三谷幸喜のありふれた生活18 時の過ぎゆくままに  著:三谷幸喜

 

連載エッセーの単行本

ちょうど「鎌倉殿の13人」の脚本を書き始めたあたりの頃のようで、

その裏話でもないが、どういう想いで書いていたかが読めて

なかなかに楽しい一冊だった

 

著者の心がけ通りに、日ごろあった、他愛のなさそうな話しとかを

出来るだけ嘘なく、隠しごとなくというポリシーの通りなのか、

それも嘘なのかわからんのだけども、お子さんとの微笑ましいやりとりとか、

ほのぼの読めてよかったのである

とはいえ、かなりの英才俊英ではないかと思わせるようなことが書かれていて

親としても嬉しいのだろうけども、本当凄いな最近の子供わと

思い知らされるようでよかった

 

様々な俳優さんの話しも面白いのだけども、

氏が愛してやまない、アガサクリスティーの話しや、映画のあれこれなんかが

本当にとても楽しそうな筆致で、すばらしいなと読んでいて

こちらも楽しくなるようで、とてもよい

また、日常でも、日々年老いてきている自覚が端々から感じられ

事実、自身でもそう思いながらも、その年寄りになってきているということを楽しもうと

そういう気概に溢れているようにも見えてよかったのであった

愚痴っぽくないというのがやっぱりよいね

 

とはいえ、この連載中、ずいぶんたくさんの訃報があったようで、

関係するかなりの数の俳優さんが亡くなられていて、その追悼文めいたものとかが

いくつも、笑えるではないけども、決して暗くならない明るくなりすぎない

そういう、しんみりよりは楽しい気分になる文章でつづられているのが印象的だった

 

終わりにおまけとして、古畑任三郎の小説プロットが掲載されていたのだが、

ドラマやコントというより、ちゃんと叙述トリックを駆使しての小説でと意気込んでいたようで

面白かったけども、それこそ計算づくが目についてしまう感じで

氏として、それはそれでよかったのかと思ったりしたのだが

楽しかったからいいかと独り言ちるのであった

 

しかし小学生の頃からの大河ドラマフリークかつ、

ミステリ大好き少年だったという懐古がいくつか見られるが

なかなかその頃から尖ってるなと思わされたのは

安穏といきた平凡の思うところなだけなのだろうか

息子氏がどう育っていくのか、楽しみのようでもあるが、心配でもある

ムツゴロウの地球を食べる  著:畑正憲

 

ムツゴロウさんの書いたエッセー

恥ずかしながら、この本を読むまで、動物王国の楽しいお爺さんという

昭和の子供がステレオに見ていた姿しか知らなかったのだけど

物凄く文章がうまい、さらに食レポも絶品という素晴らしい本で、

かつ、内容を読んでいて、この人いったい何者なんだと疑念がわくほど

実に世界各地で活躍している姿も見える、とても面白いエッセーでありました

 

ネットでまことしやかに、鬼の雀士とか言われているのは知っていたけども

動物王国はさておき、作家が本業で、その縁があってか、

世界各地を放浪ではなく、旅行して現地の様々なものを食べてきたという

その堂に入った履歴が見事で、読んでいるとその美味しさが伝染してくるようで

本当に見事な食レポ文章だったわ

実際は、そこまですごくおいしくないんじゃないかと思ってしまうのだが、

もう、食べただけで死んでもいいと思ってもおかしくなさそうな

様々な美食との出会いがつづられていて、羨ましいようでもあるし、

凄いなと感心することもありといった感じ

 

