今週はじめからようやく、秋らしくなってきた。
翌日に定期演奏会を控えた新日本フィルの公開リハーサルを見学しようと、
すみだトリフォニーホールへ出掛けることにした。
入場が正午過ぎからなので、駅からホールまで歩きがてら、
寿司でもつまもうかと暖簾をくぐってカウンターに。
隣は手酌でビールを飲むダンナ。
コンサート前は飲まないようにしているが、今日はリハーサルだからと思ったその時、
「お茶にしますか」と言われ、つい「はい」とうなずく。
それがいい。平日お昼時の会場で酒の匂いを漂わせるのも品がない。
参加者の多くは、齢を八掛けしてご年配の方々。若者もちらほら。
1階中央では、六、七分の入り。
指揮者が演奏者にどんなことをどんなふうに差配するのか興味がある一方、
リハとはいえしっかり聴きたかったので、オーケストラを一望できる一番前の列に陣取った。
幼稚園年長くらいの女の子が前列にいた。
途中で飽きてしまってお母さんにひっついて寝ていたようだ。
大きくなったら、お母さんを誘えるようになるといい。
さて、曲目はブラームスの交響曲第1番。休憩をはさんで、前2楽章と後2楽章を練習。
各楽章、オーケストラを止めて、マエストロから指示が出たのは片手で数えられるほど。
ただし、カナメの箇所だったと思う。なので、「さあ、ここだ」と思うところで止められる。
お預けを食うわけだ。断片的に感じ入った総和は、通しの感動に全く及ばないとよくわかった。
指示は楽団員に向かってなので、客席からはよく聴き取れなかったが、
クレッシェンドからデクレッシェンドへの転換、拍の強弱、対旋律、
各パートへの個別指示(打楽器だけなかったかと)など、
時に言葉で、時に歌って、演奏者に理解してもらおうとする姿を目にして、
改めて指揮者という立場の寄る辺なさを感じた。
「すみだトリフォニーホールという恵まれた環境の中でおこなわれる
<オーケストラの音創り>の現場を、ぜひ一度体験してみませんか?」とHPにある。
裏返して言えば、本番と同じホールをゲネプロでしか使えないオーケストラにはハンディがある。
わが国においては、オーケストラとコンサートホールが不可分であるのは
「恵まれている」のであって、「当然」とはまだまだ言えないようだ。
本拠地たるホールがあれば、リハーサルにおいて、新日本フィルなどのように、
サポーターにシートを開放することもできる。
普段着姿の指揮者と楽団員による生のやりとりをあえて公開するという、
ちょっと特別感のあるサービスを通じて、現サポーターを継続させ、新サポーターを増やし、
ひいては採算も取れるようになれば、お互いの利益にかなうだろう。
今日は最後に、アンコールのリハもやろうかとびっくりさせられたが、
やっぱり本番までとっておこうとなり、拍手と笑いに包まれた。
次回11月14日の公開リハは、井上道義によるショスタコの7番。
楽しみにしているサポーターも多かろう。
今回都合によりリハだけだったが、来月はモーツァルトを聴きに参上予定。
長袖にしたら暑かった。年々、夏が長くなり、秋が短くなっていく気がする。