稲作は水の豊富な湿地で行われます。ですがウガンダは湿地を保護するラムサール条約を批准し、多くの湿地を保護しています。


開発か環境か」。よく聞く問題ですが、今回は「稲作とラムサール条約」の関係からこの問題について考えてみたいと思います。


  ラムサール条約とは

ラムサール条約とは、水鳥・渡り鳥の生息地である湿地を保全するための条約です。日本では北海道の釧路湿原がラムサール条約登録地となっています。


自然や生態系を守るための大切な条約で、ウガンダでも多くの湿地がラムサール条約登録地となっています。


ウガンダには国土の約13%にあたる、約7000の湿地があります。

こんな場所がたくさんあります。

これらは生物多様性の保全だけでなく、地域住民の生活用水や食料・住居材料の供給といった役割を担っており、人間にとっても大切な場所となっています。


政府は湿地の保全と管理を重要な課題と位置付けていて、2005年にはアフリカ大陸初のラムサール条約締約国会議がウガンダで開かれました。


  稲作隊員の活動

人口が急激に増加するウガンダでは、穀物の消費量も増加しています。


特にコメは、マトケ(バナナ)やポショ(トウモロコシの粉から作る主食)よりも調理に手間がかからないため、人気の穀物となっています。


そのため青年海外協力隊の稲作隊員やJICA事務所の稲作プロジェクトは、新しい品種や技術の普及を通じた米の収穫量の増加、それに伴うコメ農家の収入の向上を目指して活動しています。

品種や植える時期を実験して、いい方法を探したり…

農家さんを訪問して、いい方法を伝えたり。
農業系の隊員は本当に大変そうでした😭

収穫量増加のための方法は色々あるものの、やはり新しく田んぼを開墾するのが一番です。日本でも江戸時代などに「新田開発」がさかんに行われました。


人口増加と新田開発は切っても切れない関係にあります。そして田んぼは、水の豊富な場所でないと作れません。標高の高いウガンダで水の豊富な場所と言えば、やはり湿地しかありません。


  どちらが大切?

地球環境を守るために湿地の保護は大切で、政府もそれを積極的に行っている。


一方で人口の増加によってコメの需要は拡大していて、収穫量増加のためにも農家の収入向上のためにも田んぼを拡大したい。


コメ農家さんたちに近い立場にいる稲作隊員からは「ラムサール条約の影響で農家さんが困っている」という話を聞きます。


一方で水鳥が集まる湿地の保全は地球環境のためにも観光振興のためにも重要という話も聞きます。


立場や視点によって考えが変わるこの問題、どうしていくのが最善策なのでしょうか?


  一方で…

こうした対立軸がある一方で、稲作隊員から「政府は矛盾している」との声も聴きました。


湿地の水田利用は禁止する一方で、養殖池(魚を育てる場所)としての利用は許可しているというのです。


ウガンダのコメは、今のところ国内消費向けの作物です。ですが、ナイルパーチやティラピアといった魚は、ウガンダの主要輸出品となっています(2021年輸出額1位:金、2位:コーヒー、3位:魚、4位:カカオ豆)。


特にナイルパーチはクセのない白身魚で、ヨーロッパや日本に多く輸出されています。

ナイルパーチのフライ。美味しいです😋


フライ用の白身魚として使われることが多く、「白スズキ」などの名称で提供されているそうです。


お弁当の白身魚のフライや給食にも使われることが多いということなので、知らないうちに口にしている日本人も多いでしょう。


また噂にすぎませんが、某ハンバーガーチェーン店のフィレオフィッシュにはウガンダ産のナイルパーチが使われているそうです。


※あくまで噂です。HPには「アメリカ・ロシア産のタラを使用」と書いてありました。

また湿地の保全に当たるはずの人がその湿地で密漁をしているとか、湿地のすぐ近くにバラ農園が建設されたという話も聞きました。

※写真はイメージです


バラは輸出品として高値で売ることができますが、農薬や化学肥料の使用を伴うため、水質悪化につながると言われます。


湿地そのものに手を加えていなかったとしても、バラ農園による水質悪化が起これば当然周辺の湿地の環境も悪化してしまうでしょう。

ご都合主義でルール違反が許されたり、特定の誰かだけが不利益をこうむったりするのはよくない。これは当然のことです。


でも貧しい生活の中で、少しでも多くのお金が欲しいという気持ちは理解できます


密漁者に「稲作農家の気持ちも考えろ!」というのは簡単ですが、そういう私たちは日本でぜいたくな暮らしをして、輸入されたナイルパーチを食べているのです。


また輸出入が関わってくると、外交問題も絡んでいる可能性があります。


魚やバラを輸入したい国が、ラムサール条約の影響で生産・輸出が止まってしまわないように圧力をかけているとも考えられます。「生産・輸出を止めるなら、うちの国からの他の支援もすべて打ち切る!」など…


  まとめ

開発か環境か。観光や漁業か農業か。輸出か国内用か。何を大切にして、何を切るべきなのか


様々な対立軸が複雑に絡み合ったこの問題。どうしたら解決できるのでしょうか。みんなが納得できる答えはあるのでしょうか。


みなさんはどう考えますか?
 

↓↓↓ブログ村ランキングに参加しています。クリックで応援して頂けたら嬉しいです。世界各地で活躍する同期隊員のブログも、ぜひ御覧ください!