巨大な大男の彫像を部屋に運び入れるのは一苦労だったが、健一の計画に感謝しつつ、雄介はそれを何とかリビングに配置した。彫像はどこか不気味ながらも、そのリアルさと迫力に圧倒される。これほどの贈り物を準備するには相当な手間がかかっただろうと、雄介は友人の気遣いに改めて感謝した。
翌朝、雄介は目を覚まし、リビングに立つ巨大な大男の彫像を見て前夜の出来事を思い出した。「これ、どこに置こうか」と考えながら、彼は朝食の準備を始めた。コーヒーの香りが部屋に広がる中、スマートフォンに着信があった。表示を見ると、再び健一からの電話だった。
「おはよう、健一。昨日は本当に驚かされたよ。」
「おはよう、雄介。驚いてくれてよかったよ。ところで、その彫像は気に入ってくれたか?」
「もちろんだよ。どうやってこんな大きなものを運んだのか聞きたいくらいだ。」
「それは内緒だ。でも、お前が喜んでくれたならそれで十分だよ。」
雄介は健一との会話を楽しみながらも、リビングに立つ彫像を見つめていた。だが、どこか奇妙な感覚が彼を襲う。昨夜は気づかなかったが、その彫像の目が彼を見つめ返しているような気がしたのだ。
「健一、ちょっと待ってくれ。この彫像、なんだか目が...」
「目がどうしたって?」
「いや、気のせいかもしれないけど、まるで生きているみたいなんだ。」
健一は一瞬黙り込んだ後、軽く笑った。「それはお前の疲れのせいだろう。少し休んだ方がいいかもしれないな。」
雄介も自分の考えすぎだと納得し、電話を切った。しかし、その後も彫像の目線が気になり続けた。彼は意識的にその目線を避けるようにしながら、一日の活動を始めた。
午後になり、雄介は買い物に出かけることにした。新しい本棚を買うために近くの家具店に向かい、いくつかの用事を済ませて帰宅した。玄関のドアを開けると、リビングに置かれた彫像が再び彼を迎えた。だが、その時、雄介は再び異変を感じた。彫像の位置が微妙に変わっているように見えたのだ。
「どうしてこんなことが...」
雄介は不安を感じつつも、友人の健一に再び電話をかけることにした。しかし、電話は繋がらなかった。メッセージを残し、彼はリビングのソファに座り込んだ。その時、玄関のドアがカタカタと音を立てて開く音がした。
「誰だ?」
雄介は心臓がドキドキするのを感じながら玄関に向かった。ドアを開けると、そこには見慣れた顔があった。健一が笑顔で立っていたのだ。
「健一、驚かせるなよ。今までどこにいたんだ?」
「ごめん、ちょっと準備があってね。」
「準備?何のことだ?」
健一は部屋の中に入ると、リビングの大男の彫像を見つめた。「実は、あの彫像にはもう一つのサプライズがあるんだ。」
雄介は驚きと共に興味を抱き、「何があるんだ?」と尋ねた。
健一は彫像の背後に回り込み、何かを操作し始めた。すると、彫像の一部が開き、中から小さな箱が出てきた。
「これだよ、雄介。お前への本当の誕生日プレゼントだ。」
雄介は箱を受け取り、慎重に開けた。中には、高級な腕時計とともに、健一からの手書きの手紙が入っていた。手紙には「友達として、これからもよろしく」という心温まるメッセージが書かれていた。
雄介は感動し、健一に感謝の気持ちを伝えた。友人の心遣いと、驚きの連続で、彼の誕生日は特別な一日となった。巨大な大男の彫像も、彼の部屋の一部として、これからの日々を見守り続けることになった。