ある人がパン屋になりたいと夢を語り、300万円という僅かなお金で、パン屋になる準備をした。

だがその人は半年も経たずして、パン屋を畳んだ。

「夜が明けないうちから起きて生地をこね、焼き上げたパンを売っても利益が薄い。体がキツいばかりで、仕事として取り組めないから辞めた。」

そう彼女は語っていた。

 

これはよくある話だが、お店を開くことが夢であり、人生のゴールとする人がいる。

お店を開いてしばらくは感無量だが、段々と現実の辛さに負けて、目先のお金を追い始める。

そして徐々にサービスは下がり、価格は上がり、最後には誰も来ないお店に成り下る。

開店時の意気込みと、応援してくれた人への感謝を続けるのは、案外に難しいものだ。

多くの人が個人経営のお店で成功出来ない理由は凡そこんなところだろう。

 

もしあなたがパン屋を開くのが夢なら、パン屋で朝から晩まで働いて、その現実を知るべきだ。

そしてもう一つ大事なことは、成功しているパン屋とお店を畳んだパン屋をよく観察することだ。

この基本的なことをやらないで、個人で事業を行うなら、あなたは必ず失敗する。

 

結局のところ、事業開始の動機が現実逃避であるなら、成功するわけがないのだ。

夢は現実逃避の言い訳になりがちだが、本当の夢とは身命を賭して事業を行うことだ。

どれほどお金に窮しても、どれほど他者から笑われても、やらずにおれない事業が本当の夢なのである。

多くの人はこの事実に気づかずに、夢を見ないようにして生きている。

本当の夢に気づけば、目の前の全てを捧げた事業を行う羽目になるからだ。

 

そしてその夢は何度も躓き、何度も破れる。

全てを捧げたのに、何一つ叶わない。

それがこの私達が生きる「何一つ願いが叶わない世界」なのだ。

この世界を攻略するには、ひたすら試錬(クエスト)を受注して、レベルアップ(精進、位階向上)するしかない。

失敗を通じた経験値の獲得しか、世界攻略のレベルに達する方法はない。

試練は失敗したときこそ、高い経験値をもらうことが出来る。

 

初めに述べた彼女は、今も新しい事業を探している。

サラリーマンの不自由さに不平不満を言いながら、あれこれ考えても実行しない人より、彼女は賢かった。

なにしろ願いを行動に起こしたのだから。

 

一つの仕事に絞って、安定した収入を得ると、レベルアップは望めない。

またレベルアップを加速させる思考習慣がなければ、どれだけ試練で失敗しても、レベル上昇は微々たるものになってしまう。

賢者の書がレベルアップのチートアイテムとはそういうことである。

※明日は通常に戻って「個人と組織3」です。