序盤こそ、強烈な印象でフックをかけるといったメタ的な感じなのか、

アマゾンでピラルクを刺身で食べてみたりとか、

寄生虫何するものぞというのは、基本的にその後も全体的にそういう気概なのだが、

ゲテモノといっていいようなものを食べたりする話しもあるのだけど、

本質的においしいものとは何かということをすごく考察していて、

その推測や結果を必ず実地、実験(実食)で確かめて理解するという

典型的な科学解析手法で行われているので、物凄く面白い

世界三大珍味が、まぁ名前の割りにはと斜に構えて食べてしまっていたが、

そこで立ち止まらずによく考えてみて、自分がそれを美味いと思えるレベルに達していないと気づいて、

猛烈にそればっかり食べて、ある時そのうまさに開眼するといった感じが数多く見られて

それはちょっとドラマチックすぎやしまいかと思うのだが、

実際に、何かを美味いと思うかどうかは、食べ続けてみないとわからないのは確かかもと

一回だけ、何かを食べたという、スタンプ集めみたいなのを良しとしない

真の食通とはこういうものなのかもと思わせる迫力に満ち溢れていて

素晴らしく興味深いのであった

 

現地の最高級のものを実際に自分でとって食べるとか

調理をしようとかいうのが、発想の根底にあるおかげなのか、

ただただ変人なのかわからんが、様々な世界のシェフたちともなんか仲良くなって

だからこその名品を食べさせてもらっていたりするようで

凄い人だな、というか、とんでもない映画監督とかと飯食ってるけど

どういうツテなんだと、そっちの方も気になったりしたのである

一切説明がないが、一緒に飯食うシーンがいっぱい出てくるのはなんなんだ本当に

 

動物王国の方とはまったく異なるというか、

あれも、見せ方がああだったというだけで、生粋の研究者ということなのかもと

子供のころに見ていたそれとは、まったく異なる視線で見られて、

尊敬を増したというか、大いに畏敬の念を抱いた、そんな一冊だったのでありました

凄い人だ、面白すぎる

NHK夜ドラ枠で、ちょっとだけやってました

以前に別シリーズをやっていて、こつこつ積み重ねていっているドラマのようで

正直前回どんな話しだったか、まったく覚えてなかったんだが

主役の雰囲気と、地味な土地で美味しい物に巡り合うという

とても日本人好みの展開に、しずしず楽しんだのである

 

今回は、関東がクローズアップされていて、

群馬と茨城の名産品を集めてスープを作るといったお話で、

土地にいって、そこの生産者とのふれあいとかが繰り広げられたのだが

流石に駆け足すぎるといっていいのか、一週間4本分で展開するので

なかなかせわしないなと、もうちょっと、じっくり見たいシリーズのような気がすると

思ったりするのは、私が年寄りなせいなのかもしれない

群馬篇では、行きつ戻りつする人生を歩む若手の女性画家と

いい感じだったり、そうではなかったりしながら

物凄くよい、心温まる話しに仕上がっていて、

これはいいもんみたなぁと感動したのである

なんだかんだ、味と親子の情や、郷愁の念みたいな鉄板の題材というのは

本当に好きだわと、芝居の良さも含めて感激でありました

最後の湖でスープを食べながら泣くシーンが、本当に迫ったものがあって

正直話しとしては、そのバックに何があるのか、

軽くしかわからないのだけど、あの表情と涙だけで、きっと何かあったんだというのが

凄く重く見とれたのでよかったなと思うのであった

そして、作り立てこんにゃくの旨そうなこと

食べてみたいが、流石に難しいな

 

一方茨城編では、クライアントの方の親子の問題が取り上げられていて

なんだかんだ、そういう人情話しなんだよなと改めて思うのである

ただ、主人公が仕事に追われている感じなので、

いつもと調子が違うといっていいのか、どこか、急いてしまっていて

大切なことをなおざりにしているといった感じが、

これまたすごくうまくて、いい役者さんだなと、京伝の時よりもより感心して

見入ってしまうのであった

不完全さというのをわざとらしくなく、いや、わざとらしいようであるのだけども

自然というか、ドラマとして受け入れられるそれでお出しされるのが

本当に素晴らしいと感心しきりでありました

しかし、茨城にそんなにいっぱいベトナム人が入ってて、

コミュニティというか、野菜作ってるというところまで進んでるとは知らず

ちょっと食べてみたいなと思わされたのであった

確かに、そこかしこでベトナム料理屋を見かけるようになったけど、

そういった背景から割と本格的なのが作れているということなんだろうかしら

 

