兵庫県議会★漫遊記
第2章 参議院議員選挙の死闘
【第25回】
「我々が今日一日ずっとここで演説しますから!」の言い方は完全に我々への口撃の意図が見てとれた。
「いやいや、御党とうちの党の上の方で話し合ってるから聞いてみて!!」と私。
「わたし達、そんな話聞いてませんから!!やりますよ!」と相手。
バチバチと全くひるむ気配もない。しばらく押し問答が続く。
あまりの白熱に私がえらケンの方を見ると、眉間の間にシワを寄せて怒りの表情を見せている。
このままではラチがあかない。「どうします?」とえらケン。
「上に言って調整してもらうしかないな。」ここまで相手もこちらも折れないとなると、エスカレーションして何とかするしかない。
「もしもし、増山です」と調整担当の幹部に連絡をして、一部始終を説明する。
「おう、わかった、任せておけ」と、さすが幹部、頼りがいがある。
我々が調整を待つために少し離れていると、相手は何もなかったように、笑顔でチラシを配りはじめた。
しばらく見ているとビラを配っている人に電話を持ったスタッフらしき人が近づいて行く。
笑顔でビラを配っていた人が電話をとり、何やら話し込んでいる。次第に顔つきが強張っていくのが見てとれた。
「お!これは動くな」 「動きますね」私とえらケンは同時に口を開いた。
今まで大人数で散らばってビラを配って、演説をしていたスタッフたちが、まるでキッチンのシンクに張った水が排水口に流れ込むように彼らの街宣車の中にザザーと吸い込まれると、何事もなかったように走りさっていった。
「ふー、ひとまずこれで場所は確保できたな」とえらっちに言うと2人でハイタッチをした。
こういったつばぜり合いは選挙選にはつきものである。
こうして無事に党の幹部を迎え入れる環境を整えることができた。
・・・・
午後6時、いよいよ、選挙戦もあと残すところ2時間。
「そろそろ到着されます!!」と秘書が叫ぶ。場がピリピリと張り詰める。
狭い場所に多くの議員が選挙運動しているので、こういった場合どこで活動するかが難しい。
全体のバランスを考え、道路での街宣車受け入れ誘導する人がいないので車道へと飛んだ。
「こんばんは!!」4車線道路の端でドライバーの方々に手を振る。
車の運転席から挨拶を返してくれる方や、家族連れの方が窓を開けて手を振り返してくれる方など有難い反応だ。
そうこうしていると、遠くから松井代表の声が聞こえてきた。
「清水・・・よろしく・・・します」
神戸センター街の入口付近からは遠くベイサイド近くまで一本の道で見渡せる。
声はすれどもなかなか街宣車の姿は見えない。
遠く海の方を見つめていると、光り輝くものが右の角からスッと出てきた。
「キラキラ号!!」
街宣車が全面ガラス張りの車をそう呼んでいる。通常の街宣車と違ってものすごい存在感である。
通行する車にしばらく手を振りながら待っていると、数分の後街宣車が目の前までやって来た。
急いで場所取りをしている車を前方に追い出し、私は車を所定の位置に誘導した。
停車するとすぐに後部の扉が「ガチャ」と開くと代表が下りてきた。
「お疲れ様です!」元気に挨拶すると
「おつかれさん!」代表が返す。
これが緊張と興奮が入り混じった、私にとって代表と初の会話である。
↓キラキラ号
(つづく)
※この物語は事実を基にしていますが実在の人物とは関係ありません、また一部脚色が含まれます。