妻に求められるのがもてなし力であるなら、夫に求められるものは何か。

それは妻を惚れさせる男気である。


すべての女性に当てはまるわけではないが、女同士にはつまらぬ見栄の張り合いがある。

本人たちも「こんなことをして何になるのかわからない」と思いながら見栄を張っている。

所詮は女性同士特有の他愛のない話のネタの一つではある。

 

その妻同士の他愛のない話の中で、夫の愚痴ではなく惚気(のろけ)が出るような家庭が良い。

見栄の張り合いの中で「私の夫はこんなに良いひとなの。」と心から自慢して、他家の妻がうらやましがるような夫。

肝心な経済力は今すぐどうにかならないとしても、それ以外の部分で妻を惚れさせることが重要である。

 

実は男気の正体は誠実である。

夫の誠実は「約束を守る」「まめに働く」「妻への感謝」の三つが重要である。

 

例えば結婚前は妻は彼女であった。それが結婚して妻となった。

彼女は他人であり、妻は家族である。

他人であった頃は彼女との約束を重視していたのに、家族となった妻の約束を軽視するとはどういうことだろう。

家族よりも他人を重要視している愚かさに気づかないのだろうか。

 

この原因は家族だから許してくれるだろうという甘えである。

この甘えが、いずれ家庭を崩壊させる火種となる。

そういう男は他者との約束においても「これくらいはいいだろう」という甘えをにじませて、約束を反故にする。

約束した相手を幾度となく怒らせる。

その悪い習慣を断つために、夫は妻との約束を死ぬ気で守る覚悟を固めなければならない。

だから夫は他者との約束よりも、何より妻との約束を重視すべきである。

 

約束を守るために必要なのがまめに働くことである。

夫が約束を破るのは怠け心から来ている。

「まあいいや」という甘えの心である。

これを吹き飛ばし、働き者になろう。

 

できることなら家事はすべて自分でできる夫が良い。

妻が病気になった時に心配なく夫に家事を任せられる。

何だったら妻よりも料理がうまく、掃除洗濯が早いほうが良い。

それでいながら「妻にもてなされる側」という役割を発揮できる。

そんな夫が理想である。

 

そして「妻にもてなされる側」の役割を果たすために必要なのが妻への感謝である。

自分で家事ができるからこそ、その大変さを知っている。

家事の大変さを知っているからこそ、家事をしてくれる妻に感謝が絶えない。

 

夫が妻よりも家事が上手だと「ここはこうしたほうがいいよ。」と言える。

だが自分がもてなされる側とわきまえていて、うるさく口出しをしない。

「いつも家事をしてくれてありがとう」が口癖の夫である。

妻に一生ありがとうを言い続ける夫である。

このような夫は社会に出ても大成する。

 

妻が夫を他家の妻へ惚気ようとしても、あまりに出来すぎていて少し控えめに言う。

「本当のことを話したら、ほかの妻が私の良人(おっと)を好きになったらどうしよう」とさえ思う。

そのくらいの夫になってみてはいかがだろう。

 

逆に家事ができない夫は口うるさく、妻に感謝をしない。

ちょっと家事を手伝っただけで、素晴らしいことをしたかのように恩着せがましく言う。

威張り散らすばかりで、妻や子供に面倒くさがられる。

自分は立派な人間だと思っていても、家族に好かれない愚か者である。

このような夫が社会に必要とされるはずがない。

 

真なる男気の条件は、社会に出る前に家庭でしっかりした夫になることである。