夕方の帰り道。

 

子どもが

「あと1回、すべり台すべっていい?」

お母さんが

「あと1回だけだよ」

 

子どものおねだりが可愛らしくて。

そしてお母さんは呆れるでもなく、

かと言って優しくいいよいいよじゃなくて。

この日常感にある雰囲気に不思議とほっこりする感覚。

 

 

何故か時々思い出すこと。

 

僕が駄菓子の「うまい棒」のなっとう味を

大量に買い込んで部屋にストックしていたことがあった。

 

ある日母親が

「ねえ、これ1本もらってもいい?」

と唐突に言ってきた。

 

「あ、別にいいよ」

なんとも思わずそう返した。

 

普段そんなこと言ってくることもないので

驚いたことと、

言ってきた時の母の顔が

まるで乙女のような笑みだったことが、

印象に残っているのだろうか。

 

気を利かせて

「別に1本じゃなくてもいいよ」とか

言えれば良かったのだが、

自分にはそのスキルがなかった。

 

 

次また「おねだり」してくれたら、

今度は気の利いたことを言える準備はある。

 

でも、そのおねだりをしてくる人は

今はもういないんだよね。