを奪い代表戦に。
ついに天才小田口との一騎打ちとなる。

小田口の攻めが強い。
再三攻め込まれる田沖だが、
勝利に対する執念が半端ない。
小田口をじらしてじらして、
小田口の集中力の糸がぷつっと切れた瞬間
「ズドーン!」
田沖の強烈な大砲が、小田口の喉元をとらえた。

1年生田沖を大将に据えた福大大濠は、
ついに決勝に進出した。
決勝戦の相手は育英である。

先鋒が引き分け、
次鋒は育英の松本が2本勝ち、
中堅が引き分け、
福大大濠としては、副将で一矢報いて大将の田沖に繋ぎたいところだったが、
育英副将の古川が1本勝ちで育英の第1回大会の優勝が決まった。

最後は田沖が2本勝ちするも時すでに遅し。

福大大濠は準優勝に終わったが、
田沖大介という1年生の、
その驚異的なスピードと天性のバネ。
勝負勘の良さ、そして負けん気の強さは、
見るものを驚かさずにはいられなかった。

まさに高校生離れ、いや人間離れした、怪物と呼ぶに相応しい衝撃だった。

結局、田沖は、その後も福岡大大濠の大将として、
高3時には、玉竜旗優勝、インターハイ団体優勝の2冠に輝き、
伝説を積み上げていった。

田沖は高1の春の全国選抜でその強さを知らしめたわけだが、
さらに進化した怪物ぶりを多くの人が認めたのは、高2の玉竜旗大会だろう。
ここからは、そこを詳しく書いてみる。(過去の投稿文を再掲)

1992年夏 福岡 玉竜旗大会。
高2で大将をつとめた田沖は、
6回戦から全ての試合に大将戦に引っ張り出された。
6回戦の大分高校戦では相手大将の上野を鮮やかなメン2本のストレート勝ち。
準々決勝は、前年度優勝の高千穂をこれまた大将戦で下した。

そして準決勝の相手は強豪三養基。
春の全国選抜、準々決勝戦の再来である。

三養基の大将は、
6回戦でPLの大将・川上を強烈なツキで玉砕し(川上が吹っ飛ぶほどの凄まじさ)、
会場の度肝を抜いた九州個人No.2の田中鉄平。
田中は神崎中学時代には大将としてチームを
全国優勝に導いた経験も持つ信頼感も抜群の選手だった。
田中の方が知名度も実力も上と見られていたが、
春の全国選抜では、田中は1年年下の田沖に苦汁を飲まされていた。

さてその準決勝。
抜きつ抜かれつで試合が進み、大濠の副将・千代田が三養基の田中を引っ張りだした。

すると田中は、今度は千代田に対して、凄まじい諸手ヅキを見舞った。
田中の渾身の力をこめた剣先は、千代田の腰が砕けるほどに激しく深く突き刺さった。
その後、千代田も負けじと反撃をするが、
強烈な田中のツキは千代田の心理的ダメージを与えるに十分だったろう。
田中はその後すかさずコテを決め強さをまざまざと見せ付けた。

あの強烈なツキを2度も間近で見せ付けられたら、
普通の選手だったらビビるにちがいない。少なくとも私なら則、戦意喪失。
しかも、大舞台での試合経験の少ない2年生の田沖には、
春に勝っているとは言え、今日の田中を倒すというミッションは厳しい。

さて、いよいよ準決勝大将戦、
田中(3年)vs田沖(2年)の勝負が始まった。
しかし田沖は田中に対してビビるどころか、全く気後れしていなかった。
その田沖が、鍔迫り合いから目にも止まらぬ逆噴射だ!
「コテ―!」
これぞ伝家の宝刀。田沖の鮮やかな引きゴテが決まった。
が、すぐに田中がメンで取り返す。

試合は延長になるかと思われたそのとき、
田沖が想像を絶する脚力で飛んだ!
その瞬間。見事な飛び込みメンが決まった。
「す、すごい。」
観客は思わず生唾を呑んだ。

決勝は南筑と大濠という福岡決戦となった。
これが福岡の層の厚さだ。
玉竜旗の決勝を戦ったこの2校はともにインターハイには出られず、
この年の福岡代表となったのは福岡第一なのである。

決勝戦が始まった。
南筑の勢いは凄まじい。
大濠大将の田沖は、南筑・次鋒の立田に引っ張り出されてしまったのだ。

しかし、ここから田沖が怪物の底力を見せる。
田沖は南筑の次鋒・立田にストレート勝ち、
中堅の小山にもストレート勝ち。
この時に小山に放った、ターンと足を鳴らしての引きゴテ。
打突後の一気に間合いを切るスピードは、
あたかも後ろ向きに発射したロケットのようだった。
(あるいは海の中で天敵からすごい勢いで逃げるエビ(笑))。