まぁ、ドラマとはあまり関係ない話しなのだけども、

それはそれとして、こちらも旨すぎるレンコンとか、いかにもその土地じゃないと食べられなさそうなのが

実にいいなと、すりおろしてはだめだというのが、個人的には納得がいかないようにも思うけど

食べてみたら、確信するようなうまさなのかと想像するばかりであったけど

いずれも、実に美味しそうなものが出てくるし

人情話しで、いい感じの解決を見るしと、楽しく見られてよかったのであった

 

こういうほのぼのドラマでいいんだよと

すさんでいるというか、心弱きものとして、

夜ドラに求めるものを連ねてしまうのである

台湾はおばちゃんで回ってる?!  著:近藤弥生子

 

台湾で出産してシングルマザーになって、連れ子結婚して今に至るという

なかなか波乱万丈な人生を歩んでいる女性の在台エッセー

台湾でおばちゃんになっていくということについて、

解放されていたり、それなりの苦労があったりと

現地での実体験をもとに語っている

大変面白い一冊でありました

 

人生訓的なことではなく、ただただ、台湾文化に触れることで

日本だと息苦しいと感じていたことから解放されたという実感や、

子育てについてのものすごく充実した、様々なサービスなどの体験報告があって

女性目線で読むと、いいなーと思ってしまうんでなかろうかと

そう感じる内容でありました

 

台湾で暮らすということ、その人の在り方なんかの見え方感じ方が面白くて

初っ端から「鶏婆」という、台湾人特有のおせっかいおばさんという存在の話しから

自身もだんだんとそうなってきている、それを肯定的にとらえてといった感じで楽しんでいるのだが

案外、台湾人からすると、それは迷惑な人だから気を付けなよとたしなめられてたりするのが

結構面白いところで、こういうところも異文化よなと思うのである

さらには、食べ物について、体を冷やす食べ物を忌避でもないが

避けるという文化について、日本人だから仕方ないねと

呆れられながらも、妊娠中にコーヒー飲んだりを貫いてみたり

でも、実際台湾人もそういいながら、めっちゃかき氷食べるじゃんみたいな、

多分、台湾人からするとそれは違うという感じなんだろうが

この文化的な差異というのが、いっぱいあれこれ感じられて面白かった

個人的には、こういう部分が凄い好きなのだが

これに加えてコアであるところの、女性が台湾で暮らすことによるあれこれが

これまた、非常に面白いというか、興味深いところで

子連れ出勤の状態やら、ベビーシッターの有能さや、乾媽の存在だとかに触れて

その日本とはまた異なる人の仲の濃さみたいなのがあって楽しいのであった

 

東洋医学に基づいたというか、古くからのしきたりみたいなものと

台湾人の柔らかいようで芯のある哲学みたいなのが見えて

凄くよいなと、住んだ人だからこその視点が素晴らしいと思いつつ

読んだのでありました

隣の芝生は青いというやつでもあろうけど、台湾の良さもありながら、

多分、それが重いという場面もあるのだろうというのが

間近な視線として見られるというのがよいなと、ほのぼの読んだのである

 

とはいえ、著者が奮闘したのは凄いことだろうと察するにあまりある

異国でシングルマザーとして生き、そして、バイリンガルが簡単なことではないという気づきも

とてもよいことだなと思ったりしながら読み終えたのでありました

良い国の話しだとも思うのだが、どう生きるかは国の問題ではなく

人がどうするのか、そういう単純な話しだと思うのであった

裏組織の脚本家  作:林庭毅

 

