私の父は営業マンとしては優秀だったが、経営者としては未熟なままで、その働きを終えた。
父は現役時代にいつも願っていた。
「自分のように優秀なスター営業マンが、自分の会社に入社してくれないか。」と。
たしかにそうなれば、どんな会社でも立ち直るだろう。
だが世の中に優秀な人は少なく、また優秀な人を自分のもとにつなぎとめておくことも難しいものだ。
そんなことを待っていては、会社など立ち行かない。
それよりも父はもう一度、基本的なことを考え直すべきだったのではないかと私は考える。
そもそも父がどうしてスタープレイヤーになれたのか。
父はどうして給料が少なくて、そのうえ給料が遅配の会社のために頑張れたのか。
それは父に対する両親(私の祖父母)の教育もあったのかもしれない。
だが絶対にそれだけではないと私は確信する。なぜなら父は退社する時に、誓っていた。
「自分が担当していたお客様のところには営業に行かない。全て新規開拓で顧客を掴んでいこう。」
「会社に迷惑をかけないように、会社と競合しないように少し業種も変えよう。」
またある日の父は語っていた。「それまでは会社の看板(信用)で商売ができていた。その看板に土をかける真似はしたくなかった。」
父にそれほどまで思わせる何かが、会社にあったのだ。
その何かを思い出して究明し、自分の会社に反映できたら、父の会社の運命は変わっていたのかもしれない。