コロナ騒動でフランツ・カフカの『ペスト』が売れているという話で、自分もいっちょと思ったが、どうも「時代」というのはそんなに信用できないと感じ始めた。コロナ騒動で世界の紛争戦争顛末はちっとも入らなかったが、それでも世界は動いていた。「時代」なんてものは人の手で作られるものなんじゃないか?
そういうわけで漱石なんだ。
漱石の文学は、時代性を描き出そうとか時代にコビを売ろうとか、そういう魂胆がないのがよろしい。先のものと後のものとの間で、見失われはならない何某かのものを抽出しようという試みが素晴らしい。
私個人としても、40代50代ともなれば人としての可能性なんて半分は枯渇しているものかもしれないが、だから歴史や古典に、活路を見出そうとしても良さそうなんじゃないか、ということでもある。
漱石は国民の義務。義務は回避しても義務遂行のあり方の1つだ。だが向き合ってもまた1つの義務の道だ。少なくとも子供らに漱石のエッセンスの1つでも伝えられたらと思う。
