大集経に云はく

「若し国王有りて、無量世に於て施戒慧を修すとも、我が法の滅せんを見て捨てゝ擁護せずんば、是くの如く種うる所の無量の善根悉く皆滅失して、其の国当に三つの不祥の事有るべし。

一には穀貴、二には兵革、三には疫病なり。

一切の善神悉く之を捨離せば、其の王教令すとも人随従せず、常に隣国の為に侵嬈せられん。

暴火横に起こり、悪風雨多く、暴水増長して、人民を吹ひょうせば、内外の親戚其れ共に謀叛せん。

其の王久しからずして当に重病に遇ひ、寿終の後大地獄の中に生ずべし。

乃至王の如く夫人・太子・大臣・城主・柱師・郡守・宰官も亦復是くの如くならん」已上。

夫四経の文朗らかなり、万人誰か疑はん。

而るに盲瞽の輩、迷惑の人、妄りに邪説を信じて正教を弁へず。

故に天下世上諸仏衆経に於て、捨離の心を生じて擁護の志無し。

仍って善神聖人国を捨て所を去る。

是を以て悪鬼外道災を成し難を致すなり。


通釈

大集経には

「もし国王がいて、何度も生まれ替わりながら布施・持戒・智慧の波羅蜜の修行をしても、仏法が滅するのを見捨てて守ろうとしないならば、過去世に積んだ多くの功徳善根も皆失って、その国には穀貴・兵革・疫病の三つの災いが起こるであろう。

一切の諸天善神の悉くがその国を見捨てたならば、国王がいくら命令を下しても随う者はなく、その隙に他国から侵略されるであろう。

戦乱などによって突然に激しい火災が起こり、たびたび暴風雨が吹き荒れ、洪水が起こり、人々を吹き飛ばしたり流したりして、両親の親族が謀反を起こすであろう。

徳を失った国王は重病となり、亡くなった後に地獄に堕ちるであろう。

また、その国王に随う夫人、王子、大臣、周辺国の城主、兵隊を指揮する大将である柱師、国内の各地域を司る郡守、役人である宰官もまた、共に地獄に堕ちるであろう」と述べられています。

以上のように、金光明経・大集経・仁王経・薬師経の四つのお経文に明らかなように、邪義謗法によって三災七難が起きることは明らかで、誰が疑うでしょうか。

ところが道理に迷う者や煩悩に惑わされる者は、邪説を信じて正法を理解しようともせず、そのために世の中の多くの人達は、諸仏が説いた金光明経・大集経・仁王経・薬師経などのお経文を捨てて教えを守ろうとしません。

そのために諸天善神や聖人はその国を見捨てて去ってしまい、そこへ悪鬼が入り込み、謗法によって災難を引き起こすのです。