ストリートチルドレンと聞いて、何を思い浮かべるでしょう?
お腹をすかせてゴミ箱を漁る姿でしょうか。「親に捨てられた」という絶望感が生むくすんだ瞳でしょうか。
寒い地域では路上で寝ると凍えて死んでしまうので、下水道で生活する”マンホールチルドレン”もいるそうです。
10月8日、教育分科会での研究授業(詳しくはこちら↓)
に合わせて、ワキソ県内のマスリタという地域にあるストリートチルドレンの保護施設を見学してきました。
どんな施設なの?
今回見学したのは、UWESO Masulita Children's villageという施設。
UWESOとはUganda Womens' Effort to Save Orphansのことで、大統領夫人が中心となって設立された組織だそうです。
首都カンパラの路上で保護された子どもたち、280人程が生活しています。
学校ではないため教室や教材があるわけではありませんが、建物は比較的きれいで、天井板や窓ガラスもきちんとついていました。
※配属先の小学校の寄宿舎は、天井板はなく直接屋根。窓にガラスははまっておらず、木の扉がついているだけです。
広々とした庭や遊具、畑などもあり、生活面では充実した施設だと感じました。
ただ、本来の収容人数は100人程度。そのため現在は、1つのシングルベットに2人が寝ている状態だそうです。
またこの日は見ることができませんでしたが、自分で稼いで生きていくための職業訓練なども行なわれているそうです。
どんな子どもたちがいるの?
冒頭にストリートチルドレンのイメージを書きました。
僕自身、この施設を訪れるまでは、”ストリートチルドレン”という言葉から冒頭のようなイメージを持っていました。
ですがここにいる子どもたちはとっても元気!歌と踊りとキラキラした笑顔で、見学に来た僕たちを迎え入れてくれました。
現在この施設で保護されている子どもたちは、「親に捨てられた」とか「家がない」といった理由でストリートで生活しているわけではありません。
"物乞いビジネス"と言って、「可哀想な子ども」のフリをして物乞いをして、お金を儲けるのだそうです。
中には障害者のふりをしたり、幼くして出産を強いられたシングルマザーのふりをして仲間の小さな子供を抱いていたりすることも。
また施設にいる子供は、8割が女の子。これは男の子がやるよりも、女の子がやったほうがお金を出してくれる人が多いからだそうです。同じ理由で、年齢の低い子供も多いようでした。
子どもたちが保護された際、数名の大人が逮捕されました。これは裏で子どもたちに指示を出し、”物乞いビジネス”で儲けていた人たちです。
つまり、子どもたちが好き好んで”物乞いビジネス”をしているわけではなく、大人にやらされて”物乞いビジネス”の道へと入っていってしまったんですね。
ではなぜ大人たちがこんなことをさせるかというと、地域的な貧困が背景にあるようです。
今施設にいる多くの子供達の出身は、カラモジャという地域。この地域は貧困が色濃く、農作物も他地域よりも取れづらいため飢餓も発生しているそうです。
そうなると、生きていくためには何とかしてお金を儲けるしかない。そのような環境の中で、苦肉の策として”物乞いビジネス”が始まってしまったのかもしれません。
やらされていた子どもたちは悪くない。でも、やらせていた大人を単純に”悪”と言い切ることもできない。
だからといって子どもたちを親元に帰せば、また同じことが繰り返されてしまう可能性が高い。
だから今いる子どもたちは、まだしばらくは(1年程度は?)この施設で暮らすことになるそうです。
子どもたちはどんな気持ちなの?
路上で保護されて施設に連れてこられた時、子どもたちはどのように感じていたのでしょう。
職員さんの話を伺うと、連れてこられた当初は施設を「監獄」と思っていて、逃げ出そうとする子もいたそうです。
しかし施設での生活を続ける中で少しずつマインドセットが変わっていき、今では施設を「家」、仲間や職員さんたちを「家族」と思ってくれている子も。
外から見ているだけの僕は「ストリート生活より施設のほうがずっといいだろう」と思ってしまいますが、そんな単純な話ではないようです。
まとめ
日本の社会の授業ではストリートチルドレンのことを「路上で生活せざるを得なくなってしまった子どもたち」と説明しました。
でも、実情はそんなに単純じゃなかった。大人の金儲けの道具にされている子、”物乞いビジネス”の生き方が染み付いているせいで他の生き方を選べない子、路上生活が「家」になっている子など…
「せざるを得ない」だけでない「ストリートチルドレン」という問題の難しさを感じました。
地域的な貧困の問題、子どもに”物乞いビジネス”をさせてしまう大人の倫理観の問題、他の選択肢を示せない社会構造の問題。
背景にある構造的な問題を解明して解決するには、あまりに時間が足りません。
でもせめて、今ここにいる子達が物乞いに頼ることなく、少しでも幸せな人生を歩めるよう、何か力になれたらと思います。