仁王経に云はく

「大王、吾が今化する所の百億の須弥、百億の日月、一々の須弥に四天下有り、其の南閻浮提に十六の大国・五百の中国・十千の小国有り。

其の国土の中に七つの畏るべき難有り、一切の国王是を難と為すが故に。

云何なる難と為す。

日月度を失ひ時節返逆し、或は赤日出で、黒日出で、二三四五の日出で、或は蝕して光無く、或は日輪一重二三四五重輪現ずるを一の難と為すなり。

二十八宿度を失ひ、金星・彗星・輪星・鬼星・火星・水星・風星・刁星・南斗・北斗・五鎮の大星・一切の国主星・三公星・百官星、是くの如き諸星各々変現するを二の難と為すなり。

大火国を焼き万姓焼尽せん、或は鬼火・竜火・天火・山神火・人火・樹木火・賊火あらん。

是くの如く変怪するを三の難と為すなり。

大水百姓をひょう没し、時節反逆して冬雨ふり、夏雪ふり、冬時に雷電霹礰し、六月に氷霜雹を雨らし、赤水・黒水・青水を雨らし、土山・石山を雨らし、沙・礫・石を雨らす。

江河逆しまに流れ、山を浮べ石を流す。

是くの如く変ずる時を四の難と為すなり。

大風万姓を吹き殺し、国土山河樹木一時に滅没し、非時の大風・黒風・赤風・青風・天風・地風・火風・水風あらん、是くの如く変ずるを五の難と為すなり。

天地国土亢陽し、炎火洞燃として百草亢旱し、五穀登らず、土地赫燃して万姓滅尽せん。

是くの如く変ずるを六の難と為すなり。

四方の賊来たりて国を侵し、内外の賊起こり、火賊・水賊・風賊・鬼賊ありて百姓荒乱し、刀兵劫起せん。

是くの如く怪する時を七の難と為すなり」と。



通釈

そしてまた仁王経にも、

「一切の国王は何を難とするか。

太陽や月が異常な動きをし、気候に異変が起こるのが第一の難。

多くの星の動きが不規則になって異常を起こすのが第二の難。

いろいろな火災によって焼け出される火による災害が第三の難。

大洪水や異常な気候によって夏に雹がふり、冬に雷が鳴り、色の付いた雨や砂・石が降り、川が逆に流れ、山が崩れ石が流される、水や天候による災害が第四の難。

大風によって樹木が倒される風による災害が第五の難。

熱気が登るほど地面が熱く乾き、草は枯れ、五穀も実らず、土地は荒れて人々は飢え死にしてしまう干ばつによる災害が第六の難。

四方から外国の軍勢が攻め寄せてきたり、身内から内乱が起こり、様々な災害に乗じて盗賊が出現して人々を襲い、人々は命や財産を脅かされる人による争いが第七の難」と述べられている。