では正しさとは何から始まるだろうか。
それは「開けたら閉める」から始まる。
トイレに入ったり、物を棚から出したりするとき、開けっ放しの人がいる。
誰でもその扉は閉じていた方がいいとわかっているのに、ついうっかり忘れてしまうことがある。
あとはその人の心持ちによって、多少の違いがあるだけだ。
さて、開いている扉を見たら、あなたはどうするべきだろうか。
「開けっ放しにしておくな!」と少しの怒りや苛立ちを表して、荒っぽくその扉を閉めるのが正解だろうか。
この時の正解は次のとおりである。
まず「誰でもうっかりはあるよね」と笑って許す。
笑顔と許すは愛の行為である。
続いて開いている扉に対して「開けっ放しは嫌だよね」と話しかける。
これで物に対する愛を深めることが出来る。
愛があるから扉を閉める時に、緊張感を纏って、丁寧に閉めることが出来る。
最後に「誰かのお役に立てました。ありがとうございました。」と合掌一礼して感謝する。
あなたはこれ以上に美しい、扉の閉め方を思い付くだろうか。
「開けたら閉める」という当たり前の日常的な行為にも、作法や道を作ろうと思えばあなたにもできるのだ。
こういう地道な、最上の作法を考える者こそ賢者である。