ンデジェに赴任する直前の11月29日、JICAの稲作支援事業PRiDe(Promotion of Rice Development Project)が主催する稲作研修に参加してきました。

教育隊員にはあまり関係ないかな?と思いながらの参加でしたが、日本でも体験したことのなかった稲作を体験でき、ウガンダの社会や農業のことも勉強できて、とても有意義な研修でした!研修の内容を少しだけご紹介します。

  ウガンダの社会と農業

次の数値をご覧ください。

     男性  女性
農村部 150,000   88,000
都市部    300,000  150,000

これはウガンダの被雇用者の月給の平均値です。単位はウガンダシリング。1000シリングで30円ほどです。

平均給与が低いことももちろんですが、農村部と都市部、男性と女性の間に大きな格差があるのがわかります。結果、何が起こるか。

農村部の人たちは、高い給料を求めて都市部へと移り住もうとします。ですがウガンダは現在、人口増加中。世界でも5本の指に入る人口増加率です。急激に増えた人口が都市に集中してしまえば、全員分の就職口が確保できるはずがありません。

都市に移り住んできたものの仕事に就けなかった人は、スラムと呼ばれる地区で貧しい生活を送ることを余儀なくされます。貧しい生活を余儀なくされていると、他人から奪ってでも生き延びなくてはならないという状況が生まれ、治安が悪化します。

そこで大事になるのが、地方での農業支援です。地方の農業で十分な収入を得られるとなれば、給与格差が改善され、都市への人口移動が減るでしょう。これにより都市への急激な人口流入とスラム形成による治安悪化を避けることができます。だから、農業支援が重要なのだ、ということでした。

しかもウガンダでは、人口の7割以上が農業従事者。にもかかわらず機械化や灌漑設備の整備が進んでおらず(気候や土壌に恵まれており、そうしたものがなくても十分な食料生産が可能だったため)、生産性は低いまま。つまり、改善の余地が非常に大きいのです。

  ネリカ米

ではどのような農業を支援するか。ウガンダでは、主要輸出品であるコーヒーの生産に力を入れていますが、近年の人口増加によって主食の消費量が増え、不足分は輸入に頼っています。

中でも消費量が増えているのが、米。女性の社会進出も相まって、“調理が手軽“なコメの人気が高まっているそうです。(そのほかの主食は、蒸した後にほぐしたり、かき混ぜながら煮込んだりしないといけません。その点米は、炊けばすぐに食べられるので手間がかかりません。)

せっかく気候や土壌に恵まれているのに、食料を輸入するのはもったいない。生産性を上げれば、輸入に頼らずとも国内消費分は生産できるはずだ。こう考えたJICAは、稲作支援事業を開始しました。

支援の一環として開発された新品種が「ネリカ米」。ネリカとはNew Rice for Africa という意味だそうです。アフリカ特有の病気や気候に合わせて開発された、日本米とインディカ米の中間のような品種です。


なお、日本では二期作(年に二回米を作る)ができると教科書に載るレベルですごいことですが、ウガンダでは二期作どころか三期作、品種によっては四期作です。赤道直下で、一年中春と夏の間くらいの気候なので、いつでも育ちます(雨期の前に植える、などの時期調整はもちろんしていますが)。季節ごとに採れるものが変わる日本の農業とは大きく異なります。食べ物の「旬」という感覚がないのだろうな、と不思議な感じでした。

  稲作技術支援

品種改良だけでなく、現地の農家さんが取り入れやすい技術支援も行っています。実験農場では、かなり細かな実験が行われているようでした。

例えば、何センチの深さに種を植えるといいかとか、植える際には何センチ間をあけるといいかとか。



設定を細かく変えて栽培し、その結果を比較します。その結果わかった最も効率的な方法を、現地の農家さんたちに伝え広めていくわけです。

教育分野で生きてきた僕は、このような詳細な実験はしてきませんでした。むしろやってはいけませんでした。一クラスには丁寧に教えて、別のクラスには問題集ばっかりやらせる、とかできないですからね。でも、こうして細かな実験と比較を通して適切な方法を明らかにしていくのは、とても大切なことなんじゃないかなと思いました。

  稲作体験

午前中にみっちりお勉強した後、午後は実際に稲作の体験です。

長さを測って、土壌づくり。泥の中を歩くだけで大変です。

種籾まき。鳥に食べられてしまわないよう、軽く撫でて土の下に隠します。さらにその上から、バナナの葉で蓋します。

紐で間隔を取りながらの田植え。紐に結び目がついていて、間隔を間違えずに植えることができます。

みんなでやるからあまり動かなくてすむけど、これを一人でやるとなったらめちゃくちゃ大変…

育ったら稲刈り。鎌で一束ずつ刈り取ります。植えた瞬間育つわけはないので、もちろん別の田んぼです(笑)

最後に脱穀。足踏み式のこの機械や、網目に叩きつけて落とす原始的なもの、エンジンで動くものなど、様々なものがありました。

どの作業にも注意点がいっぱい。農家さんがこんなに大変な作業をしてくれて初めて、僕たちはご飯を食べることができるんだということを実感しました。

今まで、特に考えずに食べていたご飯。その裏にある苦労を知れた今回の研修は、とても大切な経験だったと思います。

鶏を絞めたときにも思ったけど、「食べ物」を作るって大変。食べるだけの僕たちは、せめて生産者や作物への感謝をもって、残さず食べないといけないと思います。

日本の、東京の子どもたちにも、この大変さをぜひ体験してほしい。先生方、稲作体験取り入れましょう!



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