台湾のちょっと不思議現代小説

読み終わったんだけど、まだ、ちゃんと消化できておらず

不思議話しだったのか、そういうトリックだったのか

よくわからんまんまなんだが、

多分そこが重要ではなくて、人間模様と内面を描くことが重要だった

そんな物語が三編読めたのでありました

 

タイトルからして、かなり仰仰しいのだけども、

一種非合法の組織で、人生を変えたいと願う人の想いをかなえてくれる、

その代わりに全財産を賭けることといった、おどろおどろしい制約があるのだけども、

正直それがちゃんと機能しているようでもなく、

それでいて、他人の人生を脚本として描くと、その通りの新しい人生になっていくと

まぁ、そんな具合で、その脚本のモチーフとなる人物を選ぶことを求められ

その末に、こんなはずじゃ、とでもいうようなことになっていく

まぁ、そういう筋書きが三つで、三つ目が種明かしでもないが、

この組織、あるいは、脚本家と監督という役名の組織人の正体がわかって

なるほどというか、よりわからん

そんな具合になる物語でありました

書いてて、やっぱりさっぱりわかってないな

 

他人をうらやんでいたり、その場から逃げ出してみたかったり、

過ちから逃れることを望んだりといったことが発端で、

人生をその人に、あるいは、違うものにと願う人たちができて

実際にそのようになるのだが、その結果がはたして良い物かと

問われるようなときに、人間の想いや願いの儚さや、浅はかさというのが垣間見えて

悔恨とも異なるが、物悲しい気持ちになるお話でありました

誰かのためにと思っているのだけどそれが、むしろよくないということは

往々にしてあるわけだが、そればっかりが続くことに

自身への絶望を深めてしまうなんていう、誰にでもありそうな悩みがあふれていて

その答えではないけども、浮上するきっかけとなるような得るものが見える

そういう感じで、なかなか気持ちよく終わるのである

 

最終的に救われなくてはならないのは、あるいは、

変わらなくてはならないのは誰か、そしてそれを変えるのは誰なのかと

そういう根源的なものに挑んで話しは収束するのだけど、

物語として、結構ふわっとしてるが、

描こうとしている感情や糸というものはすごくあふれかえっているように思えて

不思議な読み応えだと思ったのであった

 

辻褄とか、理路とかではなく、感覚でそういうことかもなと

ふわっとして読み終えるのがよいのかもしれない

台湾文学難しいなぁ

タイトルがこれで合ってるかと思うのだが、

この秋から冬にかけて放送されていた、

NHKの未解決事件シリーズが、相も変わらず無茶苦茶面白くて

ずっと見続けていたのでありました

番宣で凄い楽しみにしていたのに、北朝鮮拉致事件のドラマパートが、

放送日が別ということを知らずに土曜の夜だけおっかけていたから

見逃してしまったのが痛恨事だったのだけども、

それはそれとして、どれもこれも取材を掘り下げて、

なんだったら潜入までしてという力の入れように、実際どこまで本当に迫っていたか

それはテレビだからといえるレベルだったのか

まったくわからんが、ただただ、見ている分には大丈夫なのか、

それっと本当にそんな話しだったんだとか、好奇心というか、

内面の色々なところを、グサグサ突かれたようにして、見入ってしまったのである

 

タイトルの通り、未解決であるということが重要なわけだが、

未解決の解釈を幅広くとることで、大きな流れとなっている

トクリュウのこととかも扱っているのがとてもよかった

ああいった詐欺スキームがどういうネットワークで、誰をターゲットに広がっているか

無論ターゲットというのは、手足となる実行犯たちなのだけども

そのあたりに相当近づいた取材になっていたのが凄かった

あんな若者、世の中いっぱいいそうだなと思いつつ、

今までああいった若者はどうしていたんだろうかと不思議に思ったりもしたのである

手合いとしては、人間なわけだから昔から存在する種類だろうと思うのだけども

今回、いい加減大きくなってきたから目についたといった具合で

トクリュウに取り込まれていたわけだが、はたして、反社組織のどのあたりに生息していたのか

気になるなとも思ったりするのである

いや、昔からそういう性質はもってたけど、発揮する場所がたまたまなかったということでもあるんだろうか

不思議だわ

 

