禍つ神(まがつかみ)とは人に災厄を齎す(もたらす)神である。


その身からは呪詛が漏れ、黒い渦の中にあり、人の形を捨てている。

自殺者の霊の中でも、特に怨念の強い者がこの形態となる。


なぜ渦の形になるかといえば、終わりのない同じことに執着しているからである。

その渦に巻かれ、世界が見えなくなり、同じ内容の呪詛を繰り返し呟いている。(あるいは叫んでいる)

彼らが見ているのは世界ではなく、己だけである。


彼らは自分を優秀だと信じて疑わない。

優秀な自分が、高い評価を受けないことに違和感を感じている。

「もっと自分が高く評価されなければおかしい。この世界は間違っている!」

これが禍つ神たちの主張である。


彼らは生前、自分が仕事ができるアピールを繰り返してきた。

そしてその本性は他者を見下していた。

他者の功績を認めず、自分の功績だけを評価するように常に求めていた。


自分が他者を認めなければ、他者から認められないと言う基本的な法則を知らなかった。


その結果、努力して優秀な功績を作っても、誰からも評価されない境遇に陥った。

これを自業自得と認めず、他者を恨みに恨んだ。

周囲を「価値のわからぬ無能」だと馬鹿にして、自分を慰めた。


そしてこの繰り返しにはまり、己の行き場を失って、この世界が間違っていると決めつけ、呪詛を伴って己の命を絶った。

来世はもっと良い、自分に適した世界だと信じて。


だが恨みつらみが強過ぎて視野狭窄に陥り、転生の機会を見失ってしまう。

結果、現世に留まり、禍つ神として呪詛を繰り返すだけのオブジェクトに堕ちた。

こうして世には禍つ神が多く生まれた。


「他者からの自己評価が低い」と文句ばかりを言う人は、禍つ神の卵である。