田中翔太は、久しぶりに実家に帰省していた。両親が旅行に出かけるため、一人で家を守ることになったのだ。ある日、ふとした気まぐれで押し入れを整理していると、古いハガキが目に留まった。それは、彼が幼い頃に友達と一緒に遊んだ時に作った、願い事を書いて送り合うためのものだった。ハガキには「願い事を書くと、送った先で必ず叶う」と書かれていた。



「こんなこと、本当にあるわけないよな」翔太は笑いながら、冗談半分でハガキに願い事を書き始めた。「仕事で昇進したい」「理想の彼女に出会いたい」「宝くじで当たりたい」など、ありふれた願い事を次々と書き込んだ。そして、送り先を自分の住んでいるアパートの住所にして、投函した。



数日が過ぎてもハガキは届かなかった。最初は気にも留めなかったが、だんだんと心配になってきた。「もしかして、誰かに悪用されたのかもしれない」と、不安な気持ちが頭をよぎった。しかし、その不安はすぐに消え去った。ある日、突然彼の人生が大きく変わり始めたのだ。



まず、会社での評価が急激に上がり、上司から重要なプロジェクトを任されるようになった。周囲の同僚たちも「なんであんなに運が良いんだ?」と噂するほどだった。さらに、街中で偶然出会った女性と意気投合し、彼女が理想のパートナーとなった。そして、最も驚くべきことに、宝くじの当選番号が発表された日、彼はなんと一等に当選していたのだ。



翔太は驚きと喜びでいっぱいだったが、同時に疑問も感じていた。「あのハガキ、本当に願い事を叶えてくれるのか?」と思い、再び実家に戻り、押し入れを探した。だが、他のハガキは見つからなかった。ただ、古い日記の中に、幼い頃の自分が書いた記録が残っていた。「このハガキは特別な力を持っている。使う時は慎重に願い事を書くこと。」と書かれていた。



日記を読んだ翔太は、改めてその力に感謝しながらも、無意識に感じていた怖さが現実となることを恐れた。しかし、彼はハガキの力を信じ、自分の願いが叶ったことに感謝しながらも、もう二度とその力を使うことはないと決めた。



そして彼は、自分の力でさらなる幸せを掴むために、努力を続けることを誓った。そうして、翔太の人生は一層輝かしいものとなり、彼の願いは次々と現実のものとなっていった。



結局、ハガキが彼のアパートに届くことはなかったが、翔太はそのことを気にせず、自分の手で新しい未来を切り開いていった。彼にとって、願い事が叶うハガキは、単なるきっかけに過ぎなかったのだ。