また、赤軍に関する総括も大変見ごたえがあって、

もう世代的にずいぶん下ってしまった自分たちアラフィフの人間でさえ、

ダッカ事件とかあやふや極まりないというところに

復習とばかりに、当時のことをまめやかに説明してもらえて大変助かった

また当時の学生運動というものがどういう思想であったか、

今更ながらに知ったといっても過言ではない感じで、とても興味深かったのである

まぁ、なによりも、実行犯である二人が存命かつ、現在は娑婆にいて、

なんだったらNHKの取材に答えているというのがもう、時代というやつなんだなと

しみじみ思わされたのでありました

かつて戦ったという公安や警察の人の「ノブは相当やっとるな」というセリフ回しとでもいうような言が

陳腐な言い方ながらリアルだと思わされて、もはや教科書とか歴史とかになりつつあるものに

直に触れていた人たちを垣間見るようで、貴重なものを見たなと感動したのである

何事も古くなっていくというか、そういった思想闘争もまた

古びて変わってしまっているというのに寂寞を覚えるようでもあり、

革命や闘争というものがなんだったか見えなくなっていく姿が

凄く印象的だったと記しておく

 

また、タイトルにふさわしい、ナンペイ事件とか、子供がコンクリ詰めになってた事件とかも、

大変すばらしい取材力というか構成で、これこそが身近にある未解決事件だよなと

何から何まで悲しいというのか、どこにでもありそうな話しだという

身近に迫る怖さというのをありありと感じられて、とてもよかった

別件で書いてしまったベルトラッキだけ毛色があまりにも違ったけど、

本シリーズは、本当にためになるとは異なるけども

考えさせられて、なんか、迫るものを覚える内容ですごく楽しんだのでありました

 

また、みっちり取材して、がっつり見たいなと

闇のプロジェクトXみたいな位置づけで今後も続いてほしいと

思ったりしたのであった

ほんもの 白洲次郎のことなど  著:白洲正子

 

白洲正子による随筆、今でいうところのエッセーなわけだが

読みやすく面白いと同時に、やっぱり背景にある友人知人、

その人脈様々な部分が一等面白くてとてもよかった

 

主に人物評にまつわるものを集めたものだったようで、

タイトルの通り、旦那である白洲次郎のことをはじめ、

小林秀雄、青山二郎といった師匠筋のそれこれやら、

秦秀雄、洲之内徹といった渋い人物のあれこれもあって、大変面白かった

今となっては、誰もがどなたといった具合であるが、

その当時、戦前戦中戦後と変遷してきた昭和を生きた文豪ないし、

数寄者というものがどうであったか、政治とわずかに絡みながらも正子自身は

決して政治の領分、その思想というもので、どうのこうの言わないというのが

いい感じだなと読んでいて、しみじみ感じたのである

語るのは、美についてで、また、それによって叱られた話しというところが

読んでいてことのほか面白いのである

 

時代が違うとはこういうことだなと改めて思うのが、

骨董にまつわる話しの大半で、青山二郎なんかが、掘り出し物を見つけていたという

そこで培われた眼によるというのもまた、時代の話しで、

今となってはもはやそういうものが出てくる素地にないようにも思えるため、

いっそ、秦秀雄の目利きの方が親近感とは異なるが、理解できると

思ったりしてしまうのであった

とはいえ、そこまで血道をあげて、それこそ自身の美の哲学があってという部分は

とうてい及びもつかないわけなので、なんともはやといった具合だが

骨董という一種の幻想を作っていた人たちなんだろうなと

改めてその世界というのを強く意識させられる内容で、とてもよかった

 