そして副将の広重にも1-1からの相メンで勝利。
そう、田沖のもう一つの武器は、相手の出鼻に合わせたメン。
明らかに相手が動作を起こしてから動くのだが、
しかも相手より大きく振りかぶってのメンなのだが、
半端じゃないスピードを持つ田沖は、
相メンで負けるところを見せたことがない。

そして迎えた大将決戦。相手は身長185cmの高野である。

田沖にとっては連続4試合目で体力を消耗している上、
体格が違いすぎる。
しかし、田沖は高野の攻めに一歩も引かず、
勝負はむしろ田沖の方が強気で圧していた。

試合は決め手がなく延長戦に突入。

高野が間合いを詰めコテを打つ。
入ったか!? 微妙である。
そこを田沖すかさず引きメンを打つ。こっちか!?
最初に打った高野のコテか、その後に打った田沖のメンか?

この1本をとった方が優勝である。

審判がどちらをとってもおかしくない両者の技だったが、
結局は高野のコテに軍配があがり、南筑が優勝を決めた。

試合後のインタビューで田沖はこう答えた。

「(高野選手の)コテはつばに当たったのですが、
自分も受けの態勢になっていたので、
 有効と判断されても仕方ないです。
でもいい経験ができました。来年こそは優勝します」と。

負けたことを認めるスポーツマンらしい一面と同時に、
試合には負けたが、決して勝負には負けていなかったと言わんばかりの
負けん気の強さそのものだった。

そして「来年こそは優勝します」と述べた言葉を、
本当に実現してしまうなどということは
ただの負けず嫌いなどにはできない。できるはずもない。

胸がすくほどの潔い「有言実行」の姿は、
それなりの覚悟を持った堂々たるリーダーとしての
鑑であると同時に、田沖の怪物たる由縁ではないかと思う。


ここに登場した、田沖と鹿児島商工の小田口はともに中央大学へ進学し、
チームメイトとしてインカレ優勝を果たしている。
また田沖は、大学2年生時に関東学生チャンピオンとなり、
団体では強いが個人タイトルがない「無冠の帝王」の汚名をついに返上した。

【文中敬称略】

 

ほろ酔いで2018年を振り返る②

どうも酔いも回ってくると、どんどん懐かしい話にそれるという癖があるようだ。
「おっと、いけない」我に返り、
一番聞きたかった質問へと一気に攻め込む!

剣キチ
「小林さんから見て、今年最もブレークした選手はズバリ誰ですか?」

小林
「神奈川県警の田中選手ですね。彼には驚かされました」

剣キチ
「解脱の田中先生の次男さんですよね。本庄第一時代から強いとは思ってたけど、そんなに強くなりましたか?」

小林
「強いなんていうもんじゃないですね。大学に行っていれば4年生でまだ卒業してないんですよ。その年齢で県警のポイントゲッターですから。今年の警察大会は全勝したし、中でもすごかったのは決勝で世界選手権代表の前田選手から奪った勝利です。あれは将来全日本選手権とりますよ、きっと」


ということで、その試合を少しだけ再現してみる。

2019全国警察大会 決勝
大阪府警vs神奈川県警
先鋒 前田康喜vs田中晃司

はじめ!の合図と同時に、
前田が一気に間合いを詰めて飛び込む「メーン」
その面を田中が返して「メーン」
そして、つばぜり合いからの激しい攻防。
2人ともバリバリに気合が入っている。
田中が遠間からトリッキーなメンに行く。
しかし前田はよく見てさばく。

大阪府警の前田は、先日の世界選手権で日本の優勝に貢献した
天下のナショナルチームメンバーである。
一方の神奈川県警の田中は、
4年前のIHでは個人戦で東福岡の田内に2本勝ちするなどBEST16に。
団体戦では本庄第一の大将としてBEST8まで勝ち進んだ。
知る人ぞ知る選手ではあるが、
知名度は前田の足元にも及ばない。
年齢は21歳。
大学に行っていれば4年生で、まだ卒業すらしていないのに、
すでに神奈川県警の主力メンバーというのはそれだけでもすごい。

