2009年長年続いた自民党政権が民主党政権に交代した。民主党政権は「再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」いわゆる固定価格買い取り制度を制定し約3年間の短い政権を終えた。後に、固定価格買い取り制度により超不動産バブルの再来となり多くの再エネ長者が誕生することになる。

 

2013年8月

WILL社は昨年小型太陽光発電所の建設コンサルを行い3,000万円程の利益を上げていた。しかし、利益の源であったコンサル先企業との間で衝突があり、今年のメシの種が無い。WILL社近本は新たな飯のタネの仕込みを考えていた。

近本は今夜旧友でゴルフ場を保有している岩城と食事をする予定だった。時間には少し早いが、時間にうるさい岩城相手なら早く着いても良いため新橋の喫茶店を後にした。

 

銀座、資生堂パーラーのレストランに入ると、待ち合わせ時間の20分前にもかかわらず岩城は席についていた。辺りを見回すと若いカップル、親子、孫を連れた老人が楽しく食事をしている。老人2人は近本と岩城だけであるが、岩城はここのエビフライが好きで近本を誘ってはこの店でエビフライを食べる。近本がメニューを見る前に岩城がエビフライを2人前注文する。これも毎度のことである。

ウエイトレスの注いだ水を飲みながら岩城は言った。「チカちゃん、もう俺は商売するのが疲れてきたよ。70も5を超えると何をするのも億劫になるよ。引退してハワイにでも住もうかと思ってるんだ。昔買ったコンドミニアムを高齢者用に作り替えたのがあっただろ。そこを長年借りていてくれたお客が死んじゃったから1部屋空いたんだよ。あそこは身の回りのことも全部してくれるから、オーナーなのを内緒にして住んだらきっと楽しいよ。」岩城は1年前から引退したいと口走るようになってきていた。

これに対して近本は「ガンちゃん、何を言ってるんだい。昔は死ぬまで働くと言ってたじゃないか。冥土の土産と言っては何だけど、俺と久々にビジネスをしないか?」近本にはビジネスのネタは無いが言うだけ言ってみた。

岩城は近本の方をゆっくり見ると「いいねぇー。前に話していた太陽光とか言うビジネスは儲かるのかい?先月のゴルフ場雑誌にも太陽光の記事が載っていたよ。俺にも儲けさせてくれよ。」岩城の言うゴルフ場の雑誌とはゴルフ場経営者向けの雑誌である。岩城はゴルフカートの日本総代理店の会社を経営していて毎月愛読している。雑誌社が岩城の会社に取材に来ることもあるのだ。

近本は考えた。ゴルフ場の雑誌に何で太陽光が載っているんだろうか・・・・

 

 

 

第2話に続く