そうかと思うと、自身の素直な感想として青山二郎の死を見て、

どこか安心したというのも、本当に実感なんだろうと思えて

物凄く切ないでもないが、そういうものだよなと思い知らされるようでよかった

様々な人たちの晩年とは、会わないようにしていたともとれるところが多かったが、

実際そうであったろうし、それは、当時を知るからこそ

苦しいものであったろうなと感じるのである

それを薄情とか、なんとかというのは当たらないものだと思うし、

悲しくもあるが人生の妙だろうと納得させられるのである

 

しかし、改めて、ここに書かれていた白洲次郎とのあれこれというのが、

以前NHKでスペシャルドラマでやってた白洲次郎の話しまんまのそれで、

この随筆を下地にしてたのかと感心して読んだのだが、

本当に面白い、そして、男として、いや、平たくいうとイケメンだから惚れていたという

身も蓋もない話しが、別に嫌味でもなんでもなく面白く読めて

とてもよかったと思うのである

 

凄い時代を生きた人で、本人も実際すごかったのだろうが

不思議な魅力があると改めて思うのである

今の時代だと、女性人気が出なさそうだなと思ってしまうのは

なんかずれているようでもあるが、こういう女性がモテたというのは

わからないでもないと感じるのであった

NHK大河ドラマ「べらぼう」

視聴完了しました

とうとう最終回になってしまったと、感慨深く見ようと思ってたら

のっけから不穏というか、まさかの展開に度肝を抜かれたのでありますけども、

いやー、流石にあのまま隠居してましたでおとなしくしてるはずもないよなと

そこにちゃんと答えをもってきてくれたという感じでもあるが、

あえてこれを今週の頭に残しておいたというのも、面白いなと

メタ的なものを感じたのだが、とりあえず雷みたいな屁をひったのか、

あるいはという感じで、仇はとられたというのが

よいお話でありました

 

と、まぁ、そういうかわぎりでと思っていたら、

あれよあれよと蔦重が弱って死にかけるという、もう、このあたりは

結局どういう話しなんだというくらいのドタバタ劇で、

大変面白かったのでありました

一年、何度かやってきた、物語の映像化とテンションは同じだったから

多分そういうことだったんだという、劇中劇的なものとも見える

もう、べらぼうな感じというのがこれだとお出しされたものと

受け止めてみたのでありました

 

各先生とどうするかというあたりで、過去を懐かしみながらも

蔦重とはということが改めて思い起こされていいなとしみじみしつつも、

それぞれとの別れはその時にできていたとみるべきか

お稲荷さんとのやりとりのあたりとかは、

もはや落語じゃないかという具合になってたのが

いいのか悪いのかもわからんままだけど、

拍子木の音でというなぞかけについては、なるほどなという感じで

このあたりは、作風なんだろうと、なんとなし直虎の時を思い起こす展開で

面白く見終えたのでありました

からっとしてて、じめじめしてないエンディングで凄いよかったのじゃないかなと思う

 

とはいえ、なんだかんだ感動シーンもあったというか、

個人的に涙もろくなったというだけでもありそうなんだが、

吉原の親父さん夫婦が「重三郎!」って入ってきたシーンが

まぁ、涙なくては見られない感じで、あんだけドタバタしてる

どさくさのシーンだというのに、あの部分の親子の情というのが物凄く見えてしまって

いい最期になったな、また、ここでいい声で入ったなと

ほれぼれ見入ったのでありました

屁だったかどうかはさておき、みんな乱痴気して、

あんな風に見送られるような一生であったならば、

本当に凄くよいことだよなと感激して見終えたのでありましたとさ

 