田中、引き胴から前に出てメン!
よく動く。
そして、決まりはしないが、時たま放つ鋭いコテがけん制の役目を果たし、
前田も容易に攻め込めない。

田中が前に出てメーン!
前田は1歩、2歩下がり、くるりと体を入れ替え
田中に対して左足で強烈な足払いだ!
田中の体が一瞬浮いて、「ドスン!」右肩から床に落下。
倒れた田中に、すかさず前田が逆胴!
逆胴は決まらなかったが、警察剣道の厳しい洗礼だ。
「おーコワ」
間違いなく私なら戦意喪失。
しかしそんなことでビビる田中ではない。
前田は明らかに攻めあぐねていた。

試合時間も4分が経過したころだろうか。
田中が前田の竹刀を表からチョンと抑え、
大きく竹刀をかついでメンにいくぞと見せかけた。
その動きに反応した前田も竹刀をかつぐ、その瞬間、
そのがら空きになったコテめがけて、
田中の竹刀がムチのようにうなりを上げた、
「ピシャリ!」
目にも止まらぬ速さで、田中の剣先は前田の右手をとらえた。
「コテあり!」
その後も前田は攻めあぐね、田中が貴重な1本勝ちを決めた。

この決勝戦は稀にみる大接戦となった。
大将戦、1本リードされて迎えた神奈川県政の勝見洋介が、
大城戸相手に、執念ともいえる飛込面を決めて試合をタイに戻す。

代表戦、神奈川はもちろん勝見。
大阪は、副将の岩切を抜擢。
この采配が見事に当たり、岩切が小手を決めて大阪府警が4連覇を遂げた。

結局、神奈川が敗れることになったが、
田中の存在と大いなる可能性をアピールした決勝戦だった。

小林
「田中選手はほんとに将来が楽しみですね。
それから大阪府警の岩切選手が強かったですね。
間違いなく全国屈指の選手ですよ。
あれでジャパンのメンバーに選ばれていないのが不思議です」

剣キチ
「どうしてかな?」

小林
「30歳という年齢なんだろうけど、西村選手と同じだし、彼の実力を考えればジャパン入りは当然だと思うんですけどね」

剣キチ
「そういえば、大阪府警の岩切選手って、国際武道大の岩切さんとは遠縁にあたるとか、関係があるんですかね」

小林
「もしかすると遠い先祖でつながっているかもしれませんが、関係ないんじゃないかなあ。彼は京都の出身だし。道場は弘道館ですよ」

剣キチ
「そうそう、弘道館。
また話がそれるけど、京都弘道館と言えば、僕らの少年時代、めちゃめちゃ強かったですよ。私の1つ上の中西正人さんを思い出す」

小林
「PL学園から同志社に行ったあの中西さん?」

剣キチ
「小学生時代から小柄ながらとんでもなく強かった。
PLでは石田利也さんと同期だったけど、中西さんが先に2年生でレギュラーになったと思いますよ。同志社に行ってからも、あの鬼のように強い石田さんを押しのけて、関西選手権2連覇ですから。先日、石田先生に中西さんのことを聞くと懐かしそうに話してくれました」

小林
「京都弘道館は今、移転しちゃってかつての弘道館じゃなくなっちゃいましたね」

剣キチ
「そうそう。何年か前に京都を訪れた時に、懐かしの京都弘道館に行ってみたら、跡形もなくなっていてショックだった。警察署まで行って確かめちゃったよ(対応してくれた警察官の方に地図を指さして「ここにあったはずなんです!」って)。
そのあと、2000年の道連中学チャンピオンの吉田智さんから、弘道館のその後を詳しく教えてもらったんだけどなんだか寂しかったなあ」

小林さんと話していると楽しくて、どんどん話が広がって、
どんどん横にそれていってしまう。
で「あれ?なんの話をしていたっけ?」となる。

剣キチ
「そうそう、警察剣道の話だった」

小林
「私としては埼玉県警が残念ですね。3部落ちですよ。私は個人的に田島くんのお父さんには、家が近いのでよく稽古をつけてもらうので、なおさら寂しくて。頑張ってほしいです」

剣キチ
「確か2年前ぐらいには、埼玉は1部にいたよね。そうなんだ残念だけど再起を願いばかりですね」

小林
「埼玉県警と言えば、今年の全日本選手権で平野伸一郎選手が35歳にして初出場でBEST16入りしました」

剣キチ
「平野さんは、2000年インターハイで優勝した高輪の副将なんですよ。高輪を追いかけていた者としては、なんだか他人事でないような気がして嬉しかったなあ。立派だったね。それから茨城は2部へ復帰昇格してよかった。だって、全日本選手権の茨城予選の上位4人が、松﨑(筑波大)、山下(茗渓学園教員)、中根(流経大)、佐々木(筑波大院)で、県警が一人も入れなかったんだから。尻に火がついたんじゃない。3部の決勝で皇宮に敗れたけど接戦だったし、茨城出身の人間として嬉しいよ」

