少年救命団における、団員への最大の報酬とは何か。

それは人命を救助したときに感じる、誰かの役に立った喜びである。

 

だが残念なことに、そのような機会に出会う子供は少ない。

救命団を続けていれば、子供がヒーローになれる瞬間はいつか来る。

だがその瞬間はすぐにはやってこない。

主人公の小学生が殺人事件に何度も出くわして、犯人を当てる漫画が存在するが、現実でそのようなことはない。

せっかく救命団に入団したのに、人の命が救えなければ子供たちは訓練に飽きてしまう。

だから救命団では「冒険と競争」という報酬を用意する。

 

子供は前向きで冒険遊びが好きだ。

今まで体験したことのないことに取り組むことを喜んでくれる。

各年齢ごとに達成率が5割から8割という、難易度を伴う指令を与える。

そしてこれらは3回から5回の挑戦をすれば必ず達成できる難易度でなければならない。

「君たちならできる」という激励の言葉とともに、同年齢の子供たちが体験したことのない経験をさせるのだ。

 

個人で達成させる指令もあるし、班で達成させる指令もある。

この指令を「クエスト」と呼ぶ。

創作小説で「冒険者ギルド」という組織が出てくることがある。

この組織は冒険を生業(なりわい)とする者に、様々なクエストを与える。

報酬は金銭で支払われるが、冒険者と呼ばれる彼らは金目当てだけではなくて、命を懸けたギリギリのクエストを好む。

そのような世界観が救命団のクエストにはある。

 

団員には「レベル」が用意されている。

これまでこなしたクエストの数と難易度で経験値が加算されて、レベルが算出される。

基本はクエストの数で経験値がたまるが、特定の難易度の高いクエストを達成しないとそれ以上はレベルが上がらなくなる。

レベルが高い団員の地位は高く、新入団員の憧れの対象となる。

 

このクエストに救命技術をいくつか盛り込んでおく。

筆記試験もあるし、士業(弁護士など法で定められた職業)の試験に合格するクエストまである。

 

クエストには推奨年齢と推奨人数が記載されている。

子供たちは情報端末からクエストを自分で選択する。

一人で達成できないクエストはチームを組んで取り組む。

 

冒険を繰り返して彼らは成長する。

彼らの顔は達成感にあふれ、同年代の子供たちと一線を画す。

なぜなら彼らは理屈ではなく、結果と経験でものを語るからだ。