一年、どうなってしまうんだという感じで、

こうやって終わったんだと、想像もできなかった物語を

十二分に堪能できたので、大変よかったと

添えて書いておこうと思うのである

とても面白いドラマをありがた山でありんした

NHK時代劇枠でありました

とうとうファイナルかと、しみじみ思いながら見たのでありました

メンバーもほとんど変わってしまってと思っていたら、

最期は因縁に、初代の小頭の兄貴が出てきてと

なかなか面白いいわくでスタートしたのでありまして、

まぁ、仕事に時間かけてなさすぎというか、

もはやそのあたりは様式美となっているのでよいのだが、

ばったばったと、蔵ががやぶられていくなか、

貸金業者同士の争いやら、なんだかんだに贋作刀まで関わってと

話しはあっちこっちしながらも、悪銭を巻き上げていく

スタンダートな勧善懲悪時代劇でありました

 

式部との闘いも決着がと思っていたら、

病に倒れそうになったりとか、色々盛り上がる要素が

一杯次々わいてくるというのが、なんか、アメリカの連ドラみたいだなと思ってしまったのは

最近の作りということかと勝手に納得しつつ

ただ、いつのシリーズだったか忘れたけど、

やたら大道具というか、大工仕掛けに凝ってたところは鳴りを潜めて

普通に内通だけで、ぱぱっと入ってしまうのがちょっと残念というか

雲霧とは、という部分がどこだったか

わからんようになってしまったように感じたのだけど

一人仕事で、さっと、江戸城破ったりとか、やりすぎだろうという感じが

楽しかったと思うのでありました

 

オマージュだったのか、たまたまなのかわからんが、

式部との決闘はかつてのそれと似た感じで、

しかも、決着がわからぬままと流れて、さらっと再会して、

引退してそうな風だったのに、結局追っかけっこをしててというのは

もう、ここもまた様式美なのでどうのという話しでないのだろうけど、

この終わり方だと、いつでも次やれるじゃねぇかと思わされたりして

かっきり終わりという感じのものを見たかったかなぁと書いておくのであった

 

鬼平は復活したわけだけど、

はたして、雲霧が今後蘇ることがあるのだろうか

そう思うと、まさにファイナルかもしれんと思いつつ

しみじみ、もう一度通しで全部見たいなと思ったのでありましたとさ

ロブスター  作:篠田節子

 

こういうSFめいたものも書くんだと驚きながら読んだのだが、

相変わらずちょっと読むだけで情景が浮かぶ素晴らしい文章で、

ディストピアめいた、おそらくは近未来の日本を舞台にした物語

藤子不二雄のSF短編に近い感じといったらいいか、

ある鉱山に収容されて、強制労働させられているという博士を助けに行く話しなんだが、

まぁ、実際はそういう話しではなくてといった感じで

読んでいて、気づいていたら、その鉱山の環境に

どこか憧れみたいなのを覚えてしまう内容で、凄く心に響いたのである

 

ストーリーは、あまり意味がないともいえるようで、

描きたかったものというのは、読み終えてはっきりと理解できたというべきか、

こういう世界観に、どこかいいなと思う気持ちがあるなと、

自分なんかはそう思ってしまうものが用意されていて、

漠とした世界なのだが、他人との関わりは最小限というか、ほぼないような状態で、

決して楽とはいいがたい環境なのだけども、

死ぬほど苦しいという役務があることもなく、淡々と自分の仕事を続けるという毎日が用意されている

下界と遮断されているという状態に、何か安心に似たものを覚えるという描写が、

現代人のスマホとかで、がんじがらめになっているものから解き放たれたようにも見えて

凄くよいと思ってしまった

個人的に、異国の地への一人旅に求めるものがここに詰まっていたといってもいいような描写だったわ

 

象徴的に、もはや貴重で一部の上層階級の人しか食べられないと思しき

ロブスターが出てきて、それを釣るという情景がでてくるのだが

そこに挑む、あるいは、それを通して知り合ったもの

何か繋がったとも思える事態というものすべてが、

必然とか、そういう強いしがらみではないが、必要なことだったと

いや、この世界を知らせるために必要な要素だったと

物語を楽しんだのか、その情景を思い描かせられただけなのか

わからんが、ともかく、気持ちよく読み終えたのであった

 

別に、すかっとする話しでもないんだけどもね