もう、酔いが回ってきて完全にタメ口になっている。

剣キチ
「そう言えば、来年の横浜七段戦の出場選手、そろそろ決まったんじゃないの?」


小林
「決まりましたよ。〇〇と〇〇と〇〇と・・・(16人の名前が出てくる)
16人という枠が決まっているから、新たに加わる人がいれば、その分だけ去る人もいます」

剣キチ
「なるほど。いいメンバーですね。今から楽しみだなあ。去年の橋本桂一選手は鬼のように強かったけど。あの強さが、たまたまと言われないように頑張ってほしいね。まあ、昨年敗れた松脇選手や権瓶選手らが黙っていないだろうけど(笑) 考えただけでリベンジは怖そう。内村選手や木和田選手もいるし、少なくとも昨年のようにはなかなかいかないだろうね」

小林
「面白くなりそうでしょ」


剣キチ
「大学剣道はについてはどう?」

小林
「明治はあれだけのメンバーを揃えていたので、本音で言えばもう少し頑張るところを見たかったなあ。まあ、でも、山田くんは全日本学生選手権獲ったし、チームとしても惜しいところまでは行ったんですよね」

剣キチ
「なんだかんだ言っても山田くんは、先日の全日本選手権でベスト16だし大したもんだよね。最後は竹下選手にいいところ打たれて完敗だったけど。あの年齢としては逸材には違いないよ」

小林
「明治で言えば、梶谷くんが先日の新人戦で頑張りましたね。
梶谷くんは、一時退部説もあったようですよね。その梶谷くんが、星子くんとの代表戦で勝利したのには感動しましたね」

剣キチ
「星子は5月の関東選手権でいきなり優勝。全日本学生選手権が3位。そして、なんと言っても世界選手権ではフル出場で優勝に大きく貢献。学生の中は飛びぬけた存在になっていたところ、元チームメイトのライバルが、その勢いを止めたというのが、筋書きのないドラマだったよね」

小林
「しかし、筑波はいい選手がそろってますよね」

剣キチ
「ほんと。筑波の新人戦のメンバーを見たら、一昨年の明治みたいに目がくらむね。星子、松﨑、橋本、白鳥、森山、近本、遅野井って。寒川が控えになっちゃうのだから。その筑波に明治が勝ったんだから」

小林
「剣キチさんとしては、何と言っても中大の活躍じゃない」

剣キチ
「そうなんだよ。僕が、ここ10年くらいの中で中大が最も優勝に近いと思ったのは、梅ケ谷が3年生の時のチーム。村上武、永井、梅ケ谷、曽我、ダブル佐藤、染矢、そしてヘンリーと。圧倒的でしょう。ところが決勝で大体大に敗れる結果に終わり、これで当分優勝から遠ざかったかと思っていたら、今年の快進撃だから」

小林
「全日本の優勝は、確か24年前の北原さん(現監督)が大将の時以来ですよね。あの時のメンバーは強烈だったなあ。ちょうど僕と同じ世代なんですよ。懐かしい」

剣キチ
「あの時の中大はそれこそドリームチームだったね。北原、浅田、今泉、田中、本間、田沖、小田口だよ。どこをどうしたら優勝しないということがありうるの。っていうモンスターレベル。決勝戦なんて大体大相手に前4人で決めちゃうし。ちなみに、あの時の大体大の大将が清家さんだったんだよね。だから24年の時を経て、今度は息子さんが中大で、しかも彼の勝利で優勝という感動的な話。
今年のメンバーは、染矢、丸山、本間、川井、鈴木、清家、黒木でしょ。高校時代の大将は筑波の5人に対して、中大は染矢、川井、清家の3人。彼らは中大に入ってからぐんぐん力をつけてるんだよね」

小林
「今年の中大、関東2位、全日本優勝、関東新人戦優勝は素晴らしいですね。
来年の学生剣道は混戦が予想され、これまた楽しみですね」

店員
「お話し中失礼します。23:30ですので、まもなく閉店になります」

剣キチ
「えー?まだ全然話したりないなあ。ていうか、今回ほとんど僕がしゃべってない?」

小林
「まあまあ、剣キチさん。新年会もやりましょうよ」

剣キチ「やろう!やろう!」

【文